検察なめんなよ」

【画像】「机を叩きながら威圧的な言動を繰り返し…」田渕被告を刑事告発した山岸氏を見る

 被疑者をそう怒鳴りつけ、「俺たちは人生を狂わせる権力を持っている」と言い放った検事が、今度は自ら被告席に座った。


©︎Tomoharu_photography/イメージマート

机を叩きながら威圧的な言動を繰り返し…

 不動産会社・プレサンスコーポレーション(当時)を巡る業務上横領無罪事件。取り調べで机を叩きながら威圧的な言動を繰り返したとして、特別公務員暴行陵虐罪に問われた元大阪地検特捜部検事・田渕大輔被告の初公判が7月10日、大阪地裁で開かれた。法廷で田渕被告は「陵虐の意図はなく、罪は成立しない」と述べ、無罪を主張した。

検察の取り調べは、2010年に発覚した大阪地検特捜部の証拠改ざん事件後に可視化が導入された。映像は被疑者の権利を守るだけでなく、検事を律する役割もある。つまり田渕被告は恫喝が記録されることを認識した上で暴言を吐いていたのです」(社会部記者)

 田渕被告はプレサンス社の元社長・山岸忍氏(無罪確定)の部下の取り調べを担当。部下は当初、山岸氏の関与を否定する供述をしたが取り調べ後、これを変更。大阪地裁は無罪判決で、「検察官から責任を問われることを恐れ、供述が変遷した可能性を否定することはできない」と認定した。

 山岸氏はこの判断を受け、田渕被告を刑事告発。大阪地裁は棄却したが、裁判所に刑事裁判を開くよう求める付審判の請求を受け、大阪高裁が開始を決定した。現職検事が付審判で裁かれる初めてのケースだ。

検察内部では「当然、無罪だろう」との声が優勢だったが…

「付審判決定は24件のみ。多くは警察官や刑務官による制圧や職務質問、取り調べでの暴行が問題となったが、無罪や免訴判決が約半数です」(前出・記者)

 それゆえ、検察内部では当初、「あの程度で罪になるはずがない。当然、無罪だろう」との声が優勢だった。だが、ここにきて「有罪も十分あり得る」との見方が広がり始めたという。

 背景には、元大阪地検トップが準強制性交罪に問われた事件、現職検事による取り調べ相手の女性との不適切交際など、検察の信頼を揺るがす事案が相次いでいることがある。検察幹部は「裁判所が世論で判断することはない」と前置きしつつ、「検察全体への目が厳しくなっているのは間違いない。そうした空気が判決に全く影響しないとは言い切れない」と話す。

 実際、ある現職の裁判官は、こう断じる。

「あのような発言をする捜査上の必要性は一切ない。黙秘権の侵害そのものだ」

 仮に有罪となれば、刑事責任だけでは済まず、検察官適格審査会で審査され、検察バッジを失う可能性もあるのだ。

 田渕裁判は一人の検事の命運を握るだけではない。検察の取り調べに、裁判所がどこで線を引くのか。その判断は、今後の捜査にも少なからぬ影響を及ぼす。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2026年7月23日号)