上手さと強さの融合。拓殖大MF日野翔太は“鳥栖仕様”に挑む過程でさらなる進化を遂げるか
常に顔が上がっていて、相手の激しいプレスや数人に囲まれても、落ち着いてボールを受けて、ファーストタッチをしっかりと意図した場所に置いて、そこからしなやかな反転、アウトサイドとインフロントを駆使した正確なパス、そして時間を作り出すなど、トップ下の位置から攻撃のリズムをもたらす。
日野がそう考えるのには理由がある。それは鳥栖に合流した2週間が大きく影響していた。
「攻撃の面では身体の向きやポジショニング、守備はボールに行くというところをトレーニングで言われて来ました」
鳥栖と言えば、縦へのハードワークを大事にし、前線からの猛プレスでボールを追い込み、マイボールにしてから素早く攻め切るスタイルだ。特にボールを奪い切るところと、クサビや縦パスに対して前を向く部分は細部に渡って強調される。
日野はボールを持ってから輝くタイプだったが、当然、鳥栖の一員となる以上、それだけを求められるわけではない。自ら奪う、前のプレスの角度と後ろの陣形をしっかりと把握して、仲間のために追い込む。
そしてターンも足もとだけではなく、スペースに入ってから直線的に仕掛けたり、スペースに直線的に落ちてからフリックなどで味方の前へのスピードを加速させるプレーをしたりしないといけない。
つまり、リズムメイクだけではなく、ファストブレイクもしないといけない。前へのスピード、強度はこれから身につけていかなければいけない部分だ。
「鳥栖では、1対1でボールを奪う力はポゼッションゲームの中でもかなり要求されるので、そこはかなり意識するようになりました。ポジショニングも自分が前を向くだけではなく、次に出す選手に前を向かせることも意識しないといけません。これまでよりも工夫が求められるので、大変ですが楽しさもあります」
鳥栖では、5月24日に行なわれたルヴァンカップのジュビロ磐田戦にインサイドハーフで出場。20分程度の出場時間だったが、実際に練習でやっていたことを、試合のテンポで発揮する難しさと楽しさを肌で感じることができた。
「後ろからきちんとビルドアップをしていくところは拓殖大と似ているので、そこを伸ばしながら、常に意識を高く持って、鳥栖で言われたことをできるようにしていきたいです。ミーティングで出てくる言葉も、すごく新鮮で勉強になっていて、細かい部分まで徹底しているなと感じるので、そこをもっと深く理解して、プレーで表現できるようにしていきたいと思います」
個人的には、パスセンス、見えている場所の独特さは菊地泰智に似ていると感じる。空間認識力が高く、イメージも豊富。「泰智さんは足もとも上手いし、サイドバックで能力を発揮していて、刺激をもらってばかりです」と語ったように、サッカーセンスの塊だった菊地は鳥栖に来てから明らかに直線的なプレーや守備の寄せのスピードと強度が格段に上がった。だからこそ、彼はSBという新境地で新たな可能性を示せる選手になった。
日野も鳥栖でこの部分を身につけたら、さらなる進化を見せてくれるのではないかと大きな期待を抱いている。上手さのなかに強さがあり、強さのなかに上手さがある。鳥栖入りを早く決断したことで、彼の今後のプレー変化が非常に楽しみになった。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
【画像】セルジオ越後、小野伸二、大久保嘉人、中村憲剛ら28名が厳選した「J歴代ベスト11」を一挙公開!
