成功した2度を振り返ると、シドニーの時はフィリップ・トルシエ監督(U-18ベトナム代表監督)がA代表と五輪代表を一元的に強化していたから、楢崎正剛(名古屋アカデミーGKコーチ)、森岡隆三(解説者)、三浦淳宏(神戸SD)という顔ぶれは違和感なく、彼らはそれぞれに統率力を示していた。ロンドンでは吉田麻也(サウサンプトン)と徳永悠平(長崎)を抜擢。溶け込む時間は短かったが、リーダーシップに秀でた2人がチームに前向きな変化をもたらした。
 
 この前例を踏まえると、今回も周囲をまとめて牽引できる人間を選ぶべきだ。戦力的には手薄感の強い1トップの大迫勇也(ブレーメン)、ボランチの柴崎岳(ラコルーニャ)が確実視されているが、もう1人は吉田や長友佑都(ガラタサライ)のような求心力のあるタイプを加えるのが得策と言っていい。

 カタール・ワールドカップ2次予選が平行して行なわれる時期にA代表の主軸3人を抜いていいのかという問題は確かに残る。だからこそ、重要なのは協会が何を優先するかだろう。あくまで自国開催である東京五輪でのメダル獲得なのか、それとも五輪はカタールのステップでしかないのか……。繰り返しになるが、森保監督の兼任見直しも含め、協会には今後の明確なビジョンを示してほしいものだ。

文●元川悦子(フリーライター)