【菜花 明芽】「産まなければ良かった」32歳エリート女性が子どもを産んで後悔した「複雑な事情」
「チャイルドペナルティー」という問題
親が子どもを持つことで、社会的に不利な状況に陥ることを「チャイルドペナルティー」と呼ぶ。本来男女共に起こりうる問題だが、特に日本では女性が出産をきっかけに「仕事」か「子ども」の選択を迫られることが多い。財務省研究機関の推計によると、第一子の出産前後で男性の所得はほとんど変わらないにもかかわらず、女性の所得は約6割も減り、その後も回復していないことが判明。
世界的に見ても、デンマークは約3割、アメリカは約4割減にとどまっており、日本の減少幅はかなり大きいと言える。そんな中、結婚後も仕事を続けたものの、子育てにかかりっきりになったことで、結果的に職場で思うような評価が得られなかった人もいるようだ。
夫の姿を見て「産む決心」
東京都在住の奏さん（仮名・32歳）は、働きながら出産したものの、夫（勇太さん・仮名・32歳）の協力が得られずワンオペ育児になったせいで、仕事の評価に悪影響が及んだ経験があると語る。彼女は凛とした雰囲気で、満島ひかりに似ている。
「大学を卒業し、勤め始めて十年になりました。夫は大学時代の同級生で、結婚後も共働きをしています。私は、企画部で責任のある役目を任されていることもあり、仕事が楽しくて仕方なくて。そのため、子どもを産むのはまだまだ先でいいと考えていたのです。夫の理解もあって、特に妊活などはしていませんでした」
しかし、奏さんは最近になって頭痛や吐き気に見舞われるようになったという。しばらく様子を見ていたが、一向に回復する気配はなかった。
「まさかと思い、念のため妊娠検査薬を試してみることにしました。すると、なんと結果は陽性だったのです。正直なところ、妊娠したことは嬉しかったものの、あまりに予想外の出来事に驚きを隠しきれず……。その後『今の仕事を手放したくない』という感情がふつふつと湧いてきて。半ば混乱しつつも、帰宅した夫に『子どもを授かった』と告げると、とても喜んでくれたので、その姿を見てようやく産む決心がつきました」
一刻も早く仕事に復帰したい
安定期に入ってから職場に妊娠の報告をした奏さん。会社と相談して出産予定日の6週間前から産後8週間まで「産休」を取り、子ども（美桜さん・仮名・0歳）が一歳になる前日まで「育休」を取得することにしたという。この時すでに、長く休むことでみんなから遅れを取るのではないかと恐れるあまり、一刻も早く仕事に復帰したいという気持ちが強かったそう。
「産後、私の生活は一変しました。夫は娘を可愛がるものの、子育てにまったく協力的でなくてワンオペ育児を強いられることになったのです。以前は、遅くまで仕事に没頭したり、自宅で好きなだけお酒を飲んだり……。自由気ままに生活していたのですが、今はそれも完全に無理。産後一か月は子どもの免疫力が未熟なので、ウイルスや細菌に感染する可能性があり、外出さえもままならなくて。しかも、何をしていても娘が泣き出せば中断せざるを得ないし、夜の寝かしつけに2、3時間かかることもざらにありました」
我が子なのに可愛くない
そんな生活を送る中で、奏さんは「子どもを最優先する人生」について疑問を持つようになった。なぜなら、娘に一日中振り回されているように感じて「我が子なのに可愛くない」と思うようになったからだ。
「複雑な気持ちを抱えながらも、子どもは無事一歳の誕生日を迎えました。私はその前日に仕事復帰して、徐々に短時間勤務から通常勤務に切り替えることに。保育園に娘を預けたものの、体調不良を理由に呼び出され会社を早退することもしばしば。それでも一生懸命働いていたので、周りからの理解も得られていると思っていたのですが……。
なんと人事評価を大幅に下げられたのです。以前と働きぶりは変わらないのだから、明らかに子どものため早く仕事を切り上げざるを得ないことが影響しているとしか考えられなくて。思い悩んだ末、夫に子育ての協力を訴えることにしました」
夫と話し合いの場を設けることにした奏さん。しかし、この後彼女に予想外の展開が待ち受けていたのだ。
夫婦の話し合いの結果は【「我が子なのに可愛くない…」出産したことを後悔した32歳エリート女性の「尽きない悩み」】から。
