瑛太「本気でふざけないと伝わらない、楽しんだ者勝ちです」――映画『土竜の唄 香港狂騒曲』インタビュー
主演俳優が主人公然としてカッコよく引き立っている映画には、決まって素晴らしきバイプレイヤーの存在があるものだ。それは共に戦う相棒だったり愛する人だったり、または敵だったり……役どころはさまざまであっても、いい映画ほど主役とバイプレイヤーの魅力は比例しているように思える。映画『土竜の唄 香港狂騒曲』で主人公・菊川玲二を演じる生田斗真にとって、“清廉潔白のエリート”警視庁の兜 真矢(かぶと・しんや)を演じる瑛太がそれにあたる。とにかく濃いキャラがズラリと並ぶこのシリーズに加わった瑛太は“本気”で役を楽しみ、映画の面白さを再確認したという。

撮影/川野結李歌 取材・文/新谷里映 制作/iD inc.



生田斗真と作り上げたファイティングシーンは必見



――瑛太さんの演じる兜は、警察官とヤクザの癒着の撲滅を目指すエリート警察官。潜入捜査官(モグラ)である玲二を追いつめていくキーパーソンとなりますが、シリーズ2作目としてすでに完成されている玲二の強烈キャラに対抗するには、策が必要でしたよね?

そうですね(笑)。台本と一緒に原作をいただいて読んでみたら、原作での兜は、表向きは敏腕刑事だけれど実態はシャブ中毒の悪徳刑事という、ものスゴくぶっ飛んだキャラクターで。映画版では原作とは少し異なるオリジナルの兜像になっていますが、多くの俳優はこういう役をやってみたいと思いますよね。

――原作はあるけれど映画オリジナルということは、キャラクターを構築する楽しさもあった?

玲二に正義があるように、兜にも彼なりの正義があって、その正義と正義のぶつかり合いを楽しみたいなと。そのために兜をどういうテンションで、どういう立ち位置に持っていったらいいのか悩みました。この映画がどれだけエネルギッシュかはパート1を観れば一目瞭然。でも、前作で玲二と戦ったキャラクターのような、何て言うか……劇画的なキャラづくりじゃないことだけははっきりしていて。あえてそうしないことによって、兜の異質さを出せるのではないかと思ったんです。



――そうやってあの淡々とした佇まいにたどり着いたんですね。

シンプルに“エリート警官であること”を意識しました。兜のバックボーンはそれほど描かれていませんが、エリートで清廉潔白だけど実は……というところを出せたらいいなと。ただ容姿に関しては、僕はもともとぼやーんとした顔なので(笑)、キリッとした感じを出すために眉をつり上げたりはしています。そして兜の見せ場はやっぱり、ラストの玲二とのファイティングシーンですね。

――もういろんな意味で、ハチャメチャ感のあるラストシーンでした。生田さんの演じる玲二とのアクションシーンは楽しめましたか?

僕自身アクションは好きですし、斗真もアクションのうまい俳優なので、ラストのファイティングシーンはどうやったらリアルな喧嘩っぽさを出せるのか、ふたりで作り上げていきました。でも、本当は酔拳をやりたかったんですよね(笑)。

――酔拳というと、ジャッキー・チェンが演じたようなカンフーですか?

というのもパート1を観て、玲二と対峙するとなると普通のアクションじゃもの足りない気がして、兜っぽい何かをやりたいですね、と三池崇史監督と話をしていたんです。残念ながら酔拳は実現しませんでしたが(苦笑)、リアルを追求しつつも普通の殴り合いにはしたくなくて、ああいう武器を使うことに落ち着きました。実はあの武器、撮影に入ってから三池監督に「こんな感じのひどい武器で玲二と戦いたいんですけど……」と相談して、急いで美術部に発注して作ってもらったものなんです。卑怯な感じを大事にしたら、ああいう形になりました(笑)。




自分自身のなかにある“正義”とはいったい何だ?



――三池監督とは『一命』(11)以来だと思いますが、本作とはまったくタイプの違う作品。三池さんの演出にも違いはありましたか?

『一命』のときは(市川)海老蔵さんが主役。僕は三池組が初めてだったこともあり、キャラクターをどうしていくのかを事前に話し合った記憶があります。でも今回はどんどん進んでいく。段取り(テスト)なしですぐ本番ということもあって、最初はそのスピード感に混乱しそうになったりもしました。

――そのなかで感じた三池組らしさとは?

三池監督を含めて全員が同じ方向を向いていることですね。そしてキャストもスタッフもみんながみんな三池さんという“カリスマ”についていっている、そういう空気感がありました。もちろん生田斗真からも主演として作品を背負うエネルギーを感じましたし、そのなかで僕は兜としてどうやって爪跡を残すか、残せるかを考えました。

――爪跡、しっかり残していると思います。何より瑛太さんはこの兜役を楽しんで演じていたんだろうなぁという吹っ切れ感も伝わってきました。

ありがとうございます(笑)。宮藤官九郎さん(演出)の『サンバイザー兄弟』に出演させてもらっていて(※取材を行ったのは2016年12月上旬)、その舞台にも言えること、感じていることですが、相手に面白さを届けようとしても中途半端だと伝わらないんです。本気でふざけないと伝わらない。楽しむということには、大変なことも苦しいこともいろんなことが付随してくるけれど、マイナスのことを考えても前には進まなくて──。だから楽しんだ者勝ちだと思って、この『土竜の唄 香港狂騒曲』も本気で楽しんで演じました。




――どのキャラクターも常に本気だからこそ、その本気が生み出す面白さがこの作品にはあると思います。その面白さのなかに“正義”もある。先ほど、玲二なりの正義、兜なりの正義があると語っていましたが、瑛太さん自身のなかにある正義についても考えたりしましたか?

そうですね……正義とは何かって普段はあまり考えないですけど、最近の出来事で言えば──それは大人としてどうなんだ? という疑問というか怒りを覚えることを目の当たりにして、見知らぬ人に直接怒ったことがありました。他人の俺が口出しをしていいのか? というのもありましたけど、言わずにはいられなくて。

――そうやって“動ける”というのは、正義ですよね?

……と考えると、正義って本人が「これが正義だ!」と思って行動するというよりも、怒りとか憤りとか、それらに立ち向かおうとする言動が、周りの人からは正義に見えるのかもしれないですね。この映画で玲二は「正義のためだ」と何度も言いますが、僕らの日常生活のなかに“正義”が明確に存在しないからこそ、人はこういう映画で正義を見たいと思う、ヒーローを見たいと思うんじゃないかなって。

――たしかに。瑛太さんが思う“こうなりたい”というヒーロー像はありますか?

基本的には優しい人、思いやりのある人でありたいですね。あと、気配りのできる人を見ていると、ああなりたいなぁと思います。たとえば現場に(差し入れなどで)お菓子があったとすると、それを「食べますか?」って周りに気を配れる人というか。たとえばの話ですけどね(笑)。僕はわりと自分のことでいっぱいいっぱいなので(笑)。

――いっぱいいっぱいには見えませんが…(笑)。

そうですか(笑)。こうなりたいとか(俳優としての)野心は今も昔も変わらずありますが、30代になって変わったのは、こうしたいああしたいと周りに発信していたものが、内側──自分自身に向くようになったこと。うまく言えないけれど、仕事があること、俳優を続けていることに対しての責任感は、昔よりも強くなった気がします。




被写体から撮る側に…ずっとやりたかった写真に挑戦



――2016年は『土竜の唄 香港狂騒曲』のほかに『64 -ロクヨン- 前編・後編』『殿、利息でござる!』などの出演作が公開、また2017年公開の『リングサイドストーリー』と『光』の撮影など、映画がメインの1年だったのではないかと。改めて映画の現場の楽しさを語るとしたらどんなことですか?

やっぱり映画はいいですよね。映画は映画の、舞台は舞台の良さがあって、舞台は「今日、お前はどこまでいけるんだ?」と自問自答しながら乗り越えていく面白さがある。一方、映画はひとつひとつのカットによって映画全体ができあがっていく。一瞬の仕草をカメラに捉えてもらうことで、そのキャラクターの生きざまがスクリーンに出る面白さがある。ただ、最近の日本映画はちょっと混沌としていますよね……。

――混沌、というのは?

若い子たちが好んで観る、いわゆる恋愛ものの映画はそれを求めている人がいるから作られているんだろうけれど、もっと均等であってほしいというか。いろいろな日本映画が並んでほしい、そういう日本映画界になってほしい。そしてそうなったときに、自分はどういう作品に出たいのかを考えるわけですが、作品の大小ではなく自分が本当に「いい」と思う作品に出ていきたいですね。



――2016年はそんなふうに「いい」と思える作品といくつも出会えたわけですから、充実した1年と言えますね。また、雑誌で写真と文の連載を始めたのも今年ですよね?

そうなんです。『年下の男、カタルシス』(『GINZA』/マガジンハウス刊)という連載で、俳優とかスポーツをやっている年下の人たちを撮っているんですけど、カメラって面白いですね。

――写真に目覚めました?

ずっとやりたかったことではあるんです。以前から家族の写真は撮っていたけれど、カメラを通じて何か形に(表現)できないかなって思っていたので……。僕自身はこうして取材を受ける側としてカメラの前に立ってきたので、撮られる側の気持ちはわかる。その連載ではどうやって(被写体に)意地悪をしようかなって(笑)、試行錯誤しながらやっています。

――それがまた役者として表現することに繋がりそうですね。

写真が自分にどんな変化をもたらすのかはわからないですが、撮る側に立ってみて感じるのは、カメラを向けたときに変わる人、こういう表情を撮ってほしいと決め顔をしてくる人、はやく撮影が終わらないかなって雰囲気を出している人とか、カメラ越しだとその人がすごくよくわかるんです(笑)。だから自分が被写体であるときの居方も自然と変わってきていると思います。




――それはどのように?

照明の位置や光の強弱をどうしているのか気になったりしますし、何よりカメラマンさんが何を撮りたいのか、気持ちを覗くようになりました。自分が撮影するようになってからは、撮るのも撮られるのも、どっちの時間も楽しくなりましたね。

――いい相乗効果ですね。瑛太さん自身が撮りたいと思う瞬間、残しておきたいと思うシーンはどんなものですか?

やっぱり家族ですね。いま舞台をやっているので、役者さんたちの本番前の緊張している姿や舞台が終わった後の安堵感、一段落してビールを飲んでいる姿とかは「いいなぁ」って思うし、そういう瞬間のみんなの表情を撮りたいとは思いますが、基本は家族です。



【プロフィール】
瑛太(えいた)/1982年12月13日生まれ。東京都出身。B型。2001年にドラマ『さよなら、小津先生』(フジテレビ系)で俳優デビュー。その後『ウォーターボーイズ』(フジテレビ系)、『オレンジデイズ』(TBS系)、『アンフェア』(フジテレビ系)と話題のドラマに次々と出演。映画では『ディア・ドクター』で第33回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。その後、『のだめカンタービレ 最終章(前編・後編)』、2016年には『64-ロクヨン−(前編・後編)』『殿、利息でござる!』に出演。『リングサイドストーリー』(17年春公開予定)、『光』(17年秋公開予定)の公開を控える。
【Twitter】@mituoda


■映画『土竜の唄 香港狂騒曲』
12月23日(金・祝)全国ロードショー!
http://mogura-movie.com/


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