毎月、新たに発売されるビジネス書は約500冊。いったいどの本を読めばいいのか。読書家が集まる本の要約サイト「flier(フライヤー)」で、1月にアクセス数の多かったベスト20冊を、同サイトの編集部が紹介する――。
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第1位:『ヤバい集中力』(鈴木祐著、SBクリエイティブ)
第2位:『ポケット版「のび太」という生きかた』(横山泰行著、アスコム)
第3位:『記録の力』(メンタリストDaiGo著、実務教育出版)
第4位:『SELFISH(セルフィッシュ)』(トマス・J・レナード著、バイロン・ローソン共著、糟桃代訳、秦卓民監修、祥伝社)
第5位:『夫のトリセツ』(黒川伊保子著、講談社)
第6位:『出世のススメ』(角田陽一郎著、日本実業出版社)
第7位:『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』(ターリ・シャーロット著、上原直子訳、白揚社)
第8位:『ニューエリート』(ピョートル・フェリクス・グジバチ著、大和書房)
第9位:『MMT現代貨幣理論入門』(L・ランダル・レイ著、中野剛志/松尾匡解説、島倉原監訳、鈴木正徳訳、東洋経済新報社)
第10位:『僕らはそれに抵抗できない』(アダム・オルター著、上原裕美子訳、ダイヤモンド社)
第11位:『資本主義ハック』(冨田和成著、SBクリエイティブ)
第12位:『分断を生むエジソン』(北野唯我著、講談社)
第13位:『アート思考』(秋元雄史著、プレジデント社)
第14位:『他者と働く』(宇田川元一著、NewsPicksパブリッシング)
第15位:『編集思考』(佐々木紀彦著、NewsPicksパブリッシング)
第16位:『Think Smart』(ロルフ・ドベリ著、安原実津訳、サンマーク出版)
第17位:『Mindful eating』(ジャン・チョーズン・ベイズ著、高橋由紀子訳、石川善樹監修、日本実業出版社)
第18位:『経営参謀としての士業戦略』(藤田耕司著、日本能率協会マネジメントセンター)
第19位:『学びを結果に変える アウトプット大全』(樺沢紫苑著、サンクチュアリ出版)
第20位:『ティム・クック』(リーアンダー・ケイニー著、堤沙織訳、SBクリエイティブ)

※本の要約サイト「flier」の有料会員を対象にした、2020年1月の閲覧数ランキング

■情報があふれる社会で「集中力」を高める方法

鈴木祐『ヤバい集中力』(SBクリエイティブ)

2020年1月の第1位は『ヤバい集中力』でした。重要な作業や締め切りが目前に迫っているのに、いつの間にか掃除をし始めたり、動画を見てしまったり……そんな経験がある人におすすめの一冊です。

現代社会は情報があふれており、多くの人が集中力不足を感じています。本書が伝えているのは、本能と理性の特性を理解すれば、誰でも「ヤバい集中力」を発揮できるようになるということ。著者はサイエンスライターの鈴木祐氏です。

もちろん継続的な努力が必要なのは言うまでもありませんが、本書を読めば「まずは2カ月実践してみよう」という気持ちにさせられるはず。「集中力」を論理的に理解し、科学的・心理的テクニックを使って高めていきたいなら、ぜひこの本を読んでほしいです。そして「ヤバい集中力」を身に着け、2020年を実りあるものにしていただければと思います。

■「のび太」に自分らしい人生を学ぶ

横山泰行『ポケット版「のび太」という生きかた』(アスコム)

第2位は『ポケット版「のび太」という生きかた』。『ドラえもん』に登場するのび太のイメージは、あまりポジティブではありません。そんな「ダメのび太」は、作品で描かれる未来世界で永遠のマドンナであるしずかちゃんと結婚しています。どこで人生の大逆転が起きたのでしょうか。

本書はそんな「のび太」の生き方にスポットをあてながら、「のび太哲学」ともいうべき人生訓を導き出します。一見すると失敗ばかりで遠回りしている印象ののび太ですが、「実は想像以上に上手に人生を歩んでいる」ことが本書を読むと実感できるでしょう。

著者は「ドラえもん学」を提唱し、あらゆる角度から漫画『ドラえもん』の研究・分析を行う富山大学の横山泰行名誉教授。純粋に『ドラえもん』をさらに深く理解するうえでも楽しめます。

本書で描かれているのび太の姿勢や行動から、自分らしい人生を送り、夢を実現するためのヒントを学んでみてはいかがでしょうか。

■「記録」を使いこなすテクニックを紹介

メンタリストDaiGo『記録の力』(実務教育出版)

第3位は『記録の力』。2020年に入り、新年の抱負を掲げた方も多いはず。それを現実にできるかどうかは、「記録」にかかっています。

本書によれば、アインシュタインやニュートンといった過去の偉人も、あらゆるデータを書き残す「記録魔」でした。この誰もが行っている「記録」を、最大限に使いこなすためのテクニックを紹介する本です。

著者であるメンタリストDaiGo氏も、10数年にわたって記録を続けており、その数は数万にものぼるといいます。年間12冊以上の書籍をコンスタントに出版できているのも、普段から膨大な「記録」をため込んでいるおかげだとか。

「悩みはあるけど、どうやって解決すればいいのかわからない」という人はもちろん、普段メモやノートを目標達成のツールとして使っている人も、学ぶところが多い一冊です。本書のテクニックを実践し、「人生を変える」かもしれない「記録の力」を味わってみてください。

■人を動かしたければ、脳の機能を知るといい

ターリ・シャーロット『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』(白揚社)

続いて、4位以下から、注目の書籍をご紹介します。

まず取り上げたいのが第7位『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』。本書は膨大な実験や神経科学のデータを用いて、それまで有効だと信じられてきた方法が、実際は役に立っていないことを次々と明かしていきます。読み進めていくうちに、自分が普段何気なくとっている行動を根本から疑いたくなったり、自分のとっていた行動の愚かさにハッとさせられたりすることでしょう。

また、どういった脳の機能が人の行動に影響を及ぼしているのかも、本書を読むとよくわかるようになります。そこにあるのは、脳の機能に沿った行動をするか、反した行動をするかで、人の意見や反応は変わるというシンプルな結論です。

「正論」を掲げるだけでは、人を変えることはできません。本書はいわば人間の設計図。人の動かし方を知りたいとき、そして自分がどう動いているのかを知りたいとき、かならずやあなたの力になってくれる一冊です。

■MMTがよくわからない人へ

L・ランダル・レイ『MMT現代貨幣理論入門』(東洋経済新報社)

第9位『MMT現代貨幣理論入門』は、今話題のMMT(Modern Money Theory、現代貨幣理論)の基本的な考え方を、第一人者であるL・ランダム・レイ教授がわかりやすく解説したものです。

MMTは基本的に「自国通貨を発行できる政府は、財政赤字や債務比率を気にすることなく、躊躇なく財政出動するべきだ」という考えに立脚しており、異端の経済学として扱われています。主流派経済学になじみのある人にとっては、受け入れがたい内容かもしれません。

しかし、今行われている巨額の金融緩和やマイナス金利といったマクロ的な金融政策が、効果を上げているとは言いがたいのも確かです。日本でもMMTを経済政策に掲げる政党が現れており、今後の経済政策の在り方に一石を投じることになると予想されます。

MMTを理解することで、経済そのものへの見方が変わる。それだけの破壊力が、この本にはあります。

■ビジネスエリートは「現代アート」を学ぶ

秋元雄史『アート思考』(プレジデント社)

最後にご紹介するのは、第13位『アート思考』です。

本書で取り上げられている「アート」とは、主に1980年代以降の「現代アート」を指します。日本における「現代アート」は比較的マイナーな位置づけにありますが、世界の美術界においては現代アートこそがメインストリーム。グローバルに活躍するビジネスエリートに欠かせない教養と考えられているのです。

東京藝術大学大学美術館長および教授である著者・秋元雄史氏は、「アートとは、ゼロから価値を生み出す創造的活動であり、ビジョンと、それを実現させるための内なる情熱が必要」といいます。この「アート」を「アントレプレナーシップ(起業家精神)」に置き換えてみても、まったく違和感がないのではないでしょうか。

これからの時代に求められるのは、「正しい問いを立てることができる洞察力とユニークな視点」です。本書を通じて、現代アートの奥深い世界の理解を深めていただければと思います。そこに、新しいビジネスを生み出す発想法があるはずです。

先月から引き続きランクインしたのは『他者と働く』(第4位→第15位)だけで、今月のランキングには新しい本が数多く登場しました。そのなかで『学びを結果に変える アウトプット大全』(第19位)は、要約の公開からすでに1年が経過しているにもかかわらず、根強い人気を保っています。来月のランキングはどうなるのか、引き続きご注目ください。

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(flier編集部)