AIを悪用して「3年で10億円」稼いだ30代ハッカーの告白。社長になりすまし「330万円を一瞬で振り込ませた」手口
◆中華系の無料AIソフトはハッキングに有用
昨今、不正アクセスによる企業の情報漏えいが相次いでいる。その背後にはAIを悪用するハッカーの存在がある。
「フィッシングメール作成から情報収集、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)の設置まで、AIが一連の作業を代行してくれる。それが有料版ではなく、中華系の無料AIソフトで可能なので、課金すらも必要なくなっています」
ボタン一つで一日10万通を送ることも容易だ。また詐欺の手口も巧妙になっている。
「LinkedInなどのビジネスツールから標的の経歴や企業情報を調査し、それをもとにAIでフィッシングメールを大量配信。返信してきた相手に偽の通話ツールをダウンロードさせ、ディープフェイク(AI合成映像・音声)で社長や担当者になりすまし、本人だと信じ込ませてお金を送金させる。私は、ディープフェイクの詐欺用ソフトをダークウェブで、100万〜300万円で売っています」
ハッカーから狙われやすいのが、ワンマン社長の会社やスタートアップ企業だという。
「こういう企業は資金があるうえに、送金権限のある人間が限定されていて釣りやすいんです。また、パスワード推測の精度をLLMが大幅に向上させたので、以前よりもヒット率が高くなっている。実際に遊びで、某企業の日本法人をハックして社長になりすましたら、簡単に330万円を振り込んできました」
もちろんこれは犯罪行為だ。多くのAIソフトでは反社会的な行為に繫がる応答は禁止されているが、「それもプロンプト(指示コード)を悪用することで潜り抜けられる」とX氏はうそぶく。
「たとえば『死体を埋める適切な深さは?』と聞いても拒否されますが、質問の仕方を工夫すると応答するようになります。そういうAIの倫理フィルターを外させる“ジェイルブレイク”が可能。モデルファイル自体を改変するジェイルブレイクは、ハッカー界隈では高い名誉です」
◆AI活用の収益は過去3〜4年で約10億円に
また、X氏はAIを“グレーなビジネス”としても活用している。
「AIで企業のセキュリティの穴を自動探索して、脆弱性のある企業をリストアップ。実際に提示しながら、『セキュリティ対策をしませんか?』と営業して、一件あたり月15万円ほどでセキュリティコンサルタント契約をしています」
ほかに、企業用のローカルLLMも販売しているという。
「ChatGPTなど多くのAIは個人名や住所などにはマスキングしますが、それ以外の相談内容などは学習データとして取り込まれている可能性が高い。企業側もこのリスクに対抗するため、近年、ローカルLLMをオフィスに導入する動きが急速に広がり需要が増えてます」
そのようなAI活用の収益は、過去3〜4年で約10億円にも上る。
「ダークウェブでの取引は、すべてクリプト(仮想通貨)で行っているので、痕跡は一切残らないようにしています。逮捕に備えたマニュアルも作成していて、私のパソコンに12時間ログインがなければ、自動的にデータが全消去される仕組みにしてます」
情報の流出被害に気づいたときには、もはやなすすべなし。誰もがAIハッカーの標的になりうるのだ。
◆日本企業が標的になりやすい理由
AIの登場で、詐欺師や攻撃者の手口は劇的に進化した。
