山田孝之「役作りはミリ単位だった」――『闇金ウシジマくん』の撮影を終えた今、考えること。
ピクリとも動かない不敵な表情と、圧倒的な威圧感。『闇金ウシジマくん』(TBS系)がテレビドラマとして映像化されてから6年、山田孝之は“Mr.非合法”、闇金・ウシジマを演じ続けてきた。そして、ついにシリーズのフィナーレを迎える今、役への惜別の想いもひとしお…と思いきや、「さあ、次何やろうか? っていう感じ」と意外にもクールな構え。その裏には、ウシジマを完璧なまでに客観的に計算して作ってきた、山田の俳優としてのスゴさがあった。

撮影/平岩 享 取材・文/新田理恵 制作/iD inc.



『ザ・ファイナル』で初めて感情を作った



――アウトローの金融屋「カウカウファイナンス」の社長・ウシジマがハードに活躍する同名コミックの実写版『闇金ウシジマくん』。映画第3作・第4作となる『Part3』と『ザ・ファイナル』を続けて拝見して、不覚にも最後のウシジマ社長の表情に涙してしまいました。

あのひとりのシーンのところですか? (その涙には)安心もきっとあるんでしょうね。「あ、社長にもちゃんと心通ってたんだ…」っていう。

――誰に対してもただカネを貸し、貸した金は確実に回収するという行動原理のみで動いてきた、一切の心境を示さないウシジマ社長の今までになかった一面が最後に現れる。あのシーンを演じるにあたり、悩んだりはしなかったですか?

いやいや、すごく楽しかったです。社長の気持ちを考えるということを、今回初めてできたので。



――今までは“キャラ”として創造していたという感じですか?

そうですね。外側だけを磨いてきたので。俺も観た方々と同じ感想です。「ちょっと社長のことを知れてよかった」って。

――最後に、「社長も人だったんだ」みたいな…。

嬉しい気持ちで終わりましたね。撮影のときは、車の中だったので鏡とかを見ながら、どのくらいまで表情に感情を出していくか。眉間のシワもそうですし、基本的にあんまり呼吸が乱れないので、感情によって、どのぐらい胸が動くまで息を吸うかとか。




――ウシジマ社長の役作りって、ミリ単位なんですね。

そうですよ! ミリ単位ですよ、全部。「このぐらいだったら大丈夫かな?」「社長として崩れない程度に、でもちょっと人間っぽさが見えてくるっていうのは、どのくらいのバランスだろう?」とか考えながら芝居を作っているときは楽しかったです。

――テレビドラマの『Season3』、映画の『Part3』、『ザ・ファイナル』と、シリーズの幕引きに向けた一連の作品を撮り終わって、今はどんな心境ですか? 寂しかったりしますか?

いえいえ。「さあ、次何をやろうか」っていう感じです。山口(雅俊)監督もずっと『ウシジマくん』に拘束されてましたからね。だって、企画・プロデュース・監督・脚本・編集まで、すべてに携わっているわけですから。定期的にやってたら、これしかできないですよね。

――テレビシリーズの初期の頃から思い返したときに、ウシジマ社長がひとつのキャラクターとして磨かれたと自覚したのはどの作品ですか?

映画の『Part2』ですね。磨かれたというか…『Part1』のときもある程度できてはいたんですけど、『Part2』を観たときに、ほぼ完成したなと思いました。

――ちょっとずつウシジマのフィギュアが形作られていくような…。

『Part1』のときも、すでに“売っていい状態”にはなってたんですよ(笑)、フィギュアにたとえると。で、『Part2』のときは、それをヤスリで磨いて、もう一切のつなぎ目を見えなくするみたいな感じでした。

――ウシジマ社長に対してものすごく客観的ですよね。

そうですね。彼がどういう人間かというところを何も探ってこなかったので、長い間、すごく客観的に見ていましたね。今回『ザ・ファイナル』で初めて感情を作りました。



心地よい仲間とは、相談ができる間柄



――先日、カウカウファイナンスの受付嬢役で登場する最上もがさんを取材したとき、既にできあがっているチームに入るのは緊張したけど、山田さんが似顔絵を描いてリラックスさせようとしてくださったと話してました。やはり“社長”として、現場の雰囲気作りには気を配っていたのでしょうか?

(カウカウファイナンスの)中のメンバーには、居やすく感じてもらえるよう接するようにはしていましたね。でも、似顔絵を描いたりとかは、ドラマの『Season1』のときからやっていました。スタッフの顔を描くとか、変な顔を描いて。

――そうだったんですか。

みんなそれぞれのデスクがあるので、本番の直前に、デスクの真ん中ではなく、あえて端っことか、何かの紙のすき間からちょっと見えているぐらいに置いておいて、本番が始まって、それに気付いて笑いをこらえる相手の表情を、こっちは社長として無表情で「どんなリアクションするのかな」「笑っちまわないかな」みたいなことを思いながら見てるんです。

――あえて本番まで気付かれない場所に置くという(笑)。

そうそう。そういうことは前からやっています。やべ(きょうすけ)さんとかから、「ちょっと孝ちゃん! なんだこれ!!」とか言われてたりするんですが(笑)。



――カウカウファイナンスのシーンでは、社員たちとの絆の強さが感じられます。山田さんにとって、心地よい仲間関係ってどういうものですか?

やっぱり相談ができる相手じゃないですかね。仕事のことでも、くだらないことでも。仲良くないとできないじゃないですか。仲良くないと、「これどう思う?」「知らねえよ」ってなっちゃう。

――親身に考えてもらえなさそうですよね。

何でも相談できる仲っていうのはすごくいいと思いますね。

――山田さんの交友関係の広さは、さまざまなメディアを通して伝えられています。大人になるにつれて、親しい友だちを新しく作るって難しくなっていくと感じるので、スゴいなと思うんです。

なんでですか!?

――子どもの頃のように、誰彼かまわず懐に飛び込んでいくのは勇気がいりませんか?

何が恐いんですか!? 何が恐くて飛び込めないんですか!?

――面倒くさい人だったらどうしよう…とか、ちょっと様子を見てしまいます。

面倒くさかったらそこで一歩引けばいいじゃないですか! めっちゃ楽しい人かもしんないですよ。

――はい。頑張ってみます。俳優仲間の友だちとは、互いに切磋琢磨できる関係なのでしょうか。同世代だとお互い闘争心が芽生えたりはしないのですか?

まあ、若いときはみんな絶対ありましたけど…。ここにいるすべての俳優に僕はなれないし、ここにいるすべての人も僕にはなれないし。だから、それぞれのやるべきことをやっていればいいと思うので、それはないですね。




――『闇金ウシジマくん』のシリーズでは、毎回、若手の俳優さんがゲストで出演されますよね。下の世代の俳優たちを見ていて、二十歳前後の頃のご自身との違いを感じる部分はありますか?

違いというか、彼らに良い場を提供できたなっていうことはすごく感じていますね。この作品に出てくる人たちは、みんな大変なので。キャラクター作りもそうですし、状況的にも。『ザ・ファイナル』でいうと太賀みたいに。(『Part3』の本郷)奏多もそうですし、『ザ・ファイナル』の間宮)祥太朗みたいになってくると、こんなキャラクターどうやりゃいいんだ!? どんなふうにこのセリフ言えばいいの!? って役じゃないですか。

――最後まで間宮さんだと気付かずに観ていました(笑)。

『Part1』のときの新井(浩文)さんもそんな感じでしたね(最凶の男・肉蝮を怪演)。あれは面白かったですけどね、エピソードを聞いても。監督から「新井くんじゃなきゃ絶対ダメなんだ!」って言われて出たら特殊メイクだし、フードを被ってほぼ顔見えないし、ボロボロの歯も入れてるから何しゃべってるかわからないし。「うちじゃなくてよかったじゃん!」って言ってました(笑)。

――やりがいのある役を演じる機会を提供することができた、意義ある作品になったということですね。

そう思います。

――若手へのチャンスという意味では、中学生時代のウシジマを演じた狩野見恭兵さんは、山田さん演じるウシジマにそっくりでした。アドバイスはされたのですか?

アドバイスは一切してないですね。撮影も別だったので。カウカウファイナンスで撮影をしていたときに一度、彼が現場に見学に来たことはあったのですが、そのときに「アクションばっかりで大変でしょ? がんばって」って声をかけた程度です。

――でも、ものすごく特徴を捉えていましたよね。

相当研究したんでしょうね。中学時代のウシジマのオーディションは全3回やったらしく、僕は1回目しか立ち会えなかったのですが、彼に関しては僕、そのときに見て「彼がいいと思います」って監督に言いました。

――どんなところにピンときたのですか?

しゃべり方とかにちょっとクセがあったんですけど、その場に来たときの堂々としてる感じや、芝居を見てもすごく自然だったので。何より、彼の“居方”がもう、絶対ウシジマできるな! って感じだったんです。でも、監督は一度では踏み切れず、2回、3回とオーディションを行ったらしいんですが。結果的に「彼にした」って聞いて、「でしょうね」と思いました。



「お金って何なんだろう?」たどり着いた答えは…



――『闇金ウシジマくん』シリーズをずっとやってこられて、ご自身のお金に関する考え方に変化はありましたか?

シリーズというか、ドラマの『Season1』をやるときに、「お金って何なんだろう?」と考えて、一応自分なりに答えには行き着いたので、そこからは変わってないです。

――その答えとは?

「お金は最終目標にしてはいけないもので、すべての中間にあるものだ」っていうことです。適度な距離感を常にとっておかなきゃいけないな、と。近すぎてもよくないし、遠すぎてもよくない。最終目標にするな、カネだけ手に入れても何もならないぞ、と。安心にもならないし。

――お金は、やったことの結果についてくるものですよね。

そうですね。だって、「楽したいから」って、今でも楽できるだろ? って思うんです。「日本だぞ、ここ」って。それで、たとえば10億円もらっても、絶対楽しくないですよ。それを守ろうとするのに必死だから。絶対みんな寄ってくるし。いつ死ぬかもわからない。この10億円で一生生きるとすると、80歳までとして、年間いくらで、月いくらで…とか、結局計算していかなきゃいけない。



――お金が目的っていうより、「何をしたいか」が重要ですよね。

はい。何かする、どこかへ行く、食べる。その中間に必要なものがお金だと思います。

――ちなみに、今一番買いたいものは何ですか?

何だっけな…すぐ忘れちゃうっていうことは、たぶん大したことじゃないんですよね(笑)。

――そんなに物欲はないほうですか?

いやいや、ありますよ。欲しいものはいろいろ出てくるんですけど…。今、何だっけな? あ、小さい冷蔵庫。飲み物だけ入れておくやつ。普通にホテルとかに置いてあるようなやつです。別にAmazonでもピッて買えるんですけど(笑)。

――それはなぜ必要なんですか?

ちょっと必要な場があるんです…。

――気になりますが…他には?

あとは、車に加湿器を買おうと思って、いつも忘れちゃう。あれはAmazonではちょっと難しいですよね。とある俳優さんの車に乗せてもらったときに、ふわぁ〜と加湿してて、「あ、その発想なかった!」って(笑)。でも確かに、移動中に寝たりするので、俺も真似しよう! と思ったんです。車に加湿器。なんかいいなぁ、って。

――これからの季節、乾燥しますし、風邪予防のためにも、一日も早いご購入を…。

冷蔵庫と加湿器…現実的な…(笑)。

――最後に、今ハマっていることを教えてください。

肉を食べられる店を開拓することです。

――牛? 豚?

牛ですね。牛肉はほぼ食べなかったんですよ、今までの人生。

――それはなぜ?

そんなに必要としてなかった。別に好きでもなかったし。でも最近食べるようになって。電話帳にすごくいっぱい飲食店の情報が入ってるんですけど、焼き肉店やステーキ店は今まで入っていなくて、それを最近、いろんな友だちに連れて行ってもらったり、自分で調べたりして、どんどん開拓しています。昨日もステーキ、おとといは焼き肉。ハマっていることは「肉探し」です。



【プロフィール】
山田孝之(やまだ・たかゆき)/1983年10月20日生まれ。鹿児島県出身。A型。1999年に俳優デビュー。2005年に映画『電車男』で主演を務める。主な出演作は、『クローズ ZERO』(07)、『十三人の刺客』(10)、『凶悪』(13)、『土竜の唄 潜入捜査官 REIJI』(14)、『新宿スワン』『バクマン。』(15)、『信長協奏曲』『テラフォーマーズ』(16)など。待機作に『何者』(10月15日公開)、ドラマ『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(テレビ東京系)などがある。
【Instagram】@takayukiyamadaphoto


■映画『闇金ウシジマくんPart3』
9月22日(木・祝)全国ロードショー!

■映画『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』
10月22日(土)全国ロードショー!
http://ymkn-ushijima-movie.com/

(C)2016真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん3」製作委員会

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■応募方法:ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT


■受付期間:2016年9月28日(水)12:00〜10月4日(火)12:00

■当選者確定フロー
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・当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、発送先のご連絡 (個人情報の安全な受け渡し)のため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
・当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから10月5日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただきます。10月8日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。

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