梨が盗まれた場所を指し示す男性(11日、八千代市で)

写真拡大 (全2枚)

 千葉県八千代市島田の梨園で10日、収穫前の梨約500個(販売価格計約14万5000円相当)が盗まれる事件があった。

 「1年かけて育ててきた。悔しい」。農園を経営する男性(79)は唇をかむ。防犯対策には費用面での限界もあり、「どうしたらいいのか」と表情を曇らせた。(落合俊)

 異変に気づいたのは10日朝のことだった。午前7時半頃、男性の長男夫妻が収穫するため農園に向かうと、果樹に実っているはずの梨が消えていた。「おやじ、盗まれた」。長男はすぐに男性に電話をかけた。

 男性が確認すると、農園の入り口に近い3本の木から、「あきづき」という品種約500個が盗まれていた。「こんなに多くの梨を盗まれたのは初めて。収穫が始まったばかりだったのに……」と男性。八千代署が窃盗事件として調べている。

 農園では、男性の父の代から100年以上にわたって約10品種の梨を栽培してきた。広さは約1ヘクタール。周囲は木々に囲まれ、人通りは少ない。防犯対策をするにも、莫大(ばくだい)な費用がかかるという。

 JA八千代市によると、梨の販売価格は年々上がっている。今年は1箱(5キロ)あたり約4500円。肥料価格の高騰などにより、昨年と比べて100円ほど高い。担当者は「梨が高級品となってきたため、狙われやすくなっているのかもしれない」と推測する。

 市内には約50軒の梨農家がある。数個の梨を盗まれたという被害は毎年報告されているが、今回のような大量盗難はこれまで聞いたことがないという。

大量盗難受け啓発チラシ

 梨の大量盗難などを受け、八千代署は12日、八千代市内の梨農園に啓発チラシを配布した。

 チラシには、「名産品は必ず守る 不審な人・車を見たら110番」「防犯カメラ作動中」などと書かれている。私服警備員や防犯カメラによって監視していることも伝えている。農園の入り口に貼りだしてもらうことで、被害抑止や検挙につなげる狙いだ。

 家族で梨園を経営する女性(54)は「犯人がいつ、うちに来てもおかしくない。カメラを数台設置しているが、地域や警察官で見回りをしていきたい」と語った。

 チラシを手渡した同署の日高忠義巡査長は「盗難被害を防止するため、警戒を強化したい」と話した。