60歳から増える「てんかんになりやすい人」の特徴はご存じですか?医師が注意点も解説
てんかんは、誰にでも起こりうる身近な脳の病気ですが、発症しやすい年齢層や背景にはいくつかの特徴があります。本記事は、てんかんになりやすい方の傾向や誘因となる生活習慣、発症の要因となる脳の病気などを詳しく解説し、早期受診や予防のポイントも解説します。
監修医師:
伊藤 規絵(医師)
旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。
てんかんになりやすい人の特徴

脳卒中や頭部外傷、脳腫瘍、認知症などで脳に障害や瘢痕がある方や、特発性てんかんの体質を持つ方、高齢の方などです。
てんかんとは
てんかんとは、脳内の神経細胞に過剰な電気的興奮が生じることで、意識障害やけいれんなどを発作的に起こす慢性的な脳の病気です。発作の型や原因はさまざまで、症状の現れ方にも個人差があります。
てんかんの発症率と患者数
日本は、てんかんのある方は人口の0.5~1%程度とされ、およそ100万人いると推計されています。
てんかんになりやすい年齢
小児から高齢の方まですべての年齢層にみられますが、特に乳幼児期と高齢期に多く、成人より小児の有病率がやや高いと報告されています。発病年齢は3歳以下がとても多く、成人になると減りますが、60歳を超えた高齢の方になると脳血管障害などを原因とする発病が増加します。
てんかんになりやすい人の原因疾患

脳の構造や機能の異常、脳血管障害や頭部外傷、感染症、遺伝子や代謝の異常などさまざまですが、検査をしても原因が特定できない場合もあります。
脳卒中によるてんかん
脳卒中の後遺症として、てんかんの発症があります。脳卒中でダメージを受けた脳の部分に傷あと(瘢痕:はんこん)が残ると、そこが異常な電気信号の発生源となり、てんかん発作を起こしやすくなると考えられています。特に高齢で脳卒中を経験した方は、時間がたってからてんかんを発症するケースもあり、注意が必要です。
脳腫瘍や頭部外傷によるてんかん
脳腫瘍や頭部外傷は、脳の神経細胞を傷つけることで、てんかんの原因となることがあります。腫瘍そのものの圧迫や出血、手術後の瘢痕などが、異常な電気信号の発生源になるためです。また、交通事故や転倒などによる強い頭部外傷では、受傷から時間がたってからてんかんの発症もあり、長期的な経過観察が大切です。
認知症や神経変性疾患によるてんかん
認知症やアルツハイマー病などの神経変性疾患は、脳の神経細胞が徐々に傷つき、異常な電気活動が起こりやすくなるため、てんかんの合併があります。特に高齢になるほど認知症・神経変性疾患とてんかんの両方の頻度が高まるため、物忘れや意識のぼんやりが認知症の進行とだけ判断されて見逃されないよう、てんかんの可能性も考えて受診が大切です。
てんかんと遺伝の関係

てんかんのなかには、家族内で起こりやすいタイプがあり、体質として発作を起こしやすい遺伝的な素因が関係していると考えられています。ただし、必ずしも遺伝するわけではありません。
家族にてんかんがある場合
家族にてんかんの方がいる場合、同じように発作を起こしやすい体質を受け継いでいる可能性はありますが、必ずしも発症するわけではありません。気になる症状があるときは、早めに神経内科やてんかん外来を受診して相談することが大切です。
特発性てんかんの遺伝的要因
特発性てんかんは、脳に明らかな構造異常が見つからない一方で、発作を起こしやすい体質に遺伝的な要因が関わっていると考えられています。そのため家族内に同じタイプのてんかんがみられることがありますが、必ずしも親から子へ直接遺伝する病気として発症するわけではありません。
てんかんの発症に関わる生活習慣

睡眠不足や強いストレス、過度の飲酒などは、脳の興奮と抑制のバランスを乱し、てんかん発作を起こしやすくすると考えられています。こうした生活習慣を整えることが大切です。
睡眠不足や過労
睡眠不足や過労は、脳の疲労を強めて興奮しやすい状態を招き、てんかん発作の誘因になります。特に夜更かしや徹夜が続くと発作リスクが高まるため、規則正しい睡眠と適度な休養を心がけることが大切です。
飲酒や薬剤の影響
アルコールを大量に飲んだり、抗うつ薬・睡眠薬など中枢神経に作用する薬剤を自己判断で増量・併用したりすると、脳の働きが乱れ、てんかん発作を誘発・悪化させることがあります。特に、普段から服用している抗てんかん薬を飲み忘れたうえでの飲酒は発作リスクを高めるため、医師の指示を守り、飲酒や薬の飲み合わせの相談が大切です。
てんかんが疑われる場合の受診先

てんかんが疑われる症状があるときは、まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて脳神経内科・脳神経外科・小児科・小児神経科・精神科など、てんかん診療に対応している医療機関を紹介してもらうと安心感が高まります。
また、発作を繰り返したり診断が難しかったりする場合には、各地域にあるてんかんセンターや、てんかん外来のある医療機関の受診も検討されるとよいです。
てんかんになりやすい人についてよくある質問
ここまでてんかんになりやすい条件を紹介しました。ここではてんかんになりやすい人についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
てんかんは予防できる病気ですか?
伊藤 規絵医師
てんかんは、すべてを完全に予防できる病気ではありませんが、発症や発作を起こしやすくする要因を減らすことはできます。睡眠不足や過労、過度の飲酒、発熱時の無理などは発作の誘因になるため、できるだけ避けることが大切です。また、脳卒中や頭部外傷などが原因となることもあるため、高血圧や糖尿病の管理、転倒・交通事故の予防など日常の健康管理も、結果的にてんかんのリスクを下げることにつながります。
てんかんが発症する前に何か前兆はありますか?
伊藤 規絵医師
てんかん発作の前に、前兆を体験する方としない方がいますが、いつもと違うにおい・音を感じる、胃がムッとせり上がる感じがする、急に不安感やデジャヴを覚えるなどの症状が出ることがあります。こうした前兆が決まったパターンで出る場合は、発作日誌に記録し、受診時に医師へ伝えることが大切です。編集部まとめ

てんかんは、年齢や体質、脳の病気などさまざまな要因が重なって起こる病気です。脳卒中、脳腫瘍、頭部外傷、認知症や神経変性疾患などで脳にダメージや瘢痕が残ると、異常な電気信号が生じやすくなり、てんかんを発症しやすくなると考えられています。また、特発性てんかんの一部では発作を起こしやすい体質に遺伝的な素因が関わっているとされ、家族内に同じタイプのてんかんがみられることもありますが、発症するわけではありません。さらに、睡眠不足や過労、過度の飲酒、薬の自己調整などの生活習慣は発作の誘因になります。てんかんが疑われる症状がある場合は、早めに医療機関に相談し、適切な診断と治療、生活指導を受けることが大切です。
てんかんと関連する病気
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
脳卒中脳腫瘍頭部外傷
中枢神経感染症
認知症(特にアルツハイマー病などの変性疾患)
てんかんと関連する症状
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
意識の変化・意識消失
けいれんや筋肉のこわばり
感覚の異常(光がチカチカ見える、異常な音・におい・味を感じる、手足のしびれなど)
自律神経症状(吐き気や腹部の不快感など)
感情や行動の異常(理由のない不安・恐怖感、無意識にお口をもぐもぐするなどの自動症など)
参考文献
『(疾患・用語編) てんかん|神経内科の主な病気』(日本神経学会)
『日本におけるてんかんの有病率、発症率を明らかにしました 』(広島大学)
『てんかんについて | てんかんとは 』(てんかんinfo)
『脳卒中後てんかんの診断と治療』(岐阜大学)
『てんかんセンターQ&A 』(広島大学)
『それって認知症?「てんかん」かも!?』(国立長寿医療研究センター)
『てんかんに関する遺伝の基礎』(国立精神・神経医療研究センター病院)
『第 17 章 てんかんと遺伝』(てんかん診療ガイドライン2018)
『てんかん | KOMPAS 』(慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト)

