再審判決で袴田巌さんの無罪が言い渡され、支援者らに報告する姉ひで子さん(前列右)ら=26日午後、静岡市葵区

写真拡大 (全2枚)

 「被告人は無罪」。

 裁判長の言葉に、袴田巌さん(88)の姉ひで子さん(91)は深々と頭を下げた。席に戻り、こみ上げる涙をぐっとこらえるようにまばたきを繰り返した。

 静岡地裁201号法廷。拘禁反応とみられる症状が残り、出廷を免除された袴田さんの姿はない。代わって出席したひで子さんは、裁判長に促され、ゆっくりと立ち上がった。証言台の前の席に着いたが、両腕をもぞもぞと動かし、落ち着かない。

 「主文、被告人は無罪」。裁判長がはっきりとした口調で告げた瞬間、傍聴席から拍手が湧き起こった。ひで子さんは着席したまま深く頭を下げ、当初座っていた被告席に戻ると、共に闘ってきた弁護士らと固く握手。まばたきを繰り返し、涙をこらえきれず赤くなった目頭をハンカチで何度も押さえた。

 裁判長が判決理由を述べる間、検察官2人は時折、首をひねりながらメモを取った。証拠の捏造(ねつぞう)に話が及ぶと、天を仰ぐようにのけぞり、椅子の背もたれに大きく寄り掛かる場面もあった。

 判決言い渡し後、裁判長はひで子さんに「巌さんの自由の扉は開けました」と語り掛けた。検察が控訴できることに触れつつ、「裁判所としては申し訳ないと思っている」と謝罪。「無罪が確定するまで時間がかかるが、もうしばらくお待ちいただきたい」と続けると、ひで子さんはうなずきながら聞き入った。