2010年もたくさんのサッカー本が発売されました。その中から「これはすごかった!」という本をサッカーらしくベストイレブン風に選んでみました。

【GK】

まず、GK部門は元日本代表GK・松永成立氏初の著作ゴールキーパー専門講座(東邦出版)を選出。現役選手、GKコーチとして松永氏が培ってきたノウハウをまとめたもの。極端に情報の少ないGKというポジションについて深く掘り下げた内容が現役選手、ファンから高い評価を受けました。

【DF】

DF部門には偶然にも選手モノが並びました。2010年は南アフリカワールドカップイヤーで、必然的に選手の自伝モノが増えたのですがその中で「【内田篤人】夢をかなえる能力」(ぱる出版)
は趣の異なる1冊。本人のコメントはありませんが、彼を育てた恩師やともにプレーした同級生への周辺取材や雑誌インタビューのコメントをまとめ、「内田篤人」の成長の理由を浮かび上がらせました。

ワールドカップ日本代表で?鉄壁?のセンターバックコンビを組んだ中澤佑ニ選手と田中マルクス闘莉王選手は、偶然にもワールドカップ後に著書を出版。中澤選手の「中澤佑二 不屈」(文藝春秋)は日本中に感動を与えたチームの内情について詳しく語られた章が必読です。

闘莉王の「大和魂」(幻冬舎)にはワールドカップ後に燃え尽きて引退も考えた彼の心の葛藤が描かれています。

DF部門もう1冊はイタリア人監督が日本代表の試合を分析して戦術的問題点を細かく指摘した「世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜」 (コスミック出版)。アマゾンでは32レビューがつくなど、世の中の?戦術好き?たちを大いに刺激する内容となりました。

【MF】

激戦区となったMF部門のオススメは元日本代表MFによる現役選手との対談連載をまとめた「名波浩対談集~日本サッカーが勝つためにすべきこと」(集英社)。現役選手の飾らない素顔や核心を突く言葉が引き出されているのは、インタビュアーが名波氏だからこそでしょう。

サポーター2人組ユニット「リベロ」がワールドカップ開幕前に出場32カ国を周った経験を綴った「世界一蹴の旅 サッカーワールドカップ出場32カ国周遊記」(双葉社)は、ユニークかつ行動力に溢れており「旅に行ってみたい」という気持ちになります。サッカー本よりも、旅本としての要素が濃い1冊といえるかもしれません。

12月の発売直後からフットサル本としては異例の売れ行きを示しているのが、フットサル界のクリスチアーノ・ロナウドと呼ばれるリカルジーニョ選手のテクニックをまとめた「世界No.1選手が教えるリカルジーニョフットサル神技バイブル」(白夜書房)

サッカー界の論客たちがオピニオンを発表した「フットボールサミット 第1回」 (カンゼン)も真剣にサッカーを語りたいファンたちからの支持を集めました。第2回、第3回とどんな議論がテーマになっていくのか目が離せません。

【FW】

日本サッカーの弱点の一つであるFWですが、サッカー本では強力な2冊が出ています。

1冊目がワールドカップ開幕前に発売されたのが「イタリアに学ぶ ストライカー練習メニュー100 」(池田書店)。イタリアで学んだ日本人指導者が監修した練習メニュー本ですが、練習メニューだけにとどまらず、試合中の駆け引きや、細かいゴール前のテクニックなども網羅された大作です。

2冊目は名古屋グランパスでゴールを量産した森山泰行氏監修の「ストライカー特別講座」(東邦出版)。森山流ストライカーメソッドとワールドカップのゴール分析の2本立てで、どちらも?リトルゴール?と呼ばれる泥臭い得点が多かった森山氏らしい視点が光ります。

【監督】

監督部門は今、日本で最も熱いサッカーマンガ「ジャイアントキリング」を題材にした「ジャイアントキリングを起こす19の方法」(東邦出版)。監督を主人公にしながら、GM、スカウト、クラブ経営などクラブの様々な側面が描かれているマンガをリアルサッカーと重ね合わせながら語っている意欲作。

【審判】

審判部門は?嫌われた審判?と呼ばれた家本政明氏による告白本「主審告白」(東邦出版)。普段はなかなか表に出てこない審判の本音や実態、ピッチの上での選手のやり取りなどが克明に描かれており、安易な審判批判へのアンチテーゼとなっています。

そして、ワールドカップ開幕前に発売され大ヒットを記録した「サッカーの見方は1日で変えられる」(東洋経済新報社)は、サポーター部門としてエントリー。試合中のチェックポイントを○×形式で表し、イラストをふんだんに用いながら、サッカーの見方をわかりやすく示しています。その後の「サッカーの見方本ブーム」の火付け役となりました。

2011年もどんどん面白いサッカー本が生まれてくるはずです。自分のお気に入りの1冊を探して見てください。

【北健一郎PROFILE】

サッカー・フットサルの書籍制作をメインに活動を行っている。ニックネームは「キタケン」。

※この原稿は、東邦出版・中林さん制作の書店員さん向けフリーペーパーからの転載です。



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