この記事をまとめると

タクシーの配車アプリが「便利」と評判で広く普及している

タクシー配車アプリの位置情報の精度はいまひとつ

■連動している車載ナビも遠まわりの迂回路を案内することが多い

便利すぎる!」と思いきや……

 都市部を中心にすっかり定着しているようにも見えるのが、空車タクシーとのマッチングを行うアプリサービスである。「タクシー配車アプリ」という表現のほうがわかりやすいかもしれないが、アプリを介してタクシーに乗りたい場所の近くにいる、空車のタクシーとのマッチングを行い、マッチングしたタクシーが迎えにきてくれるというサービスだ。

 タクシー会社が直接アプリサービスを行っていないところは、筆者はあえて「マッチングサービス」という表現を使っている。

 街で手を挙げて「流し営業」しているタクシーに乗るのと比べれば、メーター料金以外の費用もかかってしまうが、よほどの事情がない限りは数分待てば確実に迎えにきてもらえるし、同じアプリサービスに加盟している事業者のタクシーに毎回乗ることになるので、多少の運転士さんの個人差はあるものの、ほぼイコールコンディションのタクシーにいつも乗ることができるということも、利便性に加えたメリットというか特性だと筆者は考えて利用している。

 駅前のタクシー乗り場などから乗った際にも、利用しているアプリサービスが使えるタクシーならば、車内でQRコードをスキャンするだけでキャッシュレス決済も可能なので、とにかく一度使い始めると便利なことはこのうえない。

 しかし、いいことばかりではない。

 筆者の利用しているアプリサービスと連携している車載のカーナビゲーションの地図精度に問題があるようなのである。タクシーを呼ぶときにはスマホに現在地が表示されることになるが、最終的には画面上にあるピンをずらしてより正確な現在地に補正を行う。そして、目的地を入力(必ずしも必要ない)してタクシーがくるのだが、自宅からタクシーを呼ぶと、ほぼ毎回タクシーが道に迷っている。筆者の自宅は袋小路にありわかりにくいので、運転士さんの人為的ミスなのかと当初は思っていたのだが、毎回のように間違えられ、筆者が迷っているタクシーのところへ徒歩で向かうということが続いたのでシステムに問題があるのではないかと考えるようになった。

 実際、運転士さんの何人かは、真偽はともかくとして「地図がズレている」といったことを話してくれた。海外のライドシェアアプリも微調整して最終的な現在地を決めるのだが、そのズレはたいしたことはないのだが、日本で筆者の利用しているタクシー配車アプリはけっこう激しくずれていることが気になっていた。そのため、自宅以外で利用するときには、「●●という店の前にいます」などと必ずメッセージを入れるようにしている(自宅周辺はわかりやすいランドマークがない……)。

道を知らないドライバーが増え続ける可能性が……

 乗ってからも気になるのがルート案内である。

 目的地を入力して利用すると、タクシーに車載されているアプリ配車サービス用のディスプレイに目的地までのルート案内が示されるそうなのだが、これも複数の運転士さんによると、「迂回ルート」を示すので困っているとのこと。

 実際、筆者は最寄り駅前にあるスーパーで買い物をしたあと、スーパーから配車要請することがあるのだが、そこから自宅までのルートは運転士さんに聞いた限りでは、迂回ルートを案内しているそうだ。

 案内を実行するかしないかは運転士さんの任意操作が可能なようで、案内しないで筆者にいつも使っているルートを確認してからそのとおり走る運転士さんもいれば、いったんルート案内設定をして、あえてルートをそれて「リルート」させる運転士さんもいる。新人らしき運転士さんや、たまたま遠征していた地元以外のタクシーは道がよくわからないこともあり、たいてい迂回ルートを走っている。

「これ(配車アプリ)は便利なんですけど、迂回ルートを案内しようとするのが困ります。地元のお客さんならば聞けばいつも使っているルートを教えてもらえるのですが、こちら(運転士)もお客さんもよくわからない場所はルート案内に従うしかないですからね」と話してくれる運転士さんがいた。

 最近は新人運転士が目立ってきているが、そもそもタクシーにはカーナビが車載され、さらにアプリ配車サービス用のディスプレイには専用カーナビゲーションが搭載されている。道がよくわからないなか、カーナビに従って走行するので、新人運転士はそもそもそれが迂回ルートなのかもよくわからない状態で運転をしている。

 利用者側も若い世代ほど地図を見るという習慣はなくなり、スマホのマップ機能のなかの経路探索を頻繁に活用するので、タクシー運転士が気を利かして近道したつもりでも、そのスマホの経路探索と異なるほうが今後はクレームになっていきそうである。長い目で見れば、画面上のルートを迂回と認識する運転士も利用客もほぼいなくなるので問題はなくなるのだろうが、現状はそうはいかないだろう。

 ライドシェアアプリタクシーも呼べるタイでは、タクシー運転士といってもほとんど道を知らないような運転士に巡り合うことも珍しくなくなった。海外なので言葉の問題もあるし、そもそも道に詳しくないので、あくまで「遠まわりしているな(ルート案内の指示に従っているようなので意図的ではないようだ)」と感覚的に伝わるぐらいなのでどうしようもないのだが……。

 働き手不足が深刻なだけに、東京都内(23区及び三鷹、武蔵野地区)でもタクシー運転士になるための地理試験がなくなっている。少し先の話をすれば、車載ディスプレイに表示されるルートが迂回しているかどうかもわからないタクシー運転士がメインとなる時代がくるのは必至と考えている。

 そもそも都内に限らず、「タクシー道路」と呼ぶにふさわしい細い抜け道を、タクシーはいままで走ることが多かったし、それがプロドライバーとしてのタクシー運転士の見せ場でもあった。そこまでフォローしろとはいわないが、ベテラン運転士の走行軌跡なども取り込むなどして、地図情報についてより精度の高いものにしてほしいと、ひとりのユーザーとしても強く感じている。