ドライビング×BRAIN-AI! 脳波で読み解くリアルな感情をビジネスに応用する

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脳科学の発達により、人間の感情をデジタル化する技術が飛躍的に進歩している。
たとえば、自動車を運転しているときや熟練者が作業をしているときに、脳のどの部分が活性化されているのかがデータとして記録できる時代になった。

マクニカは、こうした脳科学と人工知能(AI)とを組み合わせて、新たなビジネスを展開している。

2022年5月に開催された「第2回量子コンピューティングEXPO【春】」の同社ブースで、同社の取り組みを聞いた。


■ビジネスをサポートする「Brain-AI」
マクニカは、イノベーションを起こし、企業のデジタル改革を総合的に支援するビジネスを展開しており、とくに力を入れているのが「BrainTech」だ。

BrainTechとは、Brain(脳)とTechnology(技術)を合わせた造語。
脳の状態を解析して、そのメカニズムの解明とともに、ビジネス領域へ応用することを目的としている。

ブースで披露していた「Brain-AI」はBrainTechのひとつであり、人間が自覚していない情報を脳から取り出して、AIで活用することにより、さまざまな課題を解決するというものだ。

Brain-AIでは、次の3つのステップにより提案から実装、運用までをサポートする。

1. 相談
会社が抱える問題や実装したいことをヒヤリングする。

2. 脳波測定デモンストレーション
脳波を測定およびレビューをして、デモで効果を実感してもらう。

3. サービス導入アドバイス
実際の環境で、どのように活用できるかを相談の上、実績・導入を検討する。

同社はディープラーニングや機械学習により、すでに300件を超えるAIの社会実装の実績がある。

■ドライビング×Brain-AIデモ
会場では、Brain-AIのために開発されたヘッドギアが展示され、ドライビン×Brain-AIデモを実施していた。

スタッフによると、前回の展示会でドライビングシミュレータのメーカーと知り合う機会があり、ドライビング×Brain-AIを研究するに至った。

ブースで展示されていたドライビング×Brain-AIの実機は、ドライブシミュレーターにBrain-AIの技術を搭載したものだ。
ドライビング×Brain-AIは、およそ1年前から開発を進めてきた。
マクニカは脳波の研究を何年もしているが、ドライビング×Brain-AIの研究はおよそ1年前からで、ドライビングシュミレータのデモ機は、今回が初となる。


ドライビング×Brain-AIのデモ。


ドライビング×Brain-AIでは、脳波とドライビングの関係を研究している。
デモでは、最初にベースラインを知るため、目を開けたときの脳波と、目を閉じたときの脳波を計測する。わかりやすくいえば、ドライブ前の平常時の脳波を確認する。

その後、ドライビングシミュレータを用いて、ドライビング時の脳波を計測する。
具体的には、自動車の運転に集中しているか、ケータイを見ながら運転したときにどうか、などだ。


ヘッドギアには、7つのセンサーが搭載され、リアルタイムに脳波を測定できる。



ドライビングシミュレータの画面。


ドライバーの危険検知と、脳波の関係を数値で知ることができる。
無意識下での脳波を計測することにより、ドライバーの状態検知を明らかにできるだけでなく、その情報をもとにメーカーは車両を開発できる。
この技術を自動運転に応用すれば、人間が快適な自動運転のドライビングに役立てられる。


測定結果。1番上が「集中力」、2番目が「運転に対する集中力」、3番目が「疲労度」。


マクニカはドライビング×BRAIN-AIのほかに、下記のソリューションも研究している。

〇感情×BRAIN-AI
リアルな感情と脳波の関係性を読み解く研究だ。
ユースケースとしては、ゲーム開発や教育DX、ニューロマーケティング、熟練者の心理、作業者の安全管理などが考えられる。

〇匠の技能の継承×BRAIN-AI
熟練者の判断を脳波で計測し、AIでモデルを構築する研究だ。
ユースケースとしては、官能検査の定量化や不審物検知、医療データのスクリーニング、熟練技術必要行程のAI化などが考えられる。


ヘッドギアによる脳波測定の結果。脳波の状態がひと目でわかる。


マクニカは2021年7月、脳科学とAIを組み合わせ、オープンイノベーションを通じた新たな付加価値の創造と、その社会実装を推進していくための組織として、「BRAIN AI Innovation Lab.(BRAIL)」を設立した。BRAILでは、脳科学という新たな技術を取り入れ、AIが生み出す価値をさらに高めることを目指している。

具体的には、ここで紹介したBRAIN-AIをさまざまな分野へ応用することにより社会課題を解決し、豊かな社会の実現へ繋げたいとの考えだ。
昨今、AIのビジネスへの活用が流行っているが、今後は脳科学×AIのビジネスへの活用が主流になってくるかもしれない。

Xレポート 〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜 - 経済産業省
株式会社マクニカ




ITライフハック 関口哲司