記事のポイント
トウスは米国での認知向上をめざし、厳選した製品と体験重視の戦略を展開している。
感情的共鳴を軸にしたブランド価値を強化し、Z世代への訴求を強めている。
デジタル基盤や店舗改装に投資を拡大し、グローバル成長とEC比率の向上を図っている。


スペインのジュエリーブランド、トウス(TOUS)は、厳選された製品ラインアップと数を絞った実店舗を展開する独自の戦略で、米国市場におけるプレゼンスの確立に取り組んでいる。

創業104年のトウスは、遊び心あふれるクマのモチーフと手頃な価格のファインジュエリーで知られ、2024会計年度3月期決算で売上高5億7000万ドル(約825億円)を記録した。前年比9.4%増で過去最高となる。EBITDAは前年比6.4%増の1億2400万ドル(約180億円)、純利益はわずかに減少し4900万ドル(約70億9170万円)となった。これと並行して、トウスの創業家は、最初の投資からほぼ10年を経て、プライベートエクイティ企業のパートナーズ・グループ(Partners Group)から株式を買い取り、事業の完全な支配権を取り戻した。

同ブランドは現在、引き続き成長が見込まれる米国市場での再始動に向けて、新たな資本とリーダーシップを投入している。投資銀行グリニッチ・キャピタル・グループ(Greenwich Capital Group)によると、米国のジュエリー市場は2023年に730億ドル(約10兆5650億円)に達し、2030年には970億ドル(約14兆390億円)まで成長すると予測される。

拡大より共鳴を重視



トウスはすでに、フロリダ、ニューヨーク、サンディエゴなどに20店舗、米領プエルトリコにも20店舗を構える。しかし、米国市場に進出して20年以上が経過しているにもかかわらず、現地でのブランド認知度は依然として、スペインやメキシコでの認知度を大きく下回る。トウスは店舗数を急拡大するのではなく、感情的なつながりと製品ラインアップの明確化に重点を置いた、緩やかな展開を優先している。3月には、ニューヨークのロックフェラーセンターに「トウス・アトリエ(TOUS Atelier)」の1号店をオープンし、ファインジュエリーコレクション「アトリエ(Atelier)」などの最新アイテムを扱っている。

「認知度が低い市場では、コレクションが多すぎると消費者が混乱する」と、CEOのカルロス・ソレール=ダッフォ氏は6月初めにショップトーク・ヨーロッパ(Shoptalk Europe)で米Glossyに語った。「スペインでは顧客層が多様でコレクションも豊富だ。しかし(米国では)アイコニックな製品ラインに重点を置いた、より厳選されたラインアップに注力している」。

トウスの価格帯は、シルバーのイヤリング50ドル(約7200円)から、アトリエコレクションの18金ジュエリー5000ドル(約72万円)まで幅がある。コアコレクションは、繊細なモチーフ、重ね付けリング、チャームなど、ソレール=ダッフォ氏が「魂のこもったジュエリー」と呼ぶものを追求している。「スオット・スタジオ(Suot Studio)」などの新ラインは、デザイン重視の若い消費者をターゲットにしており、一方のアトリエは、長く廃れないアイテムを求める層にアピールしている。

「拡大は機械的な動きだ」とソレール=ダッフォ氏は言う。「より重要なのは市場と共鳴することだ。我々は本物かつ明確なつながりによって、製品を顧客とチーム両方の人々と結びつける方法を模索している」。エモーショナルな魅力を強化するため、トウスはギフトに焦点を当てた店舗体験の強化に取り組み、サービス研修を刷新し、卒業や「初めてのジュエリー」といった個人的な節目や人間関係を軸にしたソーシャルキャンペーンを展開している。

「我々は、単に製品を見せるだけでなく、その背景にある物語を伝える方向へシフトした。なぜそれが重要なのか、誰が身につけるのか、それがどのように生活に溶け込むのかを伝える物語だ」とソレール=ダッフォ氏は話す。「この感情のレイヤーを、米国などの市場でさらに強化していく」。

感情価値と投資で次世代を狙う



2024年初めから、トウスは米国店舗の改装、物流、ITインフラのアップグレードに3400万ドル(約49億2000万円)を投資してきた。今後3年間でさらに1億3100万ドル(約189億円)を投じ、グローバルでの成長とデジタルインフラの強化を推進する計画だ。2024年には世界で50店舗をリニューアルし、先ごろ新たなeコマースプラットフォームもローンチした。オンラインでの売り上げは現在、売上高の23.5%を占め、過去1年間で10%増加している。

米国では、デパートとの提携も検討中だ。一部のデパートやマルチブランド小売業者と初期段階の協議を進めている。1月には、ジュエリーブランドのテンプル・セント・クレア(Temple St. Clair)出身のジョセフ・カバルカンテ氏を、米国担当のバイスプレジデント兼マネージングディレクターに起用した。

競合のパンドラ(Pandora)やメジュリ(Mejuri)が、マスに向けたミニマリスト的な戦略で注目を集めるなか、トウスは100年の歴史、洗練されたデザイン、感情的な共鳴を誘うクマのマスコットを武器に、ジュエリー市場での勝利をめざしている。

「米国の顧客には、よりエモーショナルなジュエリーを受け入れる条件が整っている。人々は、単なるトレンドではなく、自分らしさを感じられるアイテムを探している。それが我々の得意分野だ。(スペインとメキシコでは)我々は『愛のブランド』という地位を築いている」とソレール=ドゥッフォ氏は話す。「それは簡単に真似できるものではない」。

トウスは18〜30歳の層で人気が高まっている。「その年齢層はまさに我々のターゲットだ」と同氏は述べた。

[原文:Tous refines its US expansion strategy to increase brand awareness

Zofia Zwieglinska(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:坂本凪沙)