今年話題になったNHK連続テレビ小説『ばけばけ』で郄石あかりさんが演じた松野トキのモデル“小泉セツ”と、トミー・バストウさんが演じたレフカダ・ヘブンのモデル、“小泉八雲ことラフカディオ・ハーン”夫婦について朝ドラにも描かれることのなかった数々の真実、そして八雲が亡くなってからの物語を深イイ的に解き明かします。

2人のひ孫さんでもあり、島根県立大学短期大学部で妖怪学なども教え、小泉八雲研究の第一人者でもある小泉凡さん。凡さんに2人が暮らした旧居を案内してもらうと、背の高い机が。この机は目が悪い八雲が大工さんに特注で発注し愛用していた机。八雲はこの机で顔を天板スレスレに近づけて執筆活動をしていました。
西洋人などほとんど見たことがなかった明治初期に来日したハーン。外国人には尻尾が生えているという噂があり、一目見てみたいとハーンが泊まる宿屋に障子に穴を開けてのぞいていた人もいたとも。
当時の松江でハーンの女中として働き始めたセツ。それが2人の出会いでした。言葉の壁を埋めるため、セツは八雲から聞いた英語をメモし、英単語帳を手作りしていました。さらに、ハーンが日本語を覚え、暗号のような単語で区切られた手紙で何度もやり取りを行なっていたそうです。
ハーンの執筆活動において、セツは代えの効かない存在で、日本古来から伝わる民間伝承をセツ自らがネタを探し、語り部として、八雲に聞かせていました。その結果、世界中で読み継がれる代表作『KWAIDAN』が完成したのです。
また、2人の間には4人の子供ができ、自分の財産をセツがもらえるようにと八雲は日本への帰化を決断。そしてハーンが46才の時、セツの戸籍に婿入りする形で正式に結婚も果たし、日本人『小泉八雲』が誕生しました。そして、最高傑作と言われる『KWAIDAN』の出版から5ヶ月後、八雲は自宅での心臓発作により、54歳でこの世を去りました。セツは八雲の死後、女手1つで4人の子供を育て上げ、子供や孫たちに囲まれながら64歳でこの世を去りました。

偏見のない多様性の生き方を選択した八雲とセツ。ひ孫の凡さんが大事に持っていたのは、八雲が子供の教育に使っていた「アンデルセンの童話集」。そこには、子供たちに残した八雲とセツの生き方を象徴する言葉がありました。
「To take hard step!〜難しい方へ踏み出せ〜」幼い頃から何度も苦難に晒されていても、常に前を向き一歩を踏み出し結ばれた八雲とセツ。言葉も文化も違う中で、その違いを受け入れる勇気が新しいライフスタイルを築き上げました。2人が記した偉大な一歩は、時代を超えて語り継がれる。