脳科学者・茂木健一郎「村上春樹は政治的正しさから外れた優れた文学作品」

脳科学者の茂木健一郎氏が、「私たちはまだ村上春樹を知らない」と題する動画を公開し、村上春樹の作品について語った。茂木氏は、村上春樹の『ノルウェイの森』を英語で読み返し、その翻訳調の文体が英語では感じられなくなることを発見した。「村上春樹さんの魅力であると同時にアンチの原因にもなっている翻訳調の文体が、英語では全くないんです」とコメント。また、村上春樹作品がどのように国際的に評価されるようになったかについても触れ、「日本では必ずしも文壇に評価されてこなかったが、世界的評価が逆輸入されることで国内評価が確立された」と説明した。

茂木氏は、村上春樹の作品がジェンダー問題の観点から批判を受けることについても言及。「村上春樹さんの作品は、政治的な正しさからずれているかもしれないですが、これが彼の作品の本当の価値であり、多くが分からなくさせることで引き込む優れた文学作品です」と評価している。そして、最近の政治的正しさの文脈に囚われた見方が作品を小さくしていると警鐘を鳴らした。「文学の本来の可能性を小さくしてしまう」との懸念を語り、その上で村上作品の価値を再認識したようだ。

動画では、村上作品の持つ文化的背景や人間性の深淵について茂木氏は、「人がどこに行くかわからないような作品」であると称賛。そのため、「我々がまだ村上春樹を知らない」と感じさせる部分が多いと述べた。

動画の締めくくりでは、茂木氏は村上春樹の作品が持つ不確かさの美を強調し、「もしよかったら、私が書いた関係する英文のエッセイ、We don't know Haruki Murakami yetも読んでみてください」と視聴者に勧めていた。