「会社にも行けない。月8万円の家賃も払えない…」東京23区一人暮らし26歳男性、2か月後に傷病手当金が振り込まれるまで<全財産28万円での生活>
会社を休職した場合、「業務外の理由による病気やケガの療養」「労務不能」「連続する3日間を含み、4日以上仕事を休んでいる」「休業した期間について給与の支払いがない」という4つの条件を満たしていれば、傷病手当金として給与の約3分の2が支給されます。傷病手当金は休職中の生活を支えてくれる心強い制度ですが、初回の申請から振込までには2か月近くかかることがあります。では、傷病手当金が振り込まれるまでの生活資金が足りない場合はどうすればよいのでしょうか。会社を休職中のユキヒロさん(仮名・26歳)の事例を見ていきましょう。
平日は4時間残業しても仕事が終わらず、休日もクライアントから連絡が…
会社員のユキヒロさん(仮名・26歳)は、勤め先の会社を休職しています。
都内の小さな広告代理店で法人営業をしているユキヒロさんは、毎朝6時に起きて会社に行き、23時ごろに帰宅する生活を送っていました。営業ノルマを達成できていないユキヒロさんは、始業時間の9時から終業時間の18時まで、ひたすら新規の電話営業を行います。既存クライアントの対応は終業後にまとめて行うため、一日4時間の残業をしても足りないほどでした。
土・日・祝は基本的に休みですが、クライアントから緊急の連絡があった場合は対応しなければなりません。ユキヒロさんが担当するクライアントは心配性な人が多く、休日でも電話をかけてくることがたびたびありました。
「休日なのに心が休まらない……」
心と体の疲労が、じわじわとユキヒロさんをむしばんでいきます。体がだるくて起き上がれず、会社を遅刻したり、欠勤したりすることが増えていきました。はじめのうちは遅刻分や欠勤分を有休として相殺していましたが、12日ほどあった有休も使い果たしてしまいます。有休が使えない状態で遅刻や欠勤を繰り返した結果、通常であれば月22万円ほどあるはずの手取りが、15万円前後になってしまうこともありました。
心療内科で「適応障害」と診断。会社を休職することに
ユキヒロさんは上司から心療内科の受診を勧められます。「心療内科を受診するほどじゃない」。そう思っていたユキヒロさんでしたが、上司の意向は固く、半ば強制的に受診することになったのです。
心療内科では、ここ数か月の体調の変化について質問されました。ユキヒロさんは、「朝起きられなくなった」「仕事中も頭が回らなくてミスが増えた」「遅刻や欠勤を繰り返すようになった」といった症状を話します。すると、担当医から「診断書を書くので、今すぐ休職したほうがいい」とアドバイスを受けたのです。
翌日、担当医の話を上司に伝えると、2日後から3日間の休暇を取ったあとに休職期間に入ることが決まりました。担当していた業務は直属の上司が巻き取ってくれたため、ユキヒロさんは引き継ぎ対応をほとんどせずに仕事から離れることができました。
休職期間中は傷病手当金が支給されるが、初回振込は2か月先になることも
休暇前最後の出勤日には、労務担当者から休職期間中の注意事項について説明を受けました。そのなかで、休職中は「傷病手当金」が支給されることを聞かされます。
傷病手当金とは、病気やケガで仕事を休むことになった際に、給与の約3分の2が支給される制度です。通算で1年6か月間、傷病手当金を受け取ることができます(出典:協会けんぽ「傷病手当金」)。
「休職中もお金が振り込まれるんだ……よかった」
ほっと胸をなでおろしたユキヒロさんですが、労務担当者のひと言でつかの間の安堵は白紙に戻ります。
「ただし、最初は手続きに時間がかかるため、初回の傷病手当金が振り込まれるまでに2か月ほどかかる可能性もあります」
貯金はたった28万円。家賃を払いながら2か月間耐えしのげるか
「2か月も収入がなかったら、家賃が払えないかも……」
東京23区内のワンルームマンションで一人暮らしをするユキヒロさんの家賃は、管理費込みで8万円。そこに水道光熱費や食費などを合わせると、毎月の生活費は少なくとも14万円は必要です。ここ数か月の遅刻・欠勤と友人の結婚ラッシュによる「ご祝儀貧乏」で、ユキヒロさんの貯金はわずか28万円になっていました。
スキマバイトで食いつなごうかと考えましたが、休職期間中は会社のルールで副業が禁止されています。
「食費を節約すれば何とかなるかな。でも、給付金の振込がもっと遅くなる可能性もあるよな……」
給付金が支給されるまでの生活のことで頭がいっぱいになり、休職中なのにまったく心が休まりません。
2か月を乗り越えるための「緊急つなぎ資金」
「傷病手当金が振り込まれるまでの間、何とか生活をつなぎたい」。ユキヒロさんのように目先の生活資金を必要とする人のための制度が、「生活福祉資金貸付制度」です。
生活福祉資金貸付制度とは、生活に困っている人に向けて、社会福祉協議会が資金の貸し付け相談や支援を行う制度です(出典:政府広報オンライン「生活にお困りで一時的に資金が必要なかたへ『生活福祉資金貸付制度』があります。」)。
生活福祉資金には、「総合支援資金」「福祉資金」「教育支援資金」といったいくつかの種類があります。ユキヒロさんが利用できるのは、福祉資金に含まれる「緊急小口資金」です。緊急小口資金は、緊急かつ一時的に生活の維持が困難になった場合に少額の費用を借りられる制度です。ユキヒロさんは休職によって「緊急かつ一時的に生活の維持が困難になった」人に該当するため、緊急小口金を借りることができます。
厚生労働省「生活福祉資金貸付条件等一覧(※新型コロナウイルス感染症の特例貸付の内容ではありません)」によると、緊急小口資金の貸付限度額は10万円以内。貸付けの日から2か月は返済が免除されます。返済期限(償還期限)は、2か月の免除期間が経過したあとから12か月以内で、借りるための利子は発生しません。
申請から貸付決定までの期間は地方自治体によって変わりますが、東京都の場合は最短でも5営業日かかります(出典:東京都福祉局「緊急小口資金のご案内」)。自分が住んでいる地域の審査期間が知りたい場合は、役所の福祉窓口に相談することをおすすめします。
「自分一人でどうにかしなければ……」と抱え込む前に、気軽に相談できる場所があることを知っておくだけでも、もしものときに落ち着いて対策を打つことができます

