車のCMは、その車種の世間的なイメージを大きく左右することがあります。ヒット車種のなかには、秀逸な構成やインパクトのあるキャッチコピーによって、幅広い層に好印象を与えたものが少なくありません。

なかでもCMソングは、長い間にわたって私たちの記憶に残り、当時の時代の空気を思い出させてくれるもの。今回は「印象に残っている車のCMソング」についてのエピソードを集めました。

ミニバンを「家族の車」として定着させたCM

1996年に発売されたホンダの初代ステップワゴン

流行りのCMにはしばしば世相が反映されるものです。今回のインタビューでも、90年代半ばから始まった「ミニバンブーム」を象徴する車種が挙げられました。

「初代ステップワゴンのCMに使われていた『オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ』ですね。当時はまだミニバンがそれほど一般的ではなくて、ああいう形は『仕事用の車』というイメージがあったと思うんですが、あのCMで一気に『家族で楽しく出かける車』という印象が広まったように思います。

CMの作りもポップな感じで、紙芝居というかコマ送りというか、カラフルだし賑やかだし、見るたびなんだかテンションが上がっていました。当時は中学生くらいでしたが、それからみるみる街にステップワゴンが増えていったことを覚えています。

最近出た新型ステップワゴンのCMでも、『オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ』が使われていて、耳にした瞬間とても懐かしくなりました」(40代男性)

ビートルズの曲として知られる「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」ですが、初代ステップワゴンに使われていたのはセネガルのユッスー・ンドゥールという歌手によるカバー版。CM中に流れる子どもの賑やかな遊び声もあいまって、陽気な印象を与える映像でした。

車も曲も大ヒットした懐かしいあのCM

1994年発売のトヨタ・カローラII

CMソングのなかには、アーティストの楽曲をイメージソングとして利用しているもののほか、CM専用に制作された曲もあります。どちらも多くの人の耳に触れる点は変わりませんが、「CM専用曲がCD売上の面でも大ヒット」という珍しいケースも。

「オザケンさんの『カローラIIにのって』ですね。当時は小学生でしたが、友達の間でも流行っていた記憶があります。買い物に行ったはずが財布を忘れて、そのままドライブに行ってしまうという内容が子どもながらに面白くて、私も何度も口ずさんでいました。

仲のよかった友達のお母さんもカローラIIに乗っており、ある日その友達の家で遊んでいたら、お母さんが『買い物に行ってくるね』と出て行って。二人でスーファミで遊んでいましたが、夕方になっても帰ってこないんですよ。

私がちょっと心配して『帰ってこないね』と言ったときの、友達の『そのままドライブに行っちゃったのかなぁ』という返しが今でも忘れられません」(30代男性)

小沢健二さんの「カローラIIにのって」はCDとしても発売され、オリコン2位を記録するなど大きなヒットに。CMソングとしてもっとも有名な曲の1つかもしれません。

それにしても、歌詞の内容をふまえたご友人の切り返しは、小学生ながら見事というよりほかありません。

「スンスンスーン」じゃなかったの!?

2002年に発売されたマツダの初代アテンザ

CMソングは偶然耳にするケースが多く、歌詞まで細かく確認しようとする人は少ないと考えられます。そのため、多くの人が勘違いしたままでいるフレーズもあるようで……。

「小学生くらいの頃に流れていたマツダのCMが好きでした。幼い弟がそれを見かけるたび『スンスンスーン』とピョンピョン跳ねていたことを覚えています。でも、かなり後になって、アレが実は『ズーム・ズーム・ズーム』だったことを知り、かなり衝撃でした。

個人的に、『ルパン三世』のテーマソングの冒頭が『ルパンルパーン』じゃないと知ったときくらいビックリしましたね」(20代女性)

マツダのブランドフレーズの1つである「Zoom-Zoom」ですが、これは幼児が車の走行音を表すときに頻用される擬音語でもあり、日本語の「ブーブー」や「ブーン」といった音にあたります。走行中の躍動感が存分に表現されたCMが、頭に残っている人も多いかもしれません。

やたらと印象に残って「無限ループ」に

2002年に発売されたトヨタの初代パッソ

印象に残るCMソングのなかには、一種の「中毒性」がある曲もあり、ずっと頭から離れない状態になることも。車のCMソングでも、こうした「無限ループ」にハマったことがある人は少なくないでしょう。

「初代パッソの『パッソプチプチ・プチトヨタ』が今でもたまに脳内で無限ループします。吹石一恵さんが大好きだったこともありますが、ループまでするようになったのは当時のバイトが原因ですね。

レンタカー屋で働いていて、所長から回送を頼まれるときにカギを渡されるのですが、なぜかパッソのときだけ『パッソプチプチ・プチトヨタ』と口ずさみながら渡してくるんですよ。

しだいにほかの社員さんにも伝染して、毎日3回くらいはそのフレーズを耳にしていましたね」(40代男性)

2004年の登場から3代にわたって生産されたトヨタのパッソですが、2023年に生産終了が発表されました。トヨタ最小クラスの乗用車であることを表す「プチトヨタ」のキャッチフレーズに、愛着を感じている人もいるかもしれません。

ちなみに2代目のパッソのCMでは、「パ・ピ・プ・ペ・パッソ、プチプチ・プチトヨタ」というフレーズに。上のレンタカー屋の所長さんは、車両が入れ替わった際にこのフレーズも切り替えたのでしょうか……。

人それぞれ思い出が詰まったCMソング。みなさんはどんなCMが印象に残っていますか?