「伊勢神宮の伝統が潰えてしまうのか」…80年続く大晦日の行事「大かがり火」が大炎上しているワケ
神宮の名前を使って多額のカネを集めた!?
神社の総本山である伊勢神宮。年間1500回もの祭事が行われるが、そのなかでも最大規模を誇る行事に「大かがり火」がある。大晦日に御神木を使った大小15個の「かがり火」を灯し、新しい年を迎えるというものだ。
ところが、そんな伝統行事の運営団体で、1000万円ものカネを巡る泥沼の戦いが繰り広げられているという。団体の名前は公益社団法人の『日本青伸会』。’45年の第1回「大かがり火」から、現場で行事の運営を担っている。
日本青伸会の前代表理事で、現在も理事を務める井上啓俊氏が内情を明かす。
「『大かがり火』は伊勢神宮最大の行事の一つ。大晦日には当会から120人を派遣して火守りなどの実務にあたってきました。参加者は当会会員から選びます。詳しくはお話しできませんが、神職しか入れない神宮最深部の『深淵』での作業もあります。
非常に貴重な体験ができるため参加希望者が多く、例年、非会員様も参加できる一般枠を十数人だけ用意しています。それを契機に会員に定着していただければ、という気持ちからです。参加料は会員が1万5000円、非会員は3万円となっております」
異変が起きたのは伊勢市議会議員の大野寛文氏が入会してからだという。大野市議は’21年に青伸会に入会。その2年後、前代未聞の騒動が起きた。
「きっかけは、非会員の参加者からの問い合わせでした。内容は『’23年の大晦日に参加した際、要求されるまま参加費として55万円もの大金を大野氏に払ってしまった』というもの。
通常の15倍以上もの額であり、一瞬、耳を疑いました。大野氏は、『特別枠』と称して勝手に参加者を募り、男性一人55万円、女性33万円という高額な参加料を設定していたのです。しかも振り込み先は大野氏の個人口座。呆れてものが言えませんでした」
青伸会の奥山稔監事が続ける。
「連絡を受けてすぐに大野氏本人に聞き取りをしましたが、『(当時の)代表理事の内諾を得ている』の一点張り。その代表理事は80代と高齢で、どこまで状況を理解できていたかわからず、発言の信憑性も疑わしい状態でした。そもそもこれだけ多額のカネが動く事案を理事会も通さず決めていい訳がない。
何より問題なのは、個人口座に振り込ませていたこと。なぜ青伸会の口座じゃなかったのか。その代表理事も高齢を理由に退任を申し出たため、’24年6月からは井上さんが代表理事に就任。所管官庁の内閣府に事態を告発し、伊勢神宮広報にも内情を伝えました」
記念の年にも関わらず通常より設置個数を減らした質素なものに
井上理事と奥山監事が今年4月に内閣府に提出した資料によれば、大野市議は参加料として男性22名から1210万円、女性16名から528万円を徴収。しかし、青伸会の口座には483万円しか振り込まれておらず、差額の1255万円が不明金となっているという。奥山監事が嘆く。
「大野氏は執拗な追及を続ける我々が目障りだったのでしょう。’25年1月、井上さん不在のまま理事会が開かれ、大野氏が代表理事に就任。井上さんは代表を解任されました」
トラブルの報告を受け、昨年5月、伊勢神宮の広報は「今年末の『大かがり火』に青伸会は参加させない」と通達。同12月には内閣府から’24年度の財産目録のほか、ガバナンス上の課題の明確化を踏まえた再発防止策の提出を求める通知書が届いた。
しかし、代表理事の大野市議は要求された資料を提出せず、今年2月に提出を求める命令書が内閣府から出されている。このまま対応しなければ、公益社団法人の認定取り消しになるという。
「’25年は『大かがり火』が始まって80回目の記念の年。その節目に神宮から『出禁処分』を下され、我々の参加は叶いませんでした。当日は伊勢神宮営林部の職員が代わりに行事を行いましたが、通常より設置個数を減らした質素なものだったと聞いています」(井上理事)
代表理事として、この惨状をどう考えているのか。以下、大野市議との一問一答である。
◎振り込み先に個人口座を指定した理由
「一般参加と分けた特別枠という参加金額については、私自身が単独で決めたものではなく、当時の理事長と理事1名、監事1名と私の4名で決めて実施を募集したものであり(中略)、参加費の徴収及び管理については、当時の運営体制及び実務上の事情に基づき行われたものであり、私的流用や横領を目的として行われた事実は一切ありません(中略)当時の理事長からの指示により(中略)個人口座への入金を推奨され、その通りにしております」
◎「使途不明金」の行方について
「実際の参加者は、男性13名×55万円=715万円 女性8名×33万円=264万円 合計979万円です。また私が青伸会の口座に入金した金額は734万8000円となります(中略)差額は私の個人の営業の報酬として25%を当時の経営陣と取り決め(中略)正当な報酬だと認識しております」
◎’25年の「大かがり火」で、伊勢神宮から参加を拒否されたことについての見解
「私の代からの問題ではなく、(いろいろ)積み重ねたもの」
◎内閣府の勧告や命令に対応しない理由
「一部の役員にも邪魔をされ(中略)書類提出に必要な役員全員の印鑑提出すら守れない状態です」
伊勢神宮に青伸会への処分の経緯を問うたところ、「回答は控えさせていただきます」と返答があった。
奥山監事が憤る。
「我々が内閣府に報告した参加者数と金額は、大野氏本人が青伸会に報告したものです。なぜ今回、全く違う数字を出してきたのか意味がわかりません。本当に正当なカネなら、こんなに答弁が二転三転するものなのか。こんなことで伊勢神宮の伝統が潰えてしまうのかと思うと、本当に悔しいです」
“伝統の炎”が風前の灯火となっている。
『FRIDAY』2026年6月26・7月3日合併号より
