中国政府系のシンクタンク「中国社会科学院」が主催する情報サイト「中国社会科学網」は4日「日本はなぜ、漢字を廃止しないのか?」と題する文章を掲載した。日本の「漢字事情」の紹介で、自国文化を称賛する内容は特にない。(写真は中国語で画数が最も多いとされている漢字。読みは「ビァン」。麺料理の1種という)

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 中国政府系のシンクタンク「中国社会科学院」が主催する情報サイト「中国社会科学網」は4日「日本はなぜ、漢字を廃止しないのか?」と題する文章を掲載した。日本の「漢字事情」の紹介で、自国文化を称賛する内容は特にない。

 文章は、日本における漢字使用は長期にわたり影響も大きいと主張。かなを創造してからも漢字の放棄はできず、かなと混用しつづけたと紹介した。

 これまでに漢字廃止論が出たことはあるが、「漢字の放棄は伝統文化の放棄」、「漢字の背景には中華文化という宝庫がある」などとして、立ち消えになったと説明。さらに、日本人は「漢字を活用」して「電話、哲学、社会主義」などの語を作りだし、それらの単語は広く中国語にも取り入れられるようになったと紹介した。

 さらに、漢字に対する日本人の愛着は不変であり「漢字産業」も繁栄していると紹介。「漢字検定試験は英語検定よりも受験志願者が多く、漢字に関係する書籍、テレビ番組も人気がある」(解説参照)として、京都の清水寺では毎年末に「今年の漢字」が発表されることにも触れた。

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◆解説◆
 漢字検定の志願者は2008年には約289万人だったが、2014年実績では215万人で、同年の英語検定志願者の約264万人には及ばない。

 中国語は方言差が極めて大きく、会話不能の場合も珍しくない。「漢字」は中華文明圏を1つにまとめつづける上で、絶大な力があったとされる。ただし一方では、視覚にたよる漢字による書き言葉と音声を主体とする自然な話し言葉の「距離が大きい」という現象が発生した。

 書き言葉と話し言葉の乖離は、現在でも続いている。方言の場合には、「対応する漢字が存在しない単語」もかなり存在する。

 歴史学者の岡田英弘氏は、漢字とはそもそも「話し言葉が通じない人が、交易などのために作った記号から発生」と指摘。その結果として、名詞などの語彙(ごい)は極めて豊富になったが、中国語には「細やかな情緒や風情を表す表現が少ない」ことになり、中国人の思考のパターンにも影響が及ぶことになったと主張した。

 日本語は、音声にもとづく「かな」と、意味にもとづく「漢字」を併用することで、修得は難しい一方で、「極めて幅広い表現力」を持つ文字体系を獲得したと言える。(編集担当:如月隼人)(写真は中国語で画数が最も多いとされている漢字。読みは「ビァン」。麺料理の1種という)