世界12位のラグビー日本代表が欧州6カ国と総当たり 迎え撃つは北半球を代表する「6人のレジェンド」
ラグビー日本代表「2026シーズン」開幕
ネーションズチャンピオンシップの見どころ(2)
◆ネーションズチャンピオンシップの見どころ(1)>>ラグビー日本代表「超速」を体現するキーマン5人 名将エディーが「世界有数の10番になる」と絶賛する21歳も
ラグビーの世界ランキング上位12カ国が、その威信をかけて総当たりで激突──。興奮の連続となりそうな大会の開幕が、まさに目前まで迫っている。7月と11月に開催される新設国際大会「ネーションズチャンピオンシップ」だ。
「シックス・ネーションズ」として知られる北半球の欧州6カ国(イングランド・スコットランド・アイルランド・ウェールズ・フランス・イタリア)と、「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」の参戦国である南半球の強豪4カ国(ニュージーランド・オーストラリア・南アフリカ・アルゼンチン)にフィジーと日本を加えた6カ国が「6対6」の形で対戦する。なお日本は、ラグビー界においては南半球に位置づけられている。

イタリアの若き至宝トンマーゾ・メノンチェッロ photo by Getty Images
南北の各グループ内で勝ち点制により順位を争い、最終週の「ファイナルズ・ウィークエンド」では南北の同順位チーム同士が対戦。それによって最終順位と王者が決まる。大会方式に違いはあるものの、ラグビーワールドカップに次ぐ規模とレベルの世界大会と言えよう。
今年から隔年で開催される今大会で、世界ランキング12位(2026年6月29日現在/以下同)の日本代表は長い伝統を誇る「シックス・ネーションズ」と対戦することになる。
7月はイタリア(7月4日/東京・秩父宮ラグビー場)、アイルランド(7月11日/オーストラリア)、フランス(7月18日/東京・国立競技場)と対戦し、うち2試合が日本で開催されるのも大きな見どころだ。さらに11月にはウェールズ、イングランド、スコットランドといったラグビー伝統国と連戦し、最終週の順位決定戦「ファイナルズ・ウィークエンド」に臨む。
今回は北半球のラグビーを長年牽引してきた欧州6カ国とそのレジェンド級の注目選手を、日本代表との対戦順に見ていくとしよう。
まず、7月4日の大会初戦で当たるイタリア(世界ランキング10位)は、欧州6カ国における力関係では5番手に相当するチームだ。しかし、毎年2月から3月にかけて行なわれる世界最古の国際大会「シックス・ネーションズ」では定位置だった最下位から脱却し、昨年と一昨年は5位、今年はスコットランドとイングランドを撃破して過去最高タイの4位と爪痕を残した。
【イタリアの若き至宝が秩父宮へ】そんなイタリアの近年の勢いを象徴しているのが、23歳の若きCTBトンマーゾ・メノンチェッロだ。ひとたびボールを持てば大きなストライドで一気に加速し、相手ディフェンスをぶち破る。スピードとフィジカルを兼ね備えているだけでなく、チャンスを作ったあとの正確なパススキル、そして自らトライを獲り切る決定力、どれをとっても一級品だ。
※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)
2024年のシックス・ネーションズではプレーヤー・オブ・ザ・チャンピオンシップ(大会MVP)に選出され、2025年大会、2026年大会も同賞にノミネートされた(受賞はならず)。大会初戦で白星発進を目指す日本代表にとって、間違いなく脅威となる存在である。
続く7月11日に日本代表が第2戦で対戦するアイルランド(同3位)は、現時点で欧州最高位につけている北半球屈指の強豪だ。2023年と2024年にはシックス・ネーションズ連覇を果たしている。
直近2大会はフランスに王座を譲ったが、世界ランキングが示すようにその安定感は揺るがない。欧州のみならず世界的にもトップレベルのFW(フォワード)とBK(バックス)を揃えており、ネーションズチャンピオンシップ初代王者へ意欲を燃やす。
33歳のFLジョシュ・バンダーフリアーは、長年アイルランドを攻守両面で支えている不可欠な存在と言える。ワールドカップは2019年と2023年に連続出場し、2022年にはワールドラグビー(ラグビーユニオンの国際競技連盟)の年間最優秀選手にも選ばれた。
ピッチのどの地点にも素早く到達して相手選手やボールに絡む驚異的な運動量は、ベテランの域に達した今も健在だ。トレードマークの赤いヘッドキャップ姿が、日本代表戦でもところ狭しと躍動するだろう。
【フランスのレジェンドと国立で対決】シックス・ネーションズ2連覇中の「現・欧州王者」フランス(同4位)も、大会初代チャンピオンになり得る強豪だ。
6月末まで国内大会「TOP14」が催されていた関係により、その上位チームに所属している代表の常連選手は休養優先で、ネーションズチャンピオンシップ開幕時点では代表に招集されていなかった。しかし、そのTOP14で4連覇という偉業を成し遂げたトゥールーズからSHアントワーヌ・デュポンやSOロマン・ヌタマックといった主力の追加招集が6月28日に発表された。翌29日にはデュポンの代表合流が急遽キャンセルされたが、それでもフランスの脅威は揺るがない。
そのアタックを統率するのが、27歳のSOマチュー・ジャリベルだ。司令塔として高く評価され続けてきた一方で、代表2〜3番手のポジションに回って長らく不遇の時代を過ごしてきたが、ようやくチームの信頼を勝ち取って10番に定着した。
今年のシックス・ネーションズでも精度の高いパスやキック、卓越した状況判断力を存分に発揮し、大会連覇の立役者となった。今大会は日本代表だけでなくニュージーランドやオーストラリアとの対戦も控えており、南半球の強豪に勝つためにはジャリベルの圧巻のパフォーマンスが必要不可欠だ。
続いては、日本代表が11月の大会後半戦で対戦する3チームのレジェンド級プレーヤーについて触れていきたい。現時点で公開されている7月のスコッドを基準に見ていくとしよう。
伝統国の一角であるウェールズ(同11位)は欧州ラグビーを象徴する存在だが、世界ランキングにも表れているように近年は低迷している。2021年のシックス・ネーションズは優勝したものの、直近3大会は最下位に沈んでおり、「レッドドラゴン」の愛称で恐れられた強さを取り戻そうとしている最中だ。
昨年、日本代表はウェールズと3度対戦して1勝2敗。負け越してはいるものの、試合内容はほぼ互角だった。11月の3連戦はいずれも日本代表にとって厳しいアウェーゲームとなるが、11月8日のウェールズ戦は金星を狙う大きなターゲットと言えるだろう。
【名門イングランドから初勝利なるか】その近年のウェールズにおいて、26歳のFLジャック・モーガンは並外れたリーダーシップでチームを引っ張ってきた存在だ。
昨年はケガに悩まされて日本代表戦3試合すべて欠場したが、モーガンが入ったウェールズはそのアグレッシブなプレーによって誇りを取り戻し、別のチームへと変わる。現在はスキッパー(キャプテン)から外れているものの、機動力に長けて鋭いタックルやスティールで状況を一変させる能力は警戒しなければならない。
欧州2戦目の11月15日に対戦するイングランド(同6位)は、北半球で唯一ワールドカップ優勝を果たしている(2003年大会)ラグビー発祥国だ。エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)も指揮官として手腕を振るい、2019年のワールドカップは準優勝。スティーブ・ボーズウィックHCに代わった2023年大会は3位と、常に世界のトップ争いに絡み続けている。
今年のシックス・ネーションズは本来の力を出し切れず、まさかの5位と低迷した。しかし、日本代表は敵地で厳しい戦いを強いられそうだ。注目はジョーンズ前HC時代に見出された27歳のSO/FBマーカス・スミス。圧巻のランニングスピードや正確なキックで、最古の伝統を誇る代表チームでモメンタム(勢い・流れ)をもたらすプレーヤーだ。
器用さと能力の高さゆえに、リザーブの最終兵器として試合途中から求められたポジションに入ることも多い。ゲームを彩るインパクトプレーヤーとしてチームにポジティブな影響をもたらす外せない存在だ。日本代表とは2022年、2023年、2024年に2回、計4度も対戦し、いずれも快勝を収めている。今大会も存分にスミスの能力を生かしてくるだろう。
そしてネーションズチャンピオンシップ総当たり戦、11月21日に対戦する最後の相手はスコットランド(同7位)。イングランドとともに1871年に初めて代表チーム同士によるテストマッチを行なった伝統国だ。
ラグビーワールドカップではなかなか上位に絡めていないものの、近年開花したアタッキングラグビーを武器にシックス・ネーションズでは中位をキープ。上位喰いを得意とするダークホースでもあり、当然ながら日本代表としても警戒を要する相手である。
【スコットランドの攻撃を担う33歳】そのスコットランドの攻撃を担う世界屈指の司令塔は、33歳のSOフィン・ラッセル。豊富な経験に裏づけされたゲームマネジメントで決定的なチャンスを作り出すとともに、針の穴に糸を通すような正確無比のキックパスなど卓越したスキルでトライを演出する。
また、プレースキックの精密さも健在で、チームの得点源、アタックの起点であるため、日本代表は百戦錬磨のベテランを思うようにプレーさせないことが求められる。スコットランドとラッセルにとって「簡単な相手」にならないよう、是が非でも食い下がりたいところだ。
ここまで挙げた6選手に限らず、世界的にも傑出したレジェンド級プレーヤーが集結するネーションズチャンピオンシップは、かつてない熱戦を繰り広げることになるだろう。「超速ラグビー」を掲げる日本代表には、彼らをしのぐパフォーマンスと勝利に期待したい。
