サノフィは6月29日、女性の血友病に関するセミナーを開催した。関係者は「月経過多は出血性疾患に気付くきっかけになります。月経が7日以上続いていないか?ナプキンを2時間より頻繁に交換していないか?1ユーロ(100円玉大)より大きな血の塊ができていないか?7-2-1のキーワードでセルフチェックしてください」と呼びかけている。

サノフィが女性の血友病に関するセミナーを開催した

○血友病とは?

セミナーの冒頭、東京医科大学の天野景裕教授は血友病について「血液凝固因子の第VIII因子(血友病A)あるいは第IX因子(血友病B)が先天的に不足しているために出血しやすくなる疾患」であり、日本には血友病Aの患者が5,956人(うち女性は136人)、血友病Bの患者が1,345人(うち女性は49人)いると説明。そのうえで「自身が血友病保因者だと気付いていない人が、この患者数の5倍はいると考えられます」と警鐘を鳴らす。

(左から)東京医科大学 臨床検査医学分野の天野景裕教授、関西医科大学附属病院 血液腫瘍内科 診療講師の長尾梓氏、北海道ヘモフィリア友の会 理事 / 血友病保因者の上村理絵氏

もし血友病であることに早く気が付くことができれば、生活はもっと楽になり、重大なリスクからも回避できる。でも実際には「私は血が止まりにくい体質だから」と自己診断で済ませてしまう人が多い。ここで血友病保因者の上村理絵氏は、血友病等の保因者の女性14人を対象にしたアンケート調査の結果を公表。それによれば9人が「兄弟姉妹・子どもが血友病と診断されて初めて自身が保因者だったことに気が付いた」と回答しているそうだ。「自分の症状は長年認識していても、保因者であることを疑う機会がないまま大人になっているのが現状です」と上村氏。

受診につながらず保因者だと「わかる」までの年月は? 判明年齢の中央値は"約29歳"だった

当事者の声も紹介した――。主治医から「月経時にはおむつをする人もいる」と聞いて自分も同じ症状だと思い、40代後半までそれが普通だと思っていた(50代女性)、貧血だと気付かず、毎日ランニングしているのに全然持久力がつかないと落ち込んだ時期があった(40代女性)、産後の大出血で初めて「もしかしたら」と考えた(50代女性)、生理時の出血が多いのは子宮筋腫があるからと思っていた、保因者であることは誰も教えてくれなかった(50代女性)。保因者だと知らずに子どもを出産した人は、14人中6人。上村氏も保因者の自覚がないままに2人の子どもを産んでおり、「あとから考えると恐怖で身体が震えてしまいます」と話す。

症状はあった。でも「体質だから」と思っていた

なぜ、血友病の早期診断は広がらないのだろうか? そんな天野教授の問いかけに、上村氏は「母や姉が生理で苦しむ姿を見てきたので、これが普通なのかな、と思ってしまう」といった背景のほかに「世間一般の母親は自分のケアは後回しにして子どもの治療を最優先させる傾向があります。そんなことも要因のひとつでしょうか」とし、さらには「重い病気を診断されてしまうんじゃないか、という怖さから診断から足が遠のいていることもあるかも知れません」と補足する。

関西医科大学附属病院の長尾梓氏は、女性の出血性疾患に関する啓発活動を続けている。たとえ医者でも専門外の症状には気付けないことがある、という観点から、これまで産婦人科、小児科、耳鼻科、歯科など4,000以上の施設に、遺伝性の出血性疾患について早期発見を促す資料を送付するなどしてきたという。「出血性疾患を抱えたままの妊娠・出産は重大なリスクにつながります。これが原因で、子宮を摘出する方もいます」と長尾氏。月経が多いか分からない人に向けては「是非、7-2-1をキーワードにセルフチェックしてみてください」と紹介する。

月経過多は、出血性疾患に気付くきっかけになる

○生理のつらさを疑似体験!?

セミナーの後半にはワークショップが開催され、サノフィの社員が参加した。まずは150mlの人工経血と生理用ナプキンを用いて、月経過多を視覚的に学ぶ。あるテーブルでは、男性社員が恐る恐る50mlを垂らしたところで、人工経血がナプキンから溢れ出してしまった。担当スタッフは「月経過多では1〜2時間ごとにナプキンを交換する必要があります」と説明。男性陣からは「50mlでもかなり多いですもんね」「全然、ナプキンって吸ってくれないんだ」「不快感がすごそう……。これが1週間も続いたらQOL(Quality of Life)にも相当大きな影響が出る」といった声があがる。

人工経血と生理用ナプキンを用いて、月経過多を学ぶ

次に、生理痛を疑似体験できる機器が用意された。2枚ある電極パッドを下腹部に貼り、電流を流す仕組みだそう。「強さには弱、中、強があります。人により痛みの感じ方は異なりますので、みなさん無理のない範囲でご参加ください」と担当スタッフ。

生理痛を疑似体験できる機器が用意された

体験した男性陣は「ウッッソでしょ!? あぁ……苦しい」「内側から押され続けている感じ」「これじゃミーティングなんて集中できない。会話もしたくない」「ズーンって不快感がずっと続いている」「テーブルに手を置いたまんま動けない」「痛い、重い、耐えられないかも……」「これに経血(ナプキン)の不快感が加わるんでしょ……?」と阿鼻叫喚の様子。一方、体験した女性社員からは「あぁ、こんな感じね。分かる分かる」「痛くはない」といった好対照な反応も見られ、周りの男性社員たちからは「経験者は違う」「女性のほうが強い」「女性には頭が上がらない……」などの声が漏れていた。

痛みから、思わず腰がひけてしまう男性社員の姿も

近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら