『Megalopolis』(写真:Everett Collection/アフロ)

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 『ゴッドファーザー』シリーズや『地獄の黙示録』(1979年)などで知られる巨匠、フランシス・フォード・コッポラ監督の最新作『Megalopolis(原題)』が窮地だ。製作費1億2000万ドルの大作ながら、北米オープニング興行収入はわずか400万ドル。9月27日~29日の週末ランキングでは第6位の発進となった。

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 本作は構想40年、コッポラがワイナリーの大半を売却して巨額の資金を調達した悲願の一作だ。近未来のアメリカを舞台に、アダム・ドライバー演じる建築家の男が、災害に見舞われた都市「ニュー・ローマ」を再建するべく、汚職まみれの市長と対決する物語で、ジャンカルロ・エスポジート、ナタリー・エマニュエル、オーブリー・プラザ、シャイア・ラブーフ、ジョン・ヴォイト、ローレンス・フィッシュバーンら豪華キャストが顔を揃えた。

 しかしながら、本作の興行が厳しいものとなる予感は早くからあった。5月のカンヌ国際映画祭でワールド・プレミアを迎えるも、批評家や観客の評価はふるわず、ハリウッドの大手スタジオも北米配給の手を挙げなかったのである。最終的に北米配給権を獲得したライオンズゲートは配給・宣伝コストを負っていないため、劇場興行が苦戦しようとも大きなダメージを受けることはない。

 それでも、初動成績が500万~700万という(決して高くない)事前の予測を下回ったのは予想外だっただろう。第4位に初登場したインド・テルグ語映画『Devara: Part 1(英題)』とは上映館数が800以上違うにもかかわらず大敗し、公開3週目のホラー映画『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』にも及ばなかった。コッポラこだわりのIMAX上映がなかった場合、さらに順位は下がっていたとみられている。

 今夏の記録的失敗といえば、6月に公開されたケヴィン・コスナー主演の西部劇映画『Horizon: An American Saga Chapter 1(原題)』が1105万ドル、8月に公開された同名ビデオゲームの実写映画版『Borderlands(原題)』が860万ドルという悲惨な初動成績となった。前者は続編『Chapter 2』とあわせて製作費1億ドルだから実質的にはやや低コストだが、配給のワーナー・ブラザースはそれでも続編の劇場公開を中止。後者には1億1500万ドルが投じられており、配給は同じくライオンズゲートだった。

 Rotten Tomatoesの批評家スコアは50%で、まさしく賛否両論。もっとも観客からの受けは悪く、観客スコアは35%、映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「D+」評価となった。別の調査によると、観客の61%が「コッポラ作品だから」映画館に足を運んだと回答。32%は「楽しい映画だと聞いたから」、29%は「アダム・ドライバー出演作だから」。ちなみに「良い映画だと聞いたから」はわずか9%にとどまった。

 『Megalopolis』はすでに海外市場での公開も決定しているが、日本公開は未定だ。

 週末ランキングの1位に輝いたのは、ユニバーサル・ピクチャーズ&ドリームワークス最新作『野生の島のロズ』。オープニング興行収入は3500万ドルで、期待された通りのスタートとなった。

 最新型アシストロボットのロズが、人間のいない島で起動し、動物たちと暮らしはじめる――。原作はピーター・ブラウンの児童書『野生のロボット』シリーズで、北米では多くの小学校で「読書リスト」に加えられているほどの名作だ。

 ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストでは1位を獲得、チルドレンズ・チョイス・アワードの年間最優秀イラストレーター賞やニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞などの文学賞にも輝いた。映画館を訪れたファミリーのうち、3分の1が「原作をよく知っている」と答えたというから、その認知度の高さがうかがえる。

 監督・脚本は『リロ&スティッチ』(2002年)や『ヒックとドラゴン』(2010年)などのクリス・サンダース。声優陣には『ブラックパンサー』シリーズのルピタ・ニョンゴをはじめ、ペドロ・パスカル、キャサリン・オハラ、ビル・ナイ、キット・コナー、ステファニー・シュウ、マーク・ハミル、ヴィング・レイムスらが起用された。

 Rotten Tomatoesでは批評家スコア・観客スコアともに98%という高評価を獲得。CinemaScoreでも「A」評価となり、口コミ効果でさらなるヒットが期待される。製作費は7800万ドル、現時点での世界累計興収は5306万ドルだから、劇場公開でのコスト回収も決して不可能ではないだろう。

 日本では2025年2月7日に劇場公開予定。これに先がけ、10月28日~11月6日に開催される第37回東京国際映画祭のアニメーション部門に正式出品される。

 ティム・バートン監督『ビートルジュース ビートルジュース』は、公開4週目にして首位を譲り、今週は第2位にランクイン。北米興収は2億5000万ドルを突破し、バートン作品としては『バットマン』(1989年)を超えて史上第2位となる見込みだ。

 第20位には、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2021年)のジェイソン・ライトマン監督が久々に低予算コメディ映画に回帰した『Saturday Night(原題)』が初登場。北米の人気コメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ』の、1975年10月11日の初回放送90分前からを描いた実話群像劇だ。放送50周年を記念し、10月11日より北米拡大公開予定。日本ではなじみのない番組ながら、宣伝次第では日本でも受けそうな題材だけに、劇場公開の実現に期待したい。

北米映画興行ランキング(9月27日~9月29日)1.『野生の島のロズ』(初登場)3500万ドル/3962館/累計3500万ドル/1週/ユニバーサル

2.『ビートルジュース ビートルジュース』(↓前週1位)1604万ドル(-38.2%)/3804館(-368館)/累計2億5013万ドル/4週/ワーナー

3.『トランスフォーマー/ONE』(↓前週2位)930万ドル(-62.2%)/3970館(-8館)/累計3916万ドル/2週/パラマウント

4.『Devara: Part 1(英題)』(初登場)560万ドル/1040館/累計560万ドル/1週/Prath

5.『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』(↓前週3位)430万ドル(-25.8%)/2661館(-714館)/累計2814万ドル/3週/ユニバーサル

6.『Megalopolis(原題)』(初登場)400万ドル/1854館/累計400万ドル/1週/ライオンズゲート

7.『デッドプール&ウルヴァリン』(↓前週5位)265万ドル(-30.4%)/1975館(-475館)/累計6億3125万ドル/10週/ディズニー

8.『My Old Ass(原題)』(↑前週19位)222万ドル(+705.9%)/1390館(+1357館)/累計285万ドル/3週/Amazon・MGM

9.『Never Let Go(原題)』(↓前週4位)220万ドル(-50.6%)/2667館(変動なし)/累計825万ドル/2週/ライオンズゲート

10.『The Substance(原題)』(↓前週6位)180万ドル(43.6%)/1712館(-237館)/累計686万ドル/2週/MUBI

(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2024年9月30日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)

参照https://www.boxofficemojo.com/weekend/2024W39/https://variety.com/2024/film/box-office/box-office-megalopolis-collapses-wild-robot-opening-weekend-1236159253/https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/megalopolis-box-office-wild-robot-1236017001/https://deadline.com/2024/09/box-office-megalopolis-the-wild-robot-1236101618/(文=稲垣貴俊)