摂食障害を抱えるわが子に言ってはいけない<二大タブーの言葉>とは?元当事者「拒食も過食も病気の症状。本人がやりたくてやっているのではない」
東京都福祉局のデータによると、全国の摂食障害の外来患者は約21万人と推計され、女性や若年層に圧倒的に多くみられるそうです。そんな中、摂食障害に苦しんできた元当事者であり、その経験を活かして摂食障害に悩むご本人やお母さんたちの心のケアにあたっている公認心理師・大橋とも先生は「むちゃ食いする・食べ吐きする・食事を食べない。それは『わがまま』ではなく『心の病気』です」と語ります。そこで今回は大橋先生の著書『わが子が摂食障害になったら読む本』より一部を抜粋し、回復へと至る道筋と、お子さんとの温かなコミュニケーションが復活するノウハウをお届けします。
【書影】子どもの「治りたい」気持ちを引き出す言葉がけをロールプレイで習得。大橋とも、松本功『わが子が摂食障害になったら読む本』
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子どもの気持ち「食べようと思っても、怖くて食べられないの」
芸能人やインフルエンサーが摂食障害をカミングアウトすると、多くの人は「大変だな、頑張ってほしいな」と感じます。
しかし、いざ自分の子どものこととなると気持ちがついていきません。甘えやわがままだと思い込んで、子どもにこんなことを言ってしまいがちです。
「なんで食べないの?」
「食べないと体壊すよ」
「お願いだから一口くらい食べてよ」
お子さん自身が「食べる」ことが難しくなった自分に混乱し、苦しんでいるときに、お母さんから食べ方を指摘されると、もっと苦しくなってしまいます。
ですが、お母さんが摂食障害を病気だと理解していないと、さらにお子さんを追い詰めてしまうこともあります。
病気の知識がないために「よかれと思って」やってしまったことで、お子さんに負担をかけたケースをご紹介しましょう。
病気への無理解が症状を悪化させる
現在、中学生のAさんは、小学生のときはまじめで成績優秀なお子さんでした。進学した中学校では、同じ小学校出身の子が少なかったため、新しい人間関係や、クラスの雰囲気にうまくなじむことができませんでした。
Aさんは、身長156cm、体重50kg。成長期の女子であれば太り過ぎでも痩せすぎでもない普通体型です。それなのに、夏休み前にクラスの男子に「顔が丸いな」と言われたことをきっかけに、Aさんは痩せてきれいになりたくてダイエットを始めました。おやつをやめて、夕食も減らしました。始めは空腹感で辛かったものの、自分で決めたことをコツコツ取り組むのが得意なAさんは、次第に我慢にも慣れて、毎日体重を計るようになりました。
4kg減って40kg台になると、「Aさん、痩せたね!」「どうやって痩せたの?」「私にも教えて!」と今まで話す機会のなかったクラスメイトからも声をかけられるようになりました。
痩せることに手ごたえを感じたAさんは、ますます食事制限をするようになりました。太りやすい白米と揚げ物は食べない。芋やかぼちゃも禁止。次第に、砂糖やみりんの量まで計算するように。Aさんは自分が納得できる調理法をお母さんにも強制するようになりました。
「食べる」ことが困難に
40kgを切った頃にはお母さんも心配になり、栄養のあるものを食べさせようとするのですが、Aさんは食べようとしません。
次第に、イライラを募らせたお母さんは、つい、言ってしまったのです。

<『わが子が摂食障害になったら読む本』より イラスト:しゅんぶん>
「いい加減、ちゃんと食べなさい!」
以後、Aさんは「食べる」ことがさらに困難になります。体重は30kg前半まで落ちて、学校にも通えなくなってしまいました。
Aさんのお母さんは「摂食障害」という言葉は知っていても、病気の知識はありませんでした。「普通に食べられるようになれば治る」と思い込んでいたのです。痩せていく娘が心配で、なんとか食べさせてあげたいとも思いました。
そうして親心から「栄養のあるものを食べさせよう」としたのですが、改善するどころか、Aさんからの抵抗も増し、さらに苦しい状況になってしまったのです。
まずこれだけは覚えておきましょう〜二大タブー「食べる量」と「体型」
気持ちが伝わらずイライラしたAさんのお母さんは、「ちゃんと食べなさい」とつい言ってしまいました。
しかし、これは禁句中の禁句。
拒食も過食も「病気の症状」として起きています。やめたくてもやめられなくて、誰よりも苦しんでいるのはお子さん自身です。常に「食べる・食べない」のギリギリの綱渡りをしているお子さんに対して「食べる量」と「体型」の話題は二大タブーです。
「痩せたんじゃない?」
「もっと食べたら」
「太ったんじゃない?」
「もう食べるのやめたら」
といった、本人にもどうにもできないことを指摘されると、心のバランスが崩れて、さらに症状が悪化してしまいます。仮にお子さんが落ち着いているように見えても「食べる量」と「体型」の話題は避けるようにしてください。
お母さんへ
「食べる量」と「体型」の話題は出さない。
過食も拒食も「本人がやりたくてやっている」のではなく、「病気の症状」であることを理解する。
食べること以外にも、攻撃的になったり、こだわりが強くなったり、感情の起伏が激しくなったりすることも摂食障害のサインであり、回復すれば和らぐと知る。
無理矢理食べさせたり、説得したりすることでは病気は治らないと理解する。
※本稿は、『わが子が摂食障害になったら読む本』(ビジネス社)の一部を再編集したものです。

