■興味深い久御山の快進撃
今年の高校選手権は、準決勝第1試合で流通経済柏が負けた時点で、メディアがプロ内定と騒ぐ注目選手がいなくなった(決勝戦終了後に滝川二の浜口孝太が清水に内定)。つまり特定の個に頼ったり、クローズアップされる個を擁したりするチームは、最後まで勝ち残れなかったわけだ。裏返せば、平均的な資質の選手を集めた高校が全国で勝ち上がるには、何が近道かを示したという点で、とりわけ久御山の快進撃は興味深かった。

滝川二の松本悟監督の久御山評は「GKがすぐ近くの選手にボールを出し、そこから組み立ててくる“ややこしい”サッカーをするチーム」だった。だが今までノックアウト方式が主流の高体連では、こうしたスタイルに挑むチームが少なかった。ところが今回は堂々とショートパスを繋ぎながら攻撃を構築する久御山の異質が、どんな相手にも厄介になった。優勝候補?1と言われた流通経済柏も、落ち着いて飄々とボールを回し続ける久御山から、簡単にボールを奪えずに苦しめられた。

■エンゲルスが“楽しい”サッカーを教えた滝川二高
一方優勝した滝川二は、かつて元浦和監督のゲルト・エンゲルスが指導したチームで、当時から基本的なコンセプトは変わっていないという。エンゲルスは同校コーチに着任すると、まず練習のムードを変えようとした。

「ピクニックに行くように、好きな映画を見るようにサッカーをしよう」

結局決勝戦に進んだのは、好きなサッカーを満喫し、押し進めた両校だった。要するに平均レベルの選手を集めたチームが勝ち抜く最良の術は、毎年中継局の日本テレビが喧伝するように、指導者が選手に罵声を浴びせながら月まで走らせようとしたり、地獄の走り込みをさせたりすることではなく、いかにサッカーがうまくなるかを追求することだということを示したという点で、非常に意義深かった。

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■著者プロフィール
加部究

1958年生まれ。東京都出身。立教大学を卒業後、スポーツニッポンへ入社。ワールドカップを取材するため会社を3年で退職。以降、1986年メキシコワールドカップから6大会連続で取材を行っている。近著に『ワールドカップ全史』(コスミック出版)がある。


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