4年間不登校、”34点”の笑顔と採点された高校生が激変…「心の底から笑う」ために「やめたこと」

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私が代表を務める青楓館高等学院の生徒、リョウ君(仮名、以下同)。小学6年から中学3年までの4年間、彼は一度も教室に通えなかった。家にこもり、人と関わる時間はオンラインゲームのボイスチャットだけ。そんな日々が、彼から人と向き合う力を、静かに奪っていた。高校1年で始めたマクドナルドのアルバイト。そこで受けた笑顔の採点は、34点。それでも本人には、自分が笑えていないという自覚すらなかった。人を見下す物言いも、消えた笑顔も、傷つかないために彼が選んだ鎧だったのだ。

前編記事を読む→マクドナルドの笑顔採点で"34点"…4年間不登校だった高校生が「傷つかない生き方」で失ったもの

その彼が、いまや別人のようだ。学内のプレゼン大会で自分のコンプレックスを堂々と語り、参加したビジネスコンテストでは見事優勝。何が彼を変えたのか。その答えは、お子さんがいる家庭にも、きっと参考になるはずだ。

笑顔も態度も、直さなかった

リョウ君のような子に出会うと、大人はつい「その態度を直しなさい」と言いたくなる。人を見下す物言い、消えた笑顔。それを“性格の問題”だと捉えて、正そうとする。

けれど、ここで対応を間違えてはいけないと思う。一度、理不尽に傷ついた子は、また傷つくくらいなら、先に自分から壁をつくる。人を馬鹿にするのも、笑顔が消えたのも、人と向き合わずに済むために、彼なりに選んだ方法でしかない。中身の問題ではないのだ。ここで「態度を直せ」と叱れば、彼はもっと固く殻に閉じこもる。

だから私たちがやったのは、たった二つ。「ありのままの自分でも受け入れられる」という経験を積ませること。そして、教員との1on1(個別面談)で、本人すら気づかない小さな変化を、一緒に見つけていくこと。彼の笑顔を採点することは、一度もしなかった。

人との関わりを避けていた子が、韓国や被災地へ

青楓館では、学習だけでなく、多様な経験と人との出会いを大切にしている。殻の中にいたリョウ君も、少しずつ外へ出始めた。初めて訪れたのは韓国。なんとなく面白そうだから、という理由で人生初の海外を経験。

日本国内でも被災があった石川県の門前町を実際に訪ね、現地の人たちと言葉を交わしたりした。そして石川での経験をとあるビジコンで発表し、見事優勝。

少し前まで「人との関わりを避けていた子」が挑戦も、人との関わりもヒョイと乗り越えてしまうほど成長した。

英語学習も、Duolingoが「すっかり習慣になった」と言うほど続いた。しまいには、自分で英単語を覚えるアプリまで作り始めた。画面の前で固まっていた少年が、いつのまにか、画面の“つくり手”になっていた。

「人を馬鹿にするのをやめたら、心の底から笑えた」

リョウ君の変化の核心は、笑顔の練習ではなかった。

自己分析を重ねるなかで、彼はある気づきを言葉にしている。「人のことを馬鹿にするのを、やめてみた。そうしたら、自分も冷笑じゃなくて、心の底から笑えるようになった」。先に壁をつくることをやめたとき、彼の表情は、自然とほどけていった。

象徴的なのは、学内のプレゼン大会。彼はそこで、隠してきた自分の不登校と「マクドの笑顔34点」を、そのまま発表のテーマに据えた。「スマイル34点の男」と自らを名乗り、予選を通過している。最大のコンプレックスだった数字を、いまは自分のキャラクターとして差し出せるようになった。「嫌われたくない」「馬鹿にされたくない」という不安から人を遠ざけていた彼が、ありのままの自分を受け入れられた証だと思う。

「自分は自分でいい」と思えると、他人を見下して身を守る必要がなくなる。34点だった笑顔が、いまや周囲を巻き込むほど自然なものになったのは、表情筋を鍛えたからではない。心が、ほどけたからである。

失った時間を「前へ進む力」に

自分を受け入れたリョウ君は、挑戦にも前向きになった。

なかでも私が驚いたのは、高校生ながら企業の業務をAIで改善する有償インターンに参加していること。時給は2,200円。高校生離れした活躍に将来が楽しみで仕方ない。正直、やりたいことはまだいろんな可能性へと揺れ動いているが、その軸には一貫して、自分の力で何かを生み出したいという思いがある。

彼自身の、こんな言葉がある。「4年間の不登校があったからこそ、残りの時間を大事にしたいと思える」。失った時間を、後悔ではなく、前へ進む力に変えている。

わが子の“態度”が気になったときにすべきこと

もし、あなたのお子さんが攻撃的だったり、何に対しても後ろ向きだったりするなら、その行動を正す前に、どうか一度立ち止まってほしい。

目に見える行動は、あくまで“症状”であって、“原因”ではない。攻撃的な言葉の裏には、傷つきたくないという気持ちがある。消えた笑顔の裏には、人と向き合うことへの怖さがある。直すべきは、その子の態度ではない。

その子が「ありのままの自分でいい」と思える場所を、隣でどうつくるか。「ありのままでいい」と思えたら、笑顔も素直さも、後から自然と戻ってくる。リョウ君の34点は、私たち大人にこそ、そのことを教えてくれている。

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岡内 大晟

青楓館高等学院 代表

2023年、青楓館高等学院を開校し、代表に就任。兵庫県明石市・芦屋市を拠点に、一人ひとりの個性を尊重した教育を実践。社会に開かれた学校教育を目指す。

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