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6/24受注開始 縦置き・後輪駆動のSUV

マツダが後輪駆動プラットフォームを開発している。

【画像】マツダCX-60 内装/デザインをじっくり見る【4種のトリム比較】 全117枚

何年か前にそんな噂が広まった時は、正直言って妄想が生んだ誤報だと思っていた。しかし、それは幻でも誤報でもなかった。


後輪駆動ベースのプラットフォームで登場した新型SUV「CX-60」。写真は、直6ディーゼル・マイルドハイブリッド仕様の「XDハイブリッド・プレミアムスポーツ(4WD)」。    前田惠介

いま、目の前にあるマツダの新型車は正真正銘のエンジン縦置き後輪駆動のプラットフォームを採用しているのだ。「CX-60」である。

ちなみにマツダがスポーツカー以外に後輪駆動を採用するのは2000年に生産を終了した「センティア」以来22年ぶり。いろんな意味で、しばらくは自動車メディアに多くの話題を提供してくれるだろう。

CX-60の発売は今年の秋が予定されているが、4月に「日本公開」としてスタイルや基本スペックを公表したのに続いてグレード構成や装備、価格なども公表。

そこで今回は、公開された新情報をもとにユーザー像ごとのねらい目グレードを紹介していこう。

速さ重視ならPHEV マツダ最強+補助金の魅力

速さを求めるなら、プラグインハイブリッド搭載車だ。

CX-60のプラットフォームは直列6気筒エンジンを搭載できるように作られているが、すべてのエンジンが6気筒というわけではない。一部には4気筒エンジンを組み合わせる仕様が存在し、その1つが「e-SKYACTIV PHEV」と呼ぶ4気筒ガソリンエンジン+モーターのプラグインハイブリッドだ。


CX-60にはプラグインハイブリッド仕様も登場。魅力はなんといってもマツダ最強のパワートレイン。補助金を活用して選ぼう。    マツダ

驚くのはその最高出力。

モーターを加えた“システム出力”は323ps(日本仕様は数値未定)と、FD型の「RX-7」を超えてマツダ最強を誇るのだから事件だ。

欧州仕様における0-100km/h加速タイムはわずか5.8秒。プラグインハイブリッド車の駆動方式は後輪駆動ではなく全車4WDとなるが、走る歓びは最高潮に高まるだろう。

プラグインハイブリッド・モデルには「PHEV Sパッケージ」「PHEVエクスクルーシブスポーツ」「PHEVエクスクルーシブモダン」「PHEVプレミアムスポーツ」そして「PHEVプレミアムモダン」と装備・トリムによって異なる5つのグレードが用意されていて、価格は539万円から626万4500円。

500万円台の半ばから600万円オーバーというマツダとしてははじめてのチャレンジとなるが、購入にあたっては国から55万円の補助金が交付されるほか、住んでいる地域によっては自治体からの補助もある(東京都では最高60万円)。

それらを活用すれば、車両価格から想像するよりも割安に購入できるのは知っておいて損はない。

300万円に抑えたい! 直4ガソリンの存在

いっぽうで、できるだけ安くCX-60を購入したいとなれば、狙うはモーターを組み合わせない4気筒モデルだ。

2.5L自然吸気エンジン搭載車は「25S Sパッケージ」「25S Lパッケージ」「25Sエクスクルーシブモード」の3グレードを展開するが、その価格もまたインパクトのあるもの。


CX-60のベーシックタイプとなる「25S Sパッケージ」はガソリンエンジン車。299万2000円〜という価格が注目のグレードだ。    前田惠介

ベーシックタイプとなる「25S Sパッケージ」は299万2000円で、なんと300万円を割り込むのだ。

これは快挙である。おそらく、トヨタ「ハリアー」をベンチマークとした価格設定だろう。

これがどのくらい割安かといえば、CX-60よりも“格下”となる「CX-5」と比べてみればよくわかる。

CX-5の通常グレード(特別仕様車を除く)のボトムとなる「20Sプロアクティブ」の価格は290万9500円。

いっぽうでCX-60の4気筒ガソリン搭載車「25S Sパッケージ」の価格は299万2000円。

信じられないほどわずかな価格アップに留まっているのである。中身を考えれば実質値下げといっていい。

なぜ「実質値下げ」? マツダからのサプライズ

実質値下げと言える理由は、エンジン。

CX-5のボトムグレードは排気量が2.0Lなのに対し、CX-60は2.5Lと格上げされているからだ。


CX-60「25S Sパッケージ」の前席内装。ベーシックグレードとはいっても内装はこの出来。開発陣によると、樹脂パーツは安く見えない質感に作り込んだという。    前田惠介

つまり、ボトムの価格は内容を考えれば安くなっていると断言できる。

CX-60の4気筒エンジンを積むベーシックグレードは、恐ろしいほどにコストパフォーマンスが高い。

価格が発表される前の段階で聞こえてきた「CX-60は手の届かない価格帯になってしまうのではないか?」という不安の声に対し、マツダは「CX-5からの乗り換えを考えてもらえる価格とする」と説明していた。それは嘘ではなかったのだ。

参考までに、CX-5とCX-60で4気筒ガソリンエンジンを積むグレード同士(2WD車)を比べてみると、「Lパッケージ」はCX-5の320万1000円に対してCX-60は341万5500円。

「エクスクルーシブモード」は352万5500円に対して384万4500円。上位グレードになるほどCX-5とCX-60の差額が拡大しているのが分かる。

それを踏まえて判断すると、もっともコストパフォーマンスが高いのはベーシックな「25S Sパッケージ」だ。

いずれにせよ、モーターなしの4気筒モデルは中身を考えると驚くほどにリーズナブル。

クルマの価格がどんどん高くなっているといわれるこの時代に、まさか200万円台で後輪駆動の上級SUVが買えることになるとは思わなかった。マツダはとんでもないサプライズをプレゼントしてくれたのだ。

ディーゼル派・直6派なら、満足度がキー

ところで、マツダの統計によると「ディーゼル車に乗っていたユーザーの約6割は次もディーゼルに乗り換える」のだという。

当然、CX-60はCX-5のディーゼルから乗り換える人も多いことだろう。CX-60のディーゼルエンジンは新開発の6気筒。マツダのディーゼルは4気筒でも評価が高かったが、6気筒となれば滑らかさや爽快感がさらに飛躍している。


直6ディーゼル車の中で選ぶなら「XDエクスクルーシブモード」。WLTCモード燃費は18.5〜19.8km/L。    前田惠介

クルマ好きなら、選んで間違いのないパワーユニットだ。そのうえ、排気量アップしてパワーも上げているのに燃費は4気筒より優れるのだから、試さない理由はない。

そんなディーゼルエンジン搭載車のイチオシグレードはどれだろう?

それは「XDエクスクルーシブモード」。

たしかに車両価格は高い(443万3000円〜)が、1つ下の「XD Lパッケージ」に比べると、シート表皮がナッパレザーに格上げされるのに加えてベンチレーションも加わり、BOSEオーディオや自慢の大開口ガラスサンルーフも標準装着される。

両グレードの価格差は40万円ほどあるが装備内容を考えれば納得だし、残価設定ローンを見積もってみると毎月の支払額の差は“こんなもの?”と思えるほど少ない。満足度が高まるからオススメだ。

回したい!曲がりたい! 重量バランスで選ぶ

そして最後に紹介するのは、運転をとことん楽しみたい人のためのチョイス。

それはズバリ、モーターなしの4気筒エンジン搭載車だ。「25S」系である。


直4ガソリン車となる「25S」系のエンジンルーム。見ての通りフロントミドシップだから、ノーズの軽さは魅力。    前田惠介

理由は、ハンドリングとアクセルを踏み込む歓びがとことん楽しめるからだ。

ボンネットを開けてみると驚く。4気筒エンジンはキャビン側に寄せて完全にフロントミドシップとしてエンジンルーム内に収まっていて、軽さに加えて重量バランスから回頭性が高いことは明らか。

加えて2.5Lエンジンはパワーとトルクがありすぎないから、アクセルを踏み込む歓びがある。

その感覚は、「マツダ3」の1.5Lエンジン車や「ロードスター」に通じるものだ。

それらの運転が楽しいと感じるのであれば、同様にCX-60の4気筒モデルも“最高の運転する歓び”をもたらしてくれることを約束する。