『UFOに関する英政府の調査記録』−−。
 これは映画ではなく、現実に英国公文書館によって先ごろ公開された資料だ。
 1995年、英・国防省内に『UFOデスク』なる担当者がいたことを明らかにした上で、「UFOが存在する確かな証拠は見つかっていないが、その目的は、(1)軍事的偵察、(2)科学的調査、(3)観光」などと分析。当時のブレア首相にも報告されたという。

 UFO研究は、国連安保理の常任理事国である米英中仏ロでは、国防上の重要機密課題として緻密な研究が行われているといわれている。ところが日本人の場合、UFOと聞いて真っ先に頭に思い浮かべるのは『宇宙人』。超常現象や超能力などのオカルト事象と一緒くたにされ、科学的観点から否定する学者として知られている大槻義彦氏(早稲田大学名誉教授)から、『UFO=宇宙人論者』は、テレビ番組などで木っ端みじんに打ち砕かれている。
 しかし、その大槻氏でさえ、実は「多くの空自パイロットがUFOを目撃しているのは承知している」とテレビの放映外では述べているのだ。
 実際、日本の空を飛行する多くのパイロットが、民間、自衛隊を問わずUFOと接近遭遇した事例が多くある。それら目撃情報が封殺されている理由が、これまたミステリーなのである。

 元航空自衛隊空将の佐藤守氏(72)は、2010年7月に『実録・自衛隊パイロットたちが接近遭遇したUFO』(講談社刊)を上梓した。同書は37人の空自自衛官が、全員ではないものの顔写真、実名で登場し話題を呼んだ。出版後は、別のパイロットや一般研究者からも多くの情報が寄せられたという。佐藤元空将は、日本政府がUFOの目撃情報を黙殺するのは、重大な国防上の瑕疵となると警告を発している。
 日本周辺空域には、防空識別圏が設定されており、空自などは識別不明機の領空侵犯に対し、対領空侵犯措置をとる。空自戦闘機がスクランブル発進し、海自のイージス艦を主力とする護衛艦には、対空戦闘用意が下令される。これが『未確認飛行物体=アンノウンエアクラフト』に対する日本国の正式な対応だ。

 ところが、UFO情報は無視されていると佐藤氏は言う。
 「米ロをはじめ、諸外国の国防関係者は、真剣にUFO研究に取り組んでいます。特に空自は天空を防護対象にしているので、警戒管制レーダーに映る物体は見逃してはなりません。防空体制下では、24時間緊張状態にあります。弊書に登場する自衛官はみなエリートで、ウソをつく人間ではないしその必要もない。見たことは全部こと細かく報告する義務を負っています。ところが、スクランブルに関係する情報はすべて書式化されているものの、UFOに関する項目だけはありません。空自の一部の“見える”パイロットたちの体験談も、公式報告書には取り上げられていない。UFO情報に関する法整備も必要ですが、定型用紙にレポートとして記入、報告することを義務付け、それを情報本部で分析するといったシステムづくりが大事なことなのです」

 UFOに対する日本政府のスタンスはこうだ。
 日本国政府は、'07年12月に閣議決定された答弁書で、地球外から飛来してきたと思われる飛行物体について、(1)「存在を確認していない」、(2)「研究も飛来した場合の対策も行っていない」と記載していることを明らかにした。以来この答弁書に一切の変更はない。