村元哉中&盒饗臺紊蓮屬佞燭蠅砲靴できない」と運命を感じたプログラムを手に入れ、「100%の演技」で全日本に挑む

11月のNHK杯で日本歴代最高得点を出した村元哉中・郄橋大輔組
昨年12月の全日本選手権、フリーダンス(FD)の前夜だった。村元哉中と郄橋大輔は、マリナ・ズエワコーチから電話を受けた。アイスダンス、カップル1年目、折り重なる課題と格闘していた。
「やるしかないんだから、自分たちを信じて皆さんに演技を披露するの! すばらしいゴールにたどり着くには、真っ直ぐな道はありません。全部、ぐねぐねと曲がっているの。きれいで真っ直ぐに見える道は、地獄にしかたどり着かないのよ」
時間がかかって当然だった。
だからこそ、アイスダンス2年目の躍進は瞠目に値した。
【2シーズン目の飛躍的成長】
今年11月、村元・郄橋組はグランプリ(GP)シリーズ・NHK杯に出場し、リズムダンス(RD)は70.74点、FDは108.76点でどちらも日本歴代最高得点をたたき出している。当然、総合も179.50点で最高得点を記録。日本選手1位となって、度肝を抜いた。おまけに直後に出場したワルシャワ杯も2位に入り、190.16点と記録を更新したのだ。
足りない時間を、ふたりは濃密に過ごしている。
今年7月、"かなだい"と親しまれる村元・郄橋組にインタビューした。
ーーアイスダンスのデビューシーズンで全日本選手権2位は快挙です。それでも満足したように見えませんでした。1年目を振り返ると?
「昨シーズンは、(村元)哉中ちゃんに引っ張ってもらったと思います。けっこう、テンパっていたはずで(笑)。考えることがいっぱいあって、とにかく滑るのに必死でした」
郄橋はそう言って笑顔を作った。シングルスケーター時代から変わらない人懐っこさは残るが、男っぽくなった印象を受けた。顔つき、体つき、仕草まで、どこか余裕があった。
アイスダンサーに転向した郄橋は、徹底的な肉体改造に挑んでいる。シングルスケーター最後の2019年にインタビューした時、彼は「高校生の時と同じ体重までしぼっています」と話し、減量中のボクサーを思わせた。土台から変える厳しいトレーニングをしたことは歴然だった。腕の太さや胸の厚みだけでなく、お尻まわりや背中の筋肉がほどよくついていた。
その結果、軸が安定し、腕のリーチも広くなり、リフトも滑らかになった。
「大ちゃんは、(1年間で)体がすごく変わりました! 一緒に滑っていて、ホールドとかでも、この範囲が(両腕を広げながら)広くなって。動きが自由になってきました」
村元は言う。郄橋が"アイスダンサーになった"ことによって、かなだいの力は本格的に引き出された。
「(2年目は)"動きに合わせて滑っているよ"を言わずに、(暗黙の了解で)リードをしてもらえているのを感じられるようになって。(アイスショーから)アメリカに戻って練習を再開しても、大ちゃんがリードしてくれているのを感じていて。アイスダンスは時間をかければかけるほど合ってくるので。時間との勝負ですね」
【ふたりを引き立てるプログラム】
アイスダンスは、ツイズルひとつをとっても簡単ではない。ひとりではなく、「ふたりで合わせる」という意識は大事だが、合わせることに夢中になりすぎると、足元の狂いが出る。わずかなズレがふたりだと命取りで、なかなか取り戻せない。緻密さが求められる競技で、だからこそ時間が必要なのだ。
圧倒的に不足する時間を、ふたりはトレーニングの深度で縮めてきた。アイスダンスで平昌五輪に出場した村元がけん引し、郄橋は天性と経験と鍛錬で向き合った。そこに加速度的成長の正体が見える。
RDの『ソーラン節&琴』という曲に出会えたのも、躍進を可能にした。村元は、「ふたりにしかできないプログラム」と、運命を感じたと言う。北国の雄壮な漁の風景を大らかに演出しながら、後半はヒップホップで弾むように情感を盛り上げる。かつて、シングルで世界を制した郄橋のリズム感や基本的スケーティングの質と速度が際立つ。
一方でFDは『ラ・バヤデール』で悲恋のなかにある甘い一瞬を、しっとりと熱く滑る。昨年からの継続だが、ステップもリフトも技の流れが滑らかになった。技術精度が高まり、出来ばえ点(GOE)も増加。郄橋も、「昨年と同じ曲ですが、(観客を)引き込めるようになったと思うし、新たな発見もあって」と手ごたえを感じている。
【北京五輪代表の有力候補に】
特記すべきは、かなだいが道の半ばで、その先にクライマックスはあるという点だ。
NHK杯、演技を終えたかなだいはスーツケースを持って最上段へ上がり、ふたり並んでパイプ椅子に座った。そして、優勝を争う世界トップのアイスダンサーたちの演技を食い入るように見つめていた。歴代最高得点を出した直後だが、何も満足していなかった。
飛躍的成長で、北京五輪代表の座も有力になってきた。メディアは競争をあおるだろう。事実、それだけの関心事だ。
ただ、ふたりには行くべき道がある。
「毎回100%を出すことに、重点を置いてやっています」
郄橋はおごらずに言う。100%の積み重ねだけが限界を超える。12月23日、さいたまで開幕する全日本選手権に挑む。
