83分間セリフなし! 獣なったヴィンセント・ギャロの極限演技がすごすぎる
『アンナと過ごした4日間』(08)で17年ぶりの監督復帰を果たしたポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキ。彼がヴィンセント・ギャロを主演に迎えた新作『エッセンシャル・キリング』(公開中)は、83分にわたる劇中でギャロが一切セリフを発しないという大胆な演出がなされている。
【写真】切迫した表情とギラギラした目つきに、ギャロの役者魂を感じる
ギャロ演じるアラブ人兵士らしき男が、アメリカ兵に追われるうちに、深い大自然の中に迷い込み、極限状態に追い込まれていくという本作。スコリモフスキ監督は、セリフなしの演出を試みた理由について、「男が具体的にどのような人間であるかを曖昧にしておきたかった」という旨の発言をしている。実際に、ギャロ演じる男の個人的な背景などはほとんど明らかにされない。このように匿名的な人物を演じるのは難しいはずだが、ギャロはそんな難役を見事にこなしている。
また、ギャロは極限状態に置かれた人間の本能的な動物性を表現することにも成功している。たとえば、釣り人から奪った生の魚にむしゃぶりつく描写や、栄養補給のために道端で子連れの母親を襲って母乳に吸いつく場面など、言葉に頼らずとも、その表現力は圧巻。さりげない表情と動きだけで、生きることに執着し、獣性をさらけだす男になりきっているのだ。これを見れば、彼が本作でヴェネチア国際映画祭主演男優賞を受賞したのにも納得できるはずだ。
ギャロの無言の迫力を前に、言葉を失ってしまうこと必至の『エッセンシャル・キリング』は、今年最も注目に値する一作と言えよう。【トライワークス】
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