問題の男性主事は在宅勤務中にもベッドやソファーに横になっていたという(Ushico / PIXTA)※写真はイメージ

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勤務時間中に公用パソコンを使って「作家活動」を繰り返したほか、同僚や上司に対するパワーハラスメント行為、在宅勤務中の職務専念義務違反があったとして、長野県は6月15日、現地機関に勤務する29歳の男性主事を戒告処分とした。

報道によると、男性主事は勤務時間中に公用パソコンを用いて計20日間・211回にわたり作家活動を行っていた。また、同僚からの業務依頼に対して「やめてもらえませんか」と大声で反発したほか、上司に対しても強い口調で詰め寄るなどのパワーハラスメント行為も確認されたという。

同僚からの業務依頼に対して「やめてもらえませんか」などと大声で怒鳴ったほか、上司に対して大声で詰め寄るなどのパワーハラスメント行為もあったとされる。

また、男性主事は体調不良を理由に55日間在宅勤務を行っていた。しかし実際にはベッドやソファーに横になって書類を何となく眺めるだけの時間や、パソコンの前に座っているだけで業務を行わない時間があったとされる。

在宅勤務の成果報告についても、いわゆる「コピペ」で済ました、ずさんなものであったという。

長野県は「県民の皆様の信頼を損なう事態を招いたことは誠に遺憾で、深くお詫び申し上げる」としている。

男性主事の行為には、法的にどのような問題があるのか。また、民間企業で同様の行為があった場合、懲戒処分や解雇の対象となる可能性はあるのだろうか。弁護士に聞いた。

職務専念義務に正面から反する

公務員には、勤務時間中は職務にのみ従事する「職務専念義務」が法律上明確に定められている(国家公務員法101条、地方公務員法35条)。

労働法に詳しい荒川香遥弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)は「在宅勤務中に十分な業務を行わず、公用パソコンで私的な小説原稿を確認するといった行為は、この義務に正面から違反するものです」と語る。

そもそも公用パソコンは行政目的のために貸与されたものであり、私的利用は公有財産の目的外使用として職場規律にも反する。

さらに、公務員には「全体の奉仕者」として信用失墜行為の禁止義務(国家公務員法99条、地方公務員法33条)が課されている。勤務中に「作家活動をしていた」といった行為が、報道などで明らかになること自体、行政への信頼を損なう点からも問題視されることになる。

なお冒頭で述べたように、本件では、男性主事が同僚や上司に対して行った威圧的な言動がパワーハラスメントと認定されている。

一般に「パワハラ」といえば上司から部下への行為が想定されがちだが、パワーハラスメントの要件である「優越的な関係」とは役職の上下関係に限られないものだ。

そのため、たとえ部下であっても、上司を大声で怒鳴る、威圧する、業務を妨害するなどの行為によって相手に心理的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりした場合には「逆パワハラ」として違法性が問題となり得る。

「本件でも、正当な業務指示に対して威圧的な拒絶行為が繰り返されていたとすれば、上司の職務遂行を妨げる実質的な優位性の行使があったと評価される余地があります」(荒川弁護士)

戒告処分は「軽い」のか?

公務員の問題行為に対する懲戒処分については、戒告から減給、停職、免職まで段階があり、行為の期間・頻度・悪質性・反省の有無などをふまえて判断される。そして本件で男性主事に下されたのは、最も軽い“戒告”処分だ。

SNSでは処分が軽すぎると疑問視する声が相次いでいる。

「明らかに公務員として不適格だと思うのだが、これでも懲戒解雇にならず戒告処分だけ」

「これで注意で済むんだからマジで頭おかしいよな」

「モンスターすぎるわりに処分が軽すぎる」

「これでもクビにならないんだからヌルゲーすぎるな」

しかし、本当に戒告処分は「軽い」のだろうか。

そもそも、懲戒処分においては「処分の重さは行為の悪質性・期間・職務上の実害・本人の反省度合いなどを総合的に考慮して決定すべきであり、過度に重い処分は許されない」とする、「比例原則」という考え方が適用される。くわえて、公務員の懲戒処分については、各自治体が処分量定の基準を設けている。

荒川弁護士は、本件について、男性主事の非違行為が問題になったのは今回が初めてであること、職務上の具体的・重大な損害が生じていないこと、反省の意が示されていることなどが、処分を軽くする方向に働いたことが考えられるとする。

「行為自体は問題であるものの、金銭的な不正や個人情報の漏洩といった重大な結果が生じたわけではなく、また本人が“深く反省”していることも処分に反映されたものと考えられます。

こうした事情をふまえると、戒告処分は一概に『軽すぎる』とは言い切れず、比例原則や先例に照らして一定の合理性がある判断であったと見ることができます」

ただし、パワーハラスメント行為と職務怠慢・目的外使用という複数の非違行為が重なっていることからすれば、今後、より厳しい処分が行われ得ると指摘する。

「複数の問題行為が認定されているにもかかわらず戒告にとどまった点については、今後の再発や行為の継続があれば、次回は大幅に重い処分が科される可能性が高いでしょう。今回の処分は、いわば『最後の警告』としての意味合いも持つものといえます」(荒川弁護士)

民間企業でも懲戒や解雇の対象に

では、もし民間企業において同様の行為があった場合、どのような処分が行われる可能性があるのだろうか。

荒川弁護士によると、民間企業の従業員も労働契約に基づき、勤務時間中は使用者の指揮命令のもと誠実に職務に従事する義務を負う。多くの企業では就業規則により「勤務時間中の私的行為(作家活動など)の禁止」や「会社財産(業務用パソコンなど)の目的外使用の禁止」などが定められており、これに違反すれば懲戒処分の対象となり得る。

特に在宅勤務については、勤務実態の把握が難しいことから問題が起こりやすく、実際に業務に従事していなかった場合には賃金の返還請求や懲戒解雇の事由となるケースもあるという。

ただし、公務員は法律によって義務や懲戒処分の根拠が明文化されているのに対し、民間企業では就業規則の整備状況や内容によって対応の幅が生じるなど、両者を取り巻く法的な枠組みには違いがある。

公務員は『全体の奉仕者』として高い公共性・倫理性が求められるため、同種の行為であっても社会的批判を受けやすく、懲戒処分に加えて国民・住民からの信頼失墜という無形の損失も大きくなりがちです。民間企業でも企業イメージへの影響はありますが、公務員ほど強い公的責任は問われない点で異なります」(荒川弁護士)

テレワークの普及によって勤務実態の把握が難しくなるなか、公務・民間を問わず、勤務時間中の職務専念や職場内の適切なコミュニケーションの重要性があらためて問われている。

勤務中の私的な創作活動や不適切な在宅勤務の実態に加え、「逆パワハラ」も問題となった本件は、働き方が多様化する時代の職場管理の難しさを示した事例といえそうだ。