アバターでの訓練の意義を語る山本さん(札幌市中央区で)

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 性被害に遭った子どもの事情聴取に臨む警察官の能力を向上させるため、AI(人工知能)で作った子どものアバター(分身)と対話して訓練する「アバタートレーニング」が、全国で活用されている。

 道警科学捜査研究所の研究員が開発に携わったもので、容疑者の取り調べの訓練にも活用できるよう、研究が進められている。(永田新)

 「何があったか教えてくれるかな」

 タブレット端末に映し出されたアバターの「さくら」に、女性警察官が問いかけた。「地域の子供会で、6歳の女児が12歳の男児から性被害に遭った」という想定で、さくらに被害状況を聞き取ろうとするのだが、何度問いかけても、さくらは「知らない」となかなか答えたがらない。

 道警はこの訓練手法を2020年に導入。性被害に遭った子どもを聴取する可能性のある警察官が研修で活用し、頭を悩ませながら、事件の真相に近づくための問いかけを重ねて「質問力」を鍛える。活用した警察官からは「実際の子どもを相手に練習することは困難で、アバターと訓練できるのはありがたい」といった声が上がっているという。

様々な事情想定

 アバタートレーニングでは、4歳と6歳の子どものアバター計16体を相手に訓練ができる。家庭内や習い事での被害など、様々な事情を持つ子どもを想定した聞き取りの訓練が可能だ。

 子どもは大人の言葉に誘導され、事実と異なることを話したり、近親者からの性被害を話したがらなかったりする傾向がある。アバターにはそうした特徴も反映されており、警察官の質問をAIが分析し、子どもが答えやすいと評価されれば、事件の核心に近づく回答が出る可能性が高まる仕組みになっている。

大学と共同開発

 この訓練の開発に携わったのは、道警科捜研の研究員、山本渉太さん(40)だ。普段は、容疑者らの心拍数などの変化を測定し、犯罪に関する記憶の有無を調べる「ポリグラフ検査」を担当している。

 開発のきっかけは、2016年に横浜市内で開かれた心理学の国際会議に参加したことだった。フィンランドの研究チームがアバタートレーニングの研究を進めていることを知り、「日本でも必ず役に立つ」と、明治学院大の萩野谷俊平准教授(犯罪心理学)と共同で開発を進めた。

 子どもへの事情聴取の訓練はそれまで、警察官役と子ども役に分かれて行うロールプレイング形式が主流で、人手や準備の時間を要することが課題だった。アバタートレーニングでは時間や場所を選ばず、1人でも訓練ができる。今年4月20日時点で、全国の警察官計2344人が活用して訓練を受けたという。

 同大は事件の容疑者の事情聴取の訓練にも活用できるよう研究を続けており、山本さんも参加している。山本さんは「聴取技術の向上に貢献し、北海道の安心安全につながるよう、研究に携わっていきたい」と話している。