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北海道旭川市で当時17歳だった女子高校生を橋から転落させて死亡させたとして、殺人などの罪に問われた内田梨瑚被告人(23)に懲役27年の実刑判決が言い渡された。

控訴の可能性もあり、刑はまだ確定していないが、SNS上では、内田被告人の服役を前提に「女子刑務所が快適すぎる」といった投稿が拡散されている。

しかし、実際に服役を経験した女性たちは、そうした見方に違和感を示す。堀の中の現実について聞いた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●SNSで拡散「女子刑務所はホテルやん」

内田被告人に対して、検察官は6月8日、懲役27年を求刑した。

すると、この日以降、刑が確定した女性が収容される女子刑務所について、Xでは、過去のテレビ番組の一場面を切り出した画像とともに、「快適すぎる」「ホテルやん」などとする投稿が相次いだ。中には、数千万回以上表示されたものものある。

こうした投稿に対しては、「私の生活よりも快適なんだけど…」「刑務所が快適でどうすんだよ」といった反応も多く寄せられている。

こうした見方について、経験者や当事者たちは何を思うのだろうか。

●元受刑者「快適だと思ったこと一度もない」

約10年前に女子刑務所を出所した女性は、弁護士ドットコムニュースの取材にこう話す。

「少なくとも、私は快適だと思ったことは一度もありません。自由を制限されること自体が、とても大きな精神的負担になります。そのことが社会の人たちにはなかなか理解されないのだと感じます」

女性によると、女子刑務所と一口に言っても、食事や設備の環境は施設によって大きく異なるという。

「食事は施設によってまったく違います。私が入った刑事施設のうち、食べ物がおいしいと感じたのは1カ所だけで、ほかは正直おいしくありませんでした。

北海道の施設のほうが室内が暖かく、福島などの中途半端な場所にある施設は、冬は寒いし、夏は暑い。新しい施設だと、廊下に冷暖房があるところもありますが、居室にはありません。

施設によって、食事も設備も教育も何もかも違うことを知ってほしいと思います」

●女性特有の悩みも…トイレ自由にいけず「地獄だった」

服役中は女性ならではの問題にも直面したという。

「生理用品は、官(施設)から支給されるものがありましたが、刑務所の外では見たことがないもので、ナプキン裏のテープが細長い3本だけで必ず漏れます。

大きなポリバケツにナプキンがすべて回収され、それを内掃工場(刑務所内の掃除を担当する作業場)の受刑者がグローブとマスクをして回収するので、絵面はなかなかグロかったです。衛生面は決して良くありません。

痛み止めは週1回と決まっていて、生理痛が多い私にとっては非常にキツかったです。トイレにも自由に行けず、お腹が緩い自分には本当に地獄でした」

●男子刑務所との大きな違い

受刑者に関する男女の大きな違いは、その人数だ。

犯罪白書によると、2024年に新たに受刑者になった人は約1万5000人。そのうち女性は約1500人にとどまる。

刑務所は全国各地にあるが、その大半は男性向けで、女子だけを収容する刑務所は限られている。

そのため男性の場合は、犯罪の傾向や刑期の長さに応じて収容先が細かく分けられるが、女性の場合は初犯も累犯も、短期刑も長期刑も同じ施設に服役するケースが少なくない。

こうした事情が女子刑務所特有の人間関係の難しさにつながり、「女子刑務所はきつい」という声もある。

●ストレスで難聴に…我慢強いられる長期受刑者

10年以上の懲役刑に服した経験のある元受刑者らによると、短期受刑者は出所の見通しがある一方、無期懲役刑(現在の法律では無期拘禁刑にあたる)などの長期受刑者は、一度の規律違反によって仮釈放が遠のくという。

そのため、短期受刑者が長期受刑者に対して、わざと怒らせるようなことをしたり、いじめたりするなどの言動をとることが珍しくなく、そんな中でも長期受刑者は我慢を強いられやすいという。

冒頭の女性は、こう説明する。

「理不尽なことがあっても、喧嘩両成敗になります。自分が悪くなくてもお互いに懲罰を受けるので、こちらの言い分を聞いてもらえたとしても、懲罰になったら、実質的に仮釈放の判断に響きます」

閉ざされた環境の中でストレスを抱える受刑者は少なくないようだ。

現在、ある女子刑務所に服役中の女性受刑者は、刑務所に収容された後、難聴の症状が出たといい、手紙の中でこうつづっていた。

「部屋が1人ではないので、多少ストレスはあります。基本穏やかと言われる私もバトルしました」

●医療の貧弱さ「すぐに医師の診察受けられない」

性別を問わず、刑務所でしばしば指摘されるのが、医療体制の問題だ。

元受刑者の女性は「体調を崩しても、すぐには診てもらえなかった」と振り返る。

「『具合が悪い』と申し出ると、まず詐病を疑われます。いきなり医師の診察を受けることはできず、担当の刑務官や医務担当の幹部職員が問診や診察をします。

本当に具合が悪かったとしても、すぐに医師の診察を受けることはできません。見てわかるような病気でも、医師が常駐しているわけではないので、すぐには診てもらえないんです。

歯科治療などは本当に最悪で、虫歯はすべて抜かれます。短期刑の場合は、歯を抜かれるのがわかっているので、受刑者は痛みに耐えて、娑婆に戻ってから治療を受ける人が多いです」

筆者が手紙をやり取りしている別の女性受刑者も「効かない薬を処方され、症状が酷くなるだけだった」と漏らした。

●「税金の無駄」論が見落とすもの

拘禁刑が導入されて1年が経ち、塀の中では「懲らしめから立ち直りへの転換」が図られようとしている。

しかし、当事者たちの証言からは、女子刑務所をめぐる社会のイメージと現実との間に少なからぬ隔たりがあることがうかがえる。

最後に、元受刑者の女性が語った印象的な言葉を紹介したい。

刑務所に入るまで『人間扱いされない』と思ってきた私にとって、刑務官が我々受刑者を人として扱ってくれたことが、良い意味で大きなギャップでした」