この記事をまとめると

■アルファロメオといえばフロントフェイスが特徴的だ

■傑作が多い一方で「もっとも醜いアルファ」と称されるモデルもあった

■歴史に残る印象的なフロントフェイスをもつクルマをピックアップ

アルファロメオの”顔”を振り返る

 発表直後の「改名」で早々に話題となったアルファロメオの新型ジュニアですが、そのユニークな顔付きにも多くの感想が寄せられています。「新しい」「煩雑だ」など賛否渦巻く状況ですが、同社ではこれまでにもじつに多彩な「顔」を見せてきました。

 そこで、今回はそんなさまざまな顔をもつ5台を年代順に振り返ってみたいと思います。

●世界一美しいボディには世界一の顔を

 まずは、ティーポ33 ストラダーレを取り上げます。レーシングカーであるティーポ33の技術を公道向けに凝縮、1967年に登場したスポーツカーです。

 ジュリエッタ スプリントなどを手掛けたフランコ・スカリオーネによるスタイリンングは抜群のプロポーションをもつ抑揚豊かなボディ。万人を魅了する仕事は圧巻で「世界一美しいクルマ」と称されたのも納得。

 とくに、フェンダーと一体の曲面ランプをもつフロントの表情はスポーティかつ優美で、ある意味同社の歴史を決定付けるほどの魅力を放ちます。2023年には2代目が限定生産されましたが、もちろん「顔」の美しさは初代に及ぶ筈もありません。

●空力ボディを魅力的に支える斬新フェイス

 続く2台目はジュニアZとします。GT1300ジュニアの系譜とされるスポーツモデルとして、1969年のトリノモーターショーで発表されました。

 ザガートによるスタイリングは、細いピラーと広大なグラスエリア、コーダトロンカを特徴とした美しい空力ボディ。アストンマーチンDB4GTなどを担当したエルコーレ・スパーダの最高傑作ともいわれています。

 ガラス製カバーに覆われたフロントも先進的で、単に空力性能だけでなく、ガラスを盾型に切り取るなど遊び心にも目を引かれます。この「顔」もアルファロメオの歴史に大きな足跡を残しました。

振り返っても名作のオンパレード

●期待と大きくかけ離れた日伊合作車

 70年代末、経営危機にあったアルファロメオは、グローバル戦略を進める日産と合弁事業を展開、1983年にアルナを送り出します。で、3台目はこのクルマに注目します。

 大きな期待とともに登場したボディは、しかし2代目の日産パルサーそのもの。エンジンこそ自慢の水平対向4気筒に換装したものの、アルファらしくないスタイルは酷評の嵐で、「もっとも醜いアルファ」とまでいわれたといいます。

 肝心の「顔」も、パルサーのグリルに小さな盾を無理矢理付けたもので、なんの工夫も魅力も感じられません。同社の長い歴史には、こんな汚点とも言える出来事があったワケです。

●怪物と呼ばれた唯一無二の個性派ボディ

 次に取り上げるのは、1989年登場のSZです。もともとはザガートによるコンセプトカーから始まったプロジェクトですが、市販版はフィアットのデザインセンター主導で進められました。

 しかし、シトロエンSMやCXなどを手掛けたロベール・オプロンによるスタイリングはザガートに劣らぬ個性派で、意表を突く大胆なパネル構成の超ウエッジボディは「怪物」とも囁かれました。

 片側3連ランプや、切り落としたかのような絶壁パネルを組み合わせたフロントセクションは異様ですが、この怪物ボディにはそれくらいのインパクトをもつ「顔」が必要だったのです。

●常識を覆すボディにはユニークな顔を

 最後にピックアップするのは、GTV(スパイダー)です。アルフェッタ以来、しばらく途絶えていた伝統の車名を復活するかたちで、1994年に発表されました。

 ピニンファリーナに委託されたスタイリングは、164のほかランチア イプシロンなどを手掛けたエンリコ・フミアが担当。強烈なウエッジラインにより2分割されたボディは従前の常識を覆した超個性派に。

 フロントでは、ボンネット側に穴を開けた丸型2連のヘッドライトが見所。164に似た端正な盾型グリルと横長のエアインテーク、そして小さな丸型ランプでまったく新しい「顔」を作ってしまうセンスに脱帽です。

 さて、今回はよくも悪くもユニークな「アルファ顔」を5台選んでみました。それぞれには好き嫌いを含めていろいろな意見があると思いますが、特徴的な盾のモチーフを軸に、これだけ幅広い表現が展開される点に同社の歴史と伝統を感じるところです。