【ブラジル戦敗退】 森保監督になぜ“続投報道”が相次ぐのか? 「赤字31億円」のJFAが抱えた後任選考 “2つの難航要素”
サッカーW杯で「優勝」を目標にしていた日本代表は、通算5度目のチャレンジとなる決勝トーナメント1回戦突破に挑んだが、ブラジル代表に後半アディショナルタイムで逆転され1−2で敗退した。1996年アトランタ五輪で撃破して30年、06年W杯ドイツ大会で惨敗してから20年という、節目の年で迎えた3度目のブラジルとの真剣勝負の舞台で、サッカー王国の大きな壁が立ちはだかったわけだ。3大会連続で決勝トーナメントに進出した日本代表はこれで大会を去る。日本サッカー協会(JFA)では、2期8年続いた森保体制に続く次期監督選考に入っている。
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異例の続投報道
「森保監督、続投へ」(6月27日付中日スポーツ)、「森保監督に続投要請も」(6月28日付日刊スポーツ)、「森保監督、続投も」(6月29日付スポーツ報知)、「森保監督続投基本線」(6月29日サンケイスポーツ)――。

ブラジル戦直前、スポーツ紙には「森保続投報道」のタイトルが踊った。まだ決勝トーナメント一回戦に臨む前、今大会の監督への評価が定まっていないにもかかわらず、だ。これは過去7度W杯に出場した日本でも、きわめて異例の流れともいえる。
「次期監督選考も森保監督が最有力候補に挙がっているからです。それが現状、JFA内部で出ている議論の流れでもあります」(サッカー担当記者)
交渉を開始している時期だが…
ポスト森保選考は、これまでの方式とは異なっている。これまでJFAでは代表チームの強化責任部署である技術委員会が次期監督リストをあげ、会長に上申する形をとってきた。本来なら、W杯前は同委員会が多くの次期監督候補に接触を図り、交渉を開始している時期でもある。これまでの監督人事で同委員会が選びきれずに会長権限で決まったのは、06年ドイツ大会にむけて就任したジーコ氏以外いない。
が、今回の代表選考は、技術委員会だけではなく、強化部会も加わっている。技術委員会のメンバーでW杯に出場した代表OBは中田浩二(現J1鹿島フットボールダイレクター)だけ。強化部会に至っては、W杯出場経験者は一人も入っていない。代表OBの中からは「8回もW杯に出場しているのに監督人事選考の面で現場の声を全く活かせていない」との声も上がっている。
山本委員長の兼務
この2つの委員会・部会の責任者が、森保ジャパンのこの4年間を評価する立場にいた山本昌邦氏だ。山本氏はナショナルチームダイレクター(ND)の役職も兼ねている。協会幹部が代表強化の3つのセクションの責任者を兼務するのは極めて異例だ。次期代表監督選考のキーマンの1人でもある。
昨年10月、山本NDは、航空機で児童わいせつ画像の閲覧をしたことで解任された影山雅永(かげやままさなが)氏の後任として技術委員長を兼務することになった。これもまた異例の人事だったが、
「JFAでは今年3月で山本NDの兼務を解く予定でした。W杯イヤーの技術委員長には次期代表監督探しという重要なミッションがある。それでも後任がみつからなかった。JFA幹部の人材難が浮き彫りになりました」(古参のサッカー記者)
W杯開幕が近づいても後任監督の選考リストアップは難航。そこで、技術委員会、強化部会の検討に加え、JFAの宮本恒靖会長が1人指名する「助言人物」(非公表)を置き、「宮本会長、山本ND、そしてこの助言人物の3人で次期監督を選ぶことになった」(前出記者)
これまでならW杯期間中に、次期監督の名が浮上するのが通例だった。が、今大会ではJFA側が外国人監督と接触したことは全く報じられないまま、「森保続投」報道が先行した。
JFAの財政難
「後任監督」を思うようにリストアップできない事情のひとつにJFAの財政難がある。JFAはコロナ禍での大打撃と、トレーニング施設「夢フィールド」の建設、女子プロリーグの設立支援などの影響で財政が悪化し、2022年度には約49億円の赤字決算となった。自社ビル・JFAハウスの200億円とも言われる売却益でその後3年をしのいだが、それも尽きた今年度予算では、約31億円の赤字となる見通しだ。
一方、世界では、有名外国人監督の年俸相場は高止まりの状況だ。ブラジル代表・アンチェロッティ監督の年俸は18億円以上とも言われる。仮に今大会でブラジル代表が優勝すれば、出場国以外の出身者が指揮官を務めたケースとしては、W杯史上初という快挙となる。ブラジルサッカー連盟はその報奨金として13億円ものボーナスも約束している。一方、
「森保監督の年俸はボーナスを含めて2億円台と言われています。JFAが出せる条件では、有名外国人監督との交渉にすら入れないどころか、門前払いされてしまう可能性もある」(現地で取材するサッカー関係者)
前回のカタール大会後には、森保監督を契約満了で「退任」させる案もあった。当時の技術委員会が提示したが、これをJFA田嶋幸三会長(当時。現・名誉会長)が「森保続投」で押し切っている。22年7月、田嶋会長は、W杯優勝は自国出身の監督しか優勝していないことを理由に、「Japan’s Way(ジャパンズウェイ)」という中長期指針を発表して森保ジャパンを後押しし続けた。
森保監督自ら…
JFA協会幹部の人材難と財政難のダブルショックで「次期監督候補」が思うようにリストアップできない状況はかねて想定されていた。森保監督は「どこかいいスポンサーさんはいないですかね?」と自ら営業にも走り、また、未来の日本代表監督の候補として、2大会連続で代表主将を務めた経験を持つ長谷部誠、やはり元代表の主力で、10番を背負ったこともある中村俊輔を代表コーチとして呼んだ。
「2期目のスタートから招聘した名波浩(代表10番経験者)とともに、すべて森保監督が“一本釣り”で直談判しました。これまでの日本代表ではありえない人事です」(代表担当記者)
日本代表監督になるために必要なライセンスを保持していない長谷部は現在、そのライセンス取得中の身にある。
森保監督の続投が決まったとしても、奮闘の末とはいえ、ブラジルに敗退した結果責任は当然問われる。また、JFAは大会前にベスト16入りで得られる賞金(約24億円)を想定した予算を組んでいることもあり、今後の日本サッカー界には、多くの難題が積み重なっている。そして、新生日本代表の親善試合・大会の日程も、9月(24日・宮城、28日・広島)、10月(1日・横浜、5日・東京)に決まっている。誰が代表監督になるにせよ、決定までに残されている時間はそれほど多くはない。
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小田義天(おだ・ぎてん) スポーツライター
デイリー新潮編集部
