小鵬汽車が発表した分離式の空飛ぶクルマのイメージ画像。ピックアップトラック型の走行ユニットの荷台部分に小型の飛行ユニットを搭載する(同社ウェブサイトより)

「空飛ぶクルマ」の開発を手がける中国の小鵬匯天(正式社名は匯天航空航天科技)が、これまでの開発方針を大きく転換。飛行ユニットと地上走行ユニットが別体になった「分離式」の空飛ぶクルマの量産を目指すことがわかった。

小鵬匯天は中国の新興EV(電気自動車)メーカー、小鵬汽車(シャオペン)の関連会社だ。小鵬汽車の創業者で董事長(会長に相当)を務める何小鵬氏は、10月24日に開催したイベントで分離式の空飛ぶクルマの設計コンセプトを披露し、開発方針の転換について次のように説明した。

「われわれは一体式と分離式の両方について模索してきたが、現実の利用シーンや法規制(のクリア)などを考慮すると、最初の量産機種は分離式にすべきとの判断に至った」

量産時期は未定

小鵬匯天の分離式の空飛ぶクルマは、飛行ユニットと地上走行ユニットがそれぞれ独立した製品になっているのが特徴だ。

前者は、多数のプロペラをモーターで駆動して飛行する電動垂直離着陸機。後者はレンジエクステンダー(航続距離を延長するための発電用エンジン)を搭載したピックアップトラック型のハイブリッド車で、荷台部分に飛行ユニットを載せることができる。

飛行ユニットは小型で、パイロット1名と乗客1名が搭乗できる。走行ユニットには4〜5名が乗車可能であり、飛行ユニットのトランスポーター(運搬車両)と充電ステーションとしての役割を担う仕組みだ。

なお何氏は、分離式の空飛ぶクルマの量産時期については明らかにしなかった。

空飛ぶクルマの実現を目指す小鵬汽車の「夢」は2020年に始まった。同年9月、小鵬汽車と何氏個人の共同出資で小鵬匯天を設立。同社を主体に空飛ぶクルマの開発を進めてきた。


小鵬汽車が2021年10月に発表した最初のコンセプトモデルは、地上走行と空中飛行が両方可能な一体式の設計だった(同社ウェブサイトより)

2021年10月、何氏は(小鵬匯天が思い描く)空飛ぶクルマのコンセプトモデルの画像を初公開。それは4つのタイヤを持つスポーツカーのようなボディに、大型のプロペラを2基搭載し、地上走行と空中飛行が両方可能な一体式の設計を採用していた。プロペラは折り畳み式で、地上走行時はボディ内に収納できるようになっていた。

何氏は当時、この空飛ぶクルマを2024年から量産し、100万元(約2048万円)以内の販売価格を目指すと語っていた。

航続距離やコストを考慮

それから2年を経て開発方針を(一体式から分離式に)転換したのは、技術的な限界を考慮した面も大きい。

「一体式の空飛ぶクルマは、離陸時の総重量が分離式の飛行ユニット部分の3倍近くになる。飛行のための電力消費量が巨大だ」。財新記者の取材に応じた小鵬匯天の担当者はそう語り、次のように補足した。


本記事は「財新」の提供記事です

「地上走行と空中飛行の両立は、一体式の設計でも実現できる。とはいえ、われわれの(航続距離やコストなどの)期待値にはまだ遠く及ばない。現在の技術水準に鑑みれば、分離式の設計のほうがより現実的な選択だ」

(財新記者:方祖望)
※原文の配信は10月25日

(財新 Biz&Tech)