死傷され亡くなったライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・最上あいさん(Xより)。右は高野健一被告

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 東京都新宿区の路上で2025年3月、ライブ配信をしていた佐藤愛里さん(当時22)を刺殺したとして、殺人罪などで起訴されていた高野健一被告(44)。その裁判員裁判が東京地裁(井戸俊一裁判長)で7月1日より開かれている。

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 起訴状によると、犯行は3月11日の朝9時50分ごろ、JR高田馬場駅近くの路上で起きた。被害者は「最上あい」という名義でライブ配信中だったため凶行も配信され、大きな衝撃を与えたこの事件。公判では、2人の特殊な関係性や金銭トラブルが明らかにされた。

 佐藤さんに250万円を超えるお金を貸していた高野被告。金銭苦に悩んだ高野被告は、借金を返さないままライブ配信を続ける佐藤さんに恨みを募らせていく--。【全3回の第2回。第1回を読む】

「借金の件は発信しないでほしい」

 検察官の説明によると、佐藤さんが高野被告にお金を貸して欲しいと頼んだのは2022年の9〜11月のこと。佐藤さんは高野被告に消費者金融からも借りるよう求め、結果255万円を貸したという。

 高野被告の弁護人は冒頭陳述で、その後の佐藤さんとの経緯について次のように説明した。

 高野被告は佐藤さんに何度も「(お金を)返してね」と督促。佐藤さんは最初「大丈夫、返す」などと言っていたが、被告人のもとに消費者金融から督促が来るようになってから、徐々に返信がなくなっていったという。

 高野被告がSNSにその様子を投稿すると、佐藤さんから返信があり、2023年1月に3万円が返済された。その後、佐藤さんは配信をやめ、連絡が取れなくなった。それでも高野被告はその後も返済を信じ、通帳記入を続けながら、消費者金融の返済を続けていたという。

 2023年11月には、佐藤さんがSNSで婚約を発表。高野被告は2024年1月に婚約者を名乗る男から連絡を受け、「配信を再開するが、借金の件を発信しないで欲しい」と求められたという。

 その後、高野被告は弁護士に相談し、民事裁判を起こした。訴えが認められ、2024年10月に佐藤さんの口座が差し押さえられたが、残金が160円ほどしかなかった。

 佐藤さんは「最上あい」名義で、配信アプリの中でも最高ランクのプラチナ配信者だった。同アプリでは、月100万円ほど稼ぐ配信者もいたという。

 高野被告は同年12月、佐藤さんの財産開示手続きを行った。翌2025年1月、佐藤さんは財産開示手続きで裁判所に出頭したが、事務所に借金をしており、「配信で稼いだお金は事務所に持っていかれて手元にない」といった説明をしたという。

 検察側は2月1日に友人に「金返してもらうの諦めた。復讐だけ考えている」などとメッセージを送っており、犯行の端緒となるような心情をうかがわせた。一方、弁護側は事件の4日前まで佐藤さんの給料の差押えを検討するなど、最後まで回収を諦めなかったと主張した。しかし事件前日、佐藤さんの配信を見て「会いに行こう」と考え、ナイフを持って東京に向かうのだった。

顔面をアップにして…

 検察が説明した事件当日の概略は以下の通りだ。

 事件前日、佐藤さんが「明日、山手線を一周する」という配信の予告をした。それを見て、高野被告はナイフを持って東京に向かう。佐藤さんは8時半に新宿で配信を開始し、「もうすぐ高田馬場着きます」などとリアル配信。9時50分ごろ、「新大久保に戻ります」と歩き始めたところを、高野被告は襲撃した。

 高野被告は佐藤さんに突進し、仰向けに倒れたところを上からナイフで繰り返し突き刺した。佐藤さんは最初「助けて」と声をあげていたものの、1分ほどで声が途絶えた。高野被告は右手にナイフを持ち、佐藤さんのスマホは左手に。そうして彼女の頭部を蹴るなどした。

 襲撃から3分後、配信画面に佐藤さんの顔面をアップにして写す。その約4分後、「まだ動くんだ」「死んでますかね」などと発言した。

 道は人通りも多く、防犯カメラの映像には複数の通行人や車が映っていた。走って逃げる人や、高野被告に声をかける人もいたが、手を止めなかったという。

「死んでますかね」などと発言した約1分後に、警察が現場に到着。高野被告は佐藤さんのそばで佇んでおり、その場で現行犯逮捕された--第3回記事では、法廷で読み上げられた佐藤さんの母親の供述調書の内容や、彼女の複雑な生い立ちについて報じる。

(第3回記事につづく)

傍聴取材/普通(裁判ライター)