協会は森保監督の続投を支持。ただし、強化体制には見直すべき点もあるだろう。写真:佐藤博之

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 2020年東京五輪アジア最終予選を兼ねたU-23アジア選手権(タイ)において、日本が1分2敗とグループ最下位に終わったことで、森保一監督の今後の身の振り方が物議を醸している。一時は去就問題も浮上したが、日本サッカー協会の田嶋幸三会長や関塚隆技術委員長は現体制の支持を表明。少なくとも五輪本番までは森保監督続投となる見通しだ。その前提で、次の3月シリーズにどのような態勢で臨むのかを第一に決めなければなければならないだろう。

 3月のインターナショナル・マッチウィーク(IMD)では、まずA代表は2022年カタール・ワールドカップ・アジア2次予選のミャンマー戦(26日・豊田)とモンゴル戦(30日・ウランバートルを予定)が組まれている。一方でU-23代表はU-23南アフリカ戦(27日・京都)とU-23コートジボワール戦(30日・福岡)を消化することになっている。

 昨年11月のIMDの時は、キルギス→広島→大阪とA代表とU-23代表の3試合を強行で掛け持ちした森保監督だが、今回は豊田→京都までは可能だとしても、そこから福岡へ行ってモンゴルへ飛ぶことは不可能に近い。11月にムリなスケジュールをこなした末、好結果が出なかったことを踏まえると、やはりどちらかに集中するしかないのが現実だ。

 その場合、これまでは森保監督がA代表の指揮を執り、五輪の方は横内昭展コーチが代行で率いるのが基本だった。けれども、U-23アジア選手権惨敗で焦燥感を募らせる森保監督は「3月は五輪代表の活動を優先させたい」と発言。あくまでA代表優先と考える田嶋会長と意見の食い違いが出てきた。

 森保監督にしてみれば、もともとは五輪代表監督就任が先だったのだから、そちらに思い入れがあって当然。後からA代表を見るようになって動きがままならなくなった印象も受ける。いずれにせよ、今月29日の技術委員会で方向性が協議される模様だが、協会として「東京五輪メダル獲得」を最優先に考えるなら、指揮官の意向通り、3月は五輪に専念してもらうべきではないか。
 
 そうなると、今度はA代表の指揮を誰が執るかという問題が浮上する。ただ、2次予選の相手を考えれば、関塚技術委員長ら別の指導者が代行してもある程度は戦えるという見方もできる。そこを割り切らなければ、停滞感に包まれているU-23代表のテコ入れは図れない。協会には何を優先させるかという明確な方向性を早急に求めたい。

 仮に森保監督の思惑通り、3月はU-23代表専念となった場合、欧州組の久保建英(マジョルカ)や堂安律(PSV)、冨安健洋(ボローニャ)らを呼んでベストに近い陣容でチーム完成度を高める必要がある。ここまでは選手選考とテストに終始してきた彼らだが、残された強化期間は3月、6月のIMDと7月の直前合宿しかない。2018年ロシア・ワールドカップの前例を踏まえると、大会直前の準備だけでなんとか戦えるチームは作れるのかもしれないが、連係やコンビネーションを熟成させる時間は多ければ多いほどいい。

 実際、U-23アジア選手権を見ても、急造チームのマイナス面が出たせいか、守備陣にギクシャクしたぎこちなさが見て取れた。サウジアラビア戦の古賀太陽(柏)から岡崎慎(清水)へのバックパスがズレるという致命的なミスも起きた。攻撃に関しても、食野亮太郎(ハーツ)や相馬勇紀(名古屋)の個の打開くらいしか、引いてブロックを構築した相手を攻略する術が見出せなかった。そんな課題を克服するためにも、ここから先はある程度、チームを固めて意思統一を図らなければならない。

 加えて言うと、オーバーエイジも呼んで融合を図った方がいい。日本は96年アトランタから過去6大会連続で五輪に出ているが、オーバーエイジを使って奏功したのは2000年シドニーと2012年ロンドンだけ。2004年アテネ、2016年リオデジャネイロは直前の選手招集がマイナスに作用している。