9月はミッドウィークもノンビリしていられない…/原ゆみこのマドリッド

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「この試合だけで良かった」そんな風に私が安堵していたのは月曜日、今週開幕となるCLグループリーグ1節のポルト戦でフェリペが出場停止と知った時のことでした。いやあ、どうにもアトレティコはUEFAの大会で監督や選手が複数回の処分を受けるのが癖になっているようで、昨季もグリーズマンこそ、グループリーグのリバプール戦で退場して2試合出場停止とされた後、1試合に減刑してもらえたんですけどね。決勝トーナメント出場が懸かった最終節のポルト戦で退場したカラスコは3試合も喰らい、16強対決マンチェスター・ユナイテッド戦の両方、準々決勝マンチェスター・シティ戦1stレグに出られなかったのはまだ記憶に新しいところかと。

そのせいか、フェリペも昨季の未消化処分が幾つもあるのかと疑ってしまったんですが、いやいや。彼はスコアレスドローでアトレティコの敗退が決まったシティ戦2ndレグで退場し、その1試合の分が今季に回っただけなんですが、この水曜午後9時(日本時間翌午前4時)、シビタス・メトロポリターノに迎えるのが、これまたポルトとはホントCLって、いつも同じクラブがリピートしている?いえ、セルジオ・コンセイソン監督こそ、未だ健在でも、プレーする選手たちは多少、変わっていると思うんですけどね。今季のポルトはここまで5試合で4勝1敗、土曜のジル・ビセンテ戦にも0-2と勝って、意気揚々と昨季のリベンジに乗り込んで来るのはちょっと怖いかと。

それに対してアトレティコは絶対守護神のオブラクが直前のレアル・ソシエダ戦で太ももを打撲、ゲルビッチが先発することがほぼ確定しているのが一番の懸念なんですが、サビッチもまだケガのリハビリ中。リーガ2試合で出場停止だったナウエルが戻り、サン・セバスティアン(スペイン北部のビーチリゾート、レアル・ソシエダのホームタウン)遠征に参加しなかったレマルも復帰予定、クーニャは微妙といった具合なんですが、はあ。どうして私があまり楽観的になれないのかを今、説明するより、先週末のリーガ戦の様子をお伝えした方が早いですよね。

この4節はまずは金曜、2部の弟分、柴崎岳選手が先発に復帰したレガネスがブタルケで前半にニヨム、後半にはアルナイスがどちらも終盤にゴールを決め、ロスタイムに1点を返しただけのエイバルに2-1と勝利してスタート。ようやく今季初白星を挙げて、イディアケス新監督もホッとしたはずですが、まだまだシーズンは始まったばかりですからね。今は17位でも早いうちに波に乗れば、昇格順位到達もそう難しいことではないんですが、1部ではこんな時期から首位決戦が到来することに。

ええ、翌土曜にはもう3年目に入る全面改修工事を一休みして、サンティアゴ・ベルナベウでレアル・マドリーがホーム開幕、同じく3連勝中のベティスと対決したんですけどね。丁度、私も7月にスタジアムツアーをして、半端ない工事現場ぶりを目撃していただけに、たった1カ月ちょっとで、何事もなかったように6万人のファンをスタンドに迎え入れ、普通に試合をやっているのには驚かされるばかりだったかと。前節、コリセウム・アルフォンソ・ペレスでの午後5時30分からのヘタフェvsビジャレアル戦では完全に茹ってしまったこともあり、午後4時15分というキックオフ時間にも恐怖しかなかったんですが、大丈夫。

さすがに9月となると、涼しい風が吹いてくるもので、正面スタンドが日影だった前半は穏やかに過ごせたんですが、ピッチの方では早いうちから動きがありました。というのも9分にはアラバのロングパスを受けたビニシウスが、飛び出してきたGKルイ・シウバをかわしてvaselina(バセリーナ/ループシュート)。それが空っぽのゴールに入って、マドリーが先制点を奪ったから。とはいえ、これにはベティスも、フェキルがカルバハルにエリア内で倒されながら、ペナルティを取ってもらえなかったプレーで負傷交代するショックを乗り越えて、17分に追いつくことに成功しています。

うーん、後でアンチェロッティ監督も「el de hoy ha sido un error bastante grave/エル・デ・オイ・ア・シードー・ウン・エロール・バスタンテ・グラベ(今日のはかなり重大なミスだった)」と反省していたんですけどね。アレックス・モレノの左サイドからのスローインをボルハ・イグレシアスが受け、折り返しをもらったカナレスにGKクルトワの股間を抜くシュートを決められてしまっては、キックオフ前の直近3トロフィー(CL、リーガ、UEFAスーパーカップ)披露で王者気分に浸っていたファンたちも肩透かしを喰らったような形ですが、そのまま前半は1-1で終了です。

そしてハーフタイムには5月頃は午後7時過ぎまで来なかった西日がどんどん正面スタンドを上がってきて、殺人的な直射日光と闘いに、もっとしっかり日焼け止めを塗ってくるべきだったと私も後悔する破目に。逆にピッチは日影部分が増えて、羨ましかったんですが、後半序盤はベンゼマやモドリッチ、フアンミらのシュートはあったものの、スコアが動いたのは、18分。カマビンガがバルベルデに代わってからのことでした。ええ、この日はアンチェロッティ監督が趣向を変えて、バルベルデとクロースをベンチスタートにしていたんですが、入って2分もしないうちにpajarito(パハリート/小鳥)改め、halcon(アルコン/ハヤブサ)がエリア内でロドリゴにラストパス。

そのシュートが決まって、マドリーは待望の勝ち越し点をゲットしたんですが、これで当人も奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)の起爆剤としてだけでなく、「Quiero siempre ser titular/キエロ・シエンプレ・セル・ティトゥラル(いつだってボクはレギュラーになりたい)」という願いを叶えるのに一歩前進できた?要はこのゴールのおかげで、ウイリアム・ホセやホアキンを投入して同点を目指したベティスを抑え、逃げ切ることができたマドリーでしたが、まあ、試合後、ロドリゴも「Es dificil senntarlo y competir con el/エス・デフィシル・センタールロ・イ・コンペティール・コン・エル(ベンチに座らせるのも、彼と競うのも難しい)」と認めていたバルベルデは本来なら、中盤の選手。

よって、この日のような使い方もできるとはいえ、そうなると、カセミロのマンチェスター・ユナイテッド移籍で中盤の底のレギュラーとなったチュアメニ、もしくはクロース、モドリッチといった重鎮が控えになってしまうため、その辺は指揮官にも躊躇いがある?いえ、当人に言わせると、「2人は賢くて謙虚だから、先発しない試合があっても自分が大事な選手であることがわかっている。Gestionarlos es la cosa más sencilla que he tenido en mi carrera/ヘスティオナール・エス・ラ・コーサ・マス・センシージャ・ケ・エ・テニードー・エン・ミ・カレラ(彼らをマネージするのは私のキャリアでも最高に簡単なことだ)」(アンチェロッティ監督)だそうですけどね。

この2-1の勝利リーガでは唯一、4連勝したチームとなり、単独首位に立ったマドリーですが、この先、懸念の種があるとしたら、34才のベンゼマが出ずっぱりなこと。ええ、いくらアンチェロッティ監督が「代わりのCFがいないというのは正しくない。マリアーノ、アザール、ロドリゴ、アセンシオ、いざとなれば、モドリッチだって…」と、エース不在だった昨季のクラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)でクロアチア人MFをfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)として使い、大失敗した例を挙げて、自虐の笑いを誘っても、実際、アザールもアセンシオもこの日は出場機会をもらえておらず。

ただ、この先は火曜午後9時からのCLセルティック戦を皮切りに週2試合ペースが始まるため、時にはベンゼマにお休みを与えないといけない試合が出てくるかと思いますが、さて。ちなみに翌日曜もバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でセッションを行ったマドリーは月曜にグラスゴーに移動。会場となるセルティック・パークで仕上げして、グループリーグ初戦に挑むことになりますが、相手も土曜に宿敵レンジャースとのオールドファームダービーで4-0と大勝したばかりで、昨季のCL王者を迎えるのにチームの士気も上がっていそうですしね。何より、あちらには古橋亨梧、前田大然、旗手怜央、井手口陽介と4人も日本人選手がいるため、楽しみにしている日本のファンも多いんじゃないでしょうか。

え、それでサンティアゴ・ベルナベウの新しいプレスルームでアンチェロッティ監督、ペレグリーニ監督の会見を見た後、急いで帰った私が後半から近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で観戦した、レアル・アレーナでの試合はどうだったのかって?いやあ、まだあちらにいた前半4分早々、カラスコのCKがゴールポストに当たって跳ね返ったボールをモラタがシュート。幸先良く先制したアトレティコだったんですが、丁度、メトロの駅に向かっていた頃、30分にはオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)から、再び「Goool de Morata!(モラタのゴール)」の絶叫が。それがどうやら、こちらはラストパスを送ったジョアン・フェリックスがハイボールをトラップした時、肩とも胸とも二の腕とも見える位置だったのがVAR(ビデオ審判)に咎められ、審判がハンドでノーゴールを宣言。

0-1のままで後半が始まったんですが、まさか移籍市場クローズ最終日に来たサディク(アルメリアから移籍)がセルロート(ライプツイヒから再レンタル)に代わってデビューし、早くも10分にはアリ・チョからのクロスを肩やら二の腕やらにも見えるヘッドで決めて、同点にされているってどういうこと?大体がして、こちらにはVAR介入がなかったのも不公平なんですが、18分にはもう今季のお馴染み、バルサに移籍金を払わないで済むよう、出場率を調整しているグリーズマンが入ったため、前節バレンシア戦のような奇跡を期待していたところ…。

逆に31分にはやはり交代出場だった久保建英選手のスルーパスから、サディクに自身とチームの2点目を決められ、ドッキリさせられるなんてこともあったんですが、幸いオフサイドでスコアには上がらず。シメオネ監督も33分にはモラタとカラスコをコレアとエルモーソに代えて、勝利を目指したんですが、うーん、変なツキはありましたよね。この日はクーニャがケガでお留守番、交代枠を使い切っていなかったため、敵のシュートをクリアしようとしたレイニウドと激突したGKオブラクが負傷し、プレー不可能となっても、39分にゲルビッチが入る余地があったのは不幸中の幸いだったかと。

でもその程度ですよ。だってえ、ロスタイム7分なんて、グリーズマンがエリア前で敵に倒された後、転がったボールをコケがコレアにパス。そのシュートが決まったのに審判はファールを優先して、得点を認めてくれないって何?ええ、後でコケなども「ボクのところにボールが来たから、プレーを繋げることができて、あれは正真正銘のゴール。Creo que debió dejar seguir/クレオ・ケ・デビオ・デハール・セギール(プレーを続行するべきだったと思う)」と文句を言っていたんですけどね。

それでもらったFKからのプレーもジョアンのシュートをGKレミロに弾かれ、続くコケのシュートも敵DFにカットされてしまったとなれば、その怒りも理解できますが、結局、1-1の引分けで終わったアトレティコは4試合で勝ち点4を取りこぼすことに。何せ、早くも世間じゃ、初戦でラージョと引分けた後、3連勝と快進撃でバルサが2位になったこともあり、今季はまた“Liga de cien puntos/リーガ・デ・シエン・プントス(勝ち点100のリーガ)“になるなんて声も上がってきていますからね。彼らも今はあまり不公平なジャッジを批判するより、まずはCLポルト戦に集中して、新たに土曜のセルタ戦から、リーガの遅れを取り戻してくれるといんですが。

そしてヨーロッパの大会が始まっても関係のないマドリッドの弟分2チームは揃って日曜試合となったんですが、どちらも残念な結果に。ええ、昼間にパンプローナ(スペイン北部)でオサスナに挑んだラージョは後半、オロスに奪われた先制点はルジューヌのFKが決まって追いつけたんですが、まさか45分、バルサからレンタル移籍したてのアブデがjugadon(フガドン/スーパープレー)を披露。ドリブルでエリア内奥まで切り込むとルーベン・ガルシアにラストパスを送り、そのゴールで2-1って、こんな土壇場で負ける程、悔しいことはありませんって。

おかげで2連敗となったラージョとはいえ、それでも弟分仲間のヘタフェよりはマシで、まさか開幕から3試合、カルロス・ソレル(PSGに移籍)のPKによる1得点しかしていないバレンシアがいきなり爆発するなんて、一体、誰に想像できる?バルに行くのがちょっと遅れた私は前半7分のラトのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)は見逃してしまったんですが、14分にはムサーのクロスを、アトレティコが入団後即レンタル修行に出たサムエル・リノ(ジル・ビセンテから移籍)がvolea(ボレア/ボレーシュート)で合わせて2点目をゲット。更にそのリスタートからのボールをDFからバックパスされたGKダビッド・ソリアがカスティジェホ目掛けてゴールキックを蹴る大ポカを犯し、そのシュートで前半16分までに3点差にされているとは、開いた口が塞がらないとはまさにこのこと?

後半もCKからニコのヘッド、更にウーゴ・ドゥーロに古巣恩返しゴールを決められて、点差は5点にまで拡大。こうなると、いくら32分にプレシーズンマッチでチーム最多の2ゴールを挙げているCBガストンが名誉の1点を挙げたって、2試合目のベンチ入り禁止処分でラジオ用ボックス観戦していたキケ・サンチェス・フローレス監督の慰みにもなりませんよね。ええ、それまでシーズン開幕から、ジローナ戦でのウナルの1ゴールだけと、日照り感もまさに半端ありませんが、5-1の大敗より辛いのは、ロスタイムにはバレンシアのイライス(ライプツィヒからレンタル)が2枚目のイエローカードをもらって退場。

それにつられるように、アランバリも2枚目ゲットでレッドカードを突きつけられ、次節、兄貴分と引分けたばかりの手ごわいレアル・ソシエダとのホームゲームに出られなくなってしまった方かと。まあ、そんな感じで先週末はマドリー以外、不満の残る結果になってしまいましたが、一応、弟分たちには1週間、調整する時間がありますからね。だんだん気温も下がってきて、トレーニングしやすい環境になってきましたし、滅多にない偶然でマドリッド1部4チームが揃ってホームゲームとなる5節には皆、地元のファンを喜ばせることができるいいですよね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ

南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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