「軽トラ」人気がコロナ禍で急上昇! アウトドアやカスタムも!? 軽トラの意外な活用法とは

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現在、軽トラを製造するのはスズキとダイハツのみ

 今、クルマ好きの間で熱い視線を集めているジャンルがあるのをご存じでしょうか。それは「はたらくクルマ」の代表でもある「軽トラック(軽トラ)」です。

 強化される排ガス規制や安全規制に対応できないとの理由から、2021年4月にホンダが撤退したため、現在軽トラを新車で購入できるのはスズキ「キャリイ」とダイハツ「ハイゼットトラック」、そしてそれらのOEM車のみ。

ダイハツの軽トラ「ハイゼットトラック」

【画像】赤内装の屋根なしイケイケ軽トラ爆誕!? 劇的な進化を遂げた「未来の軽トラ」とは(31枚)

 スズキとダイハツしか軽トラを製造していないことからカテゴリ自体が縮小しているように見えますが、ここ最近はキャンプや釣りなどのアウトドアブームの影響で急激に注目が集まっています。

 軽トラのどのようなところが魅力的なのでしょうか。

 軽トラは「標準貨物軽自動車」に該当し、軽自動車の規格(全長3.4m×全幅1.48m×全高2.0m以下、排気量660cc以下)のなかで、車輪数は3以上、荷台の最大積載量が350kg、荷台に載せられる貨物のサイズは、車両の全長の+10%(0.3m)か2.5m未満の高さまで(幅は車両と同じ幅まで)と定められています。

 ちなみに軽トラの主な用途はあくまで「貨物運搬用」であるためシートは2座しかありませんが、貨物を積載してそれを監視する目的で荷台に人が乗っても良いとされています。

 ただしその場合、出発地の警察署で「荷台乗車許可申請」の手続きを経て許可を得る必要があります。

 そして現在、新車で購入可能なスズキ キャリイとダイハツ ハイゼットトラックは、驚くほど似たスペックとなっています。

 全長3395mm×全幅1475mmというのは一緒。全高はルーフ形状によって差があり、キャリイは全高1765mm、ハイゼットトラックは1780mm/1885mmです。660ccエンジンのスペックも最高出力46馬力(ハイゼットトラックのAT車は53馬力)、最大トルクもキャリイが59Nm、ハイゼットトラックが60Nmとほぼ同じです。

 また安全機能として、キャリイには予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」が、ハイゼットトラックトラックには衝突回避支援ブレーキ機能「スマートアシストIIIt」が搭載されています。

 さらに両者には、ベーシックな2シーター(シングルキャブ)だけでなく、座席後ろに荷物置き場を設けることでシートのリクライニングも可能な「キングキャブ(クラブキャブ)」ボディも用意。

 キャリイでは「スーパーキャリイ」、ハイゼットトラックでは「ハイゼットトラックジャンボ」がラインナップされるなど、ボディバリエーションも同様となっています。

 搭載されるミッションは、キャリイが5速MT/3速AT、ハイゼットトラックが5速MT/4速AT。全体的にギア比は高めに設定されており、トップスピードより力強さと燃費を稼ぐセッティングになっているようです。

 さてここで、軽トラに注目が集まる理由について、自動車関連の複数の関係者から聞いた話をもとに考察してみます。

●キャンプ&個人で楽しめるアウトドア趣味が人気に

「3密回避」を実現して楽しめるとあって、近年アウトドア関連の趣味に人気が集中しています。

 また、ソロキャンプブームの延長で少人数でも楽しめるキャンプやグランピングが人気ですが、こういった趣味には機材や道具をかなり持ち込む必要があり、運搬に適したクルマのニーズが高まったようです。

●コロナ禍の影響で維持費の安い軽自動車に再び脚光

 一部の業界を除き、コロナ禍による経済的なダメージを受けて収入が減少するなか、自家用車も維持費の安い軽自動車が売れており、そのなかでも実用を考慮したセカンドカーとして購入するケースも多いそうです。

●プチ農業ブームで荷物の運搬をしやすいクルマが求められた

 キャンプや釣りなどのアウトドアブームだけでなく、農業を楽しむ人が増えました。それまで自宅のベランダでおこなっていた家庭菜園が、実際に農地を間借りするなどに拡大。そのようななかで農具を運搬するのに最適なクルマとして軽トラ人気が高まった側面もありそうです。

●シンプルな構造ゆえに、原始的な「運転に専念する」という行為が楽しい

 実用性重視の軽トラには、自家用車では当たり前となっている快適装備の類はほとんどありません。

 最近はパワステやエアコンも標準装備されるようになりましたが、ウインドウの開閉は手動で、オーディオレスのモデルもあります。さらに非力なエンジンで大きな荷物を運ぶため、MTを選ぶユーザーが多いのも特徴です。

 このシンプルさが逆に新鮮であり、軽量ボディや後輪駆動も相まって、自分の運転スキルを活用して上手に走らせるという行為を楽しむことができます。

●シンプルな構造なので、カスタムの自由度が高い

 運転の楽しさのほかに、このシンプルだからこそ、カスタムのベース車両として魅力的であるということも特徴です。「はたらくクルマ」をいかにしてカッコ良くするか、趣味にも使えるカスタムを兼ねたドレスアップを施す楽しさがあるようです。

 実際、クルマ好きとして知られる芸能人が軽トラを購入、ロールバーを組んだりペイントしたりトレーラーをけん引したりと、自由にカスタムしてレジャー向けビークルとして楽しんでいる様子を動画で紹介しています。

軽トラユーザーに聞いた「軽トラの魅力」

 軽トラその人気の高まりを実際に感じている中古車店のオーナーに聞いてみました。都内の店舗にもかかわらず、すでに数台の軽トラを仕入れているといいます。

「最初は業販用と思って仕入れたのですが、個人オーナーの方からの問い合わせが結構多いのに驚いています。使い方は人それぞれでしょうが、やはりカヤックやキャンプなどの趣味用の道具を載せるのを前提とした相談が多いです。

 仕事でかなりの数の軽トラを販売してきましたが、運転するたびに感じるのは、不思議な高揚感と満足感です。車種によってはパワステなし、エアコンなし、電装部品もほとんどなし。それでいてエンジンは非力ですので、いかに街中の流れに乗るか運転スキルを求められます。

 40km/hでも頑張って動かしている、純粋に運転を楽しめるのがいいのではないかと思います」

軽トラの荷台にはたくさんの荷物が積める

 もうひとり、整備士という職業柄、「はたらくクルマ」として軽トラを何台も乗り継いできた軽トラマスターにも話を聞いてみました。

 最大積載量は350kgと少なめながら、どんな狭い道でも入っていける見切りの良さもポイントに挙げていました。

「基本的にシートは前後スライドのみ、リクライニング機能さえありませんが、目的地まで必要な道具を運ぶには最適です。

 また荷台が屋外になっているので、想像以上に大きな荷物も積載可能ですし(最大2.5mまで)、そこで重量バランスが変わったり、荷物を積んだ方がトラクションのかかりが良かったりと、挙動変化を直に感じられます。

 運転の楽しさを求めて購入するクルマではありませんが、シンプルがゆえに運転に集中できるのかもしれません」

 さらに、実際に個人ユースで軽トラを購入した現役オーナーからも話を聞いてみました。

「自分の趣味がオフロード走行や林道ツーリングなので、現地までバイクを積載するアシとして購入したのですが、軽トラは商用車なので税制面も含め維持費も安くて助かります。

 オフロード走行ではバイクが泥だらけになることも多く、汚れたり濡れたままの状態で積載することもしょっちゅうあります。それでも汚れが気にならない荷台なので、非常に重宝しています。

 ただ、個人で買うなら、後ろにリクライニング機能があるボディ(キングキャブ)がおすすめです。やはり少しでもシートが倒せると快適性がだいぶ違いますし、ちょっとした荷物は車内に置けます。

 スポーツカーかハイブリッド車と軽トラを同時に所有できたら、ある種クルマ好きとしては完成形に近いかもしれないです」

※ ※ ※

 軽トラは、個人ユースのファーストカーとしては用途が限定されるため厳しい面もありますが、これがセカンドカー、とくに大きな道具や荷物を必要とする趣味を楽しむ人とっては非常に魅力的でしょう。

 さらに軽の商用車だから税制面でも有利ということも見逃せないメリットだといえます。