今や隠れ半導体・AI素材セクターの「ガラス・土石銘柄4選」…世界トップクラスの「日本企業の名前」
「隠れ半導体・AI素材セクター」として注目の業種
日本株でポピュラーな業種分類である東証33業種の中に「ガラス・土石」があります。筆者がアナリスト時代には「ガラド」と略して読まれることが多かったように思います。ガラスはわかるけど土石って何だ?と思われたかもしれません。
「ガラス・土石」とは、ガラス、セメント、陶磁器、耐火物、セラミックス、石材などをつくる素材系の業種です。
名前だけ見ると地味ですが、実際にはかなり幅広い産業を支えており、2点で捉えられます。
1.伝統的な建設・インフラ関連
・セメント
・建築用ガラス
・耐火物
2.先端半導体・電子材料関連
・ガラス基板
・ファインセラミックス
・電子材料
・半導体製造装置向け部材
以前は「ガラス・土石」と聞くと、「1.伝統的な建設・インフラ関連」のイメージが強く、景気敏感株として見られていました。しかし最先端半導体の製造にはガラスやセラミックスなどの高機能材料が不可欠で、足下の株式市場では「ガラス・土石=建設株」という従来のイメージから、「隠れ半導体・AI素材セクター」へと評価が変わりつつあります。実際、最近の市場ではAI・半導体相場の中で、電子材料や高機能素材を持つ企業への資金シフトが続いていると分析されています。
ガラス繊維はプリント基板の材料です。
プリント基板(PCB:Printed Circuit Board)とは、電子部品や半導体を載せて電気信号をやり取りするための「電子機器の土台」です。身近な例でいうと、パソコンのマザーボードやスマートフォンの内部にある緑色または黒色の板がプリント基板です。この基板の表面には銅の配線が張り巡らされており、その上にCPUやメモリ、各種半導体チップが実装されています。プリント基板には、1)半導体や電子部品を固定する、2)部品同士を電気的につなぐ、3)電気信号や電力を効率よく伝えるという3つの役割があります。人間でいえば、半導体が「脳」なら、プリント基板は神経や骨格のような存在だと理解してください。
セラミックスは、「半導体そのもの」ではなく、半導体を作る設備や半導体を載せる土台として欠かせない材料です。半導体工場では、高温・真空・強いプラズマ・薬品など非常に過酷な環境で製造が行われるため、金属や樹脂では耐えられない場面が多くあります。そこで活躍するのがファインセラミックスです。セラミックスは熱に強く、腐食しにくく、電気を通しにくいという特性があり、ナノメートル単位の製品を支えています。そして日本にはセラミックス分野で世界トップクラスの企業があります。
日常生活で目に入らない小さな半導体の中に潜んでいる「ガラス・土石」銘柄をご紹介します。
最先端ロジック半導体の製造を支える大手
■「ガラスコア基板」開発に期待 AGC(東プ:5201)
建築用ガラスや自動車用ガラスで知られる世界有数の素材メーカーですが、足下の株式市場ではAI・半導体関連銘柄として注目を集めています。その理由は、最先端半導体の製造や実装に欠かせない高機能ガラス材料を数多く手掛けているためです。
代表例が、EUV(極端紫外線)露光で使用される「フォトマスクブランクス」です。フォトマスクは半導体回路の原版となる重要な部材で、その土台となる超高精度ガラス基板がフォトマスクブランクスです。わずかなゆがみや不純物も許されないため、高度なガラス加工技術が求められます。AGCはこの分野で世界トップクラスの技術力を持ち、最先端ロジック半導体の製造を支えています。
さらに、AI向けGPUやHBM(広帯域メモリ)の高性能化に伴い、次世代パッケージ技術として期待される「ガラスコア基板(Glass Core Substrate)」の開発にも取り組んでいます。インテル(米ナスダック:INTC)が技術開発を積極的に進めているもので、従来の樹脂基板に比べて熱による変形が少なく、より微細な配線や大型パッケージに対応できることから、AIサーバー向け半導体の性能向上に欠かせない技術として注目されています。2028年の量産化を目指しています。
半導体素材事業はAGCの事業セグメントにおいて「電子」に該当し、2026年12月期の子のセグメントの営業利益を450億円と予想しています。全体の営業利益の3割を占める大きな事業セグメントです。
世界有数の特殊ガラスメーカー
■AI向けガラス繊維事業に強み 日本電気硝子(東プ:5214)
液晶ディスプレー用ガラスで培った高度なガラス技術を強みに持つ世界有数の特殊ガラスメーカーです。筆者が証券アナリスト時代には「でんがら」と略して呼ぶ方が多かったです。
半導体素材としての注目材料は、やはり「ガラスコア基板(Glass Core Substrate)」です。ガラスコア基板は、熱膨張が小さく平坦性に優れ、より微細な配線や大型パッケージに対応可能です。日本電気硝子は、この基板の核となる高品質ガラス材料の開発を進めており、半導体メーカーやパッケージ基板メーカーと連携しながら実用化を目指しています。
また、同社は半導体製造装置や電子部品向けの特殊ガラス、高機能ガラス材料も幅広く供給しており、AIやデータセンターの普及に伴う半導体需要の拡大が追い風となる事業基盤を持っています。
2026年2月6日に200億円を上限とする自社株買い設定を公表し、まだ枠が100億円程度残っています。取得期間は12月23日までです。
熱に強いセラミックス部材を手がける
■小さい半導体に欠かせないファインセラミックス NGK(東プ:5333)
NGKという社名より「日本碍子(にほんがいし)」の方がなじみがあるかもしれません。2026年4月に商号変更しました。
「がいし」は、絶縁体です。電柱や鉄塔を見ると、電線を直接金属の柱にくっつけず、白っぽい陶器のような部品を間に挟んでいます。それが「がいし」です。
役割は、電線を支えることと電気を逃がさないことです。「電気を逃がさない」ためにセラミックスが使われます。
NGKは高温・高電圧・薬品・プラズマといった過酷な環境に耐えるファインセラミックス技術を持っています。半導体製造では、シリコンウエハーをナノメートル単位で加工するため、製造装置の内部には極めて高い精度と耐久性を持つ部材が必要です。日本碍子は、ウエハーを固定する静電チャックや、熱処理・成膜・エッチング工程で使われるセラミックス部材などを手掛けており、半導体製造装置の性能を支える重要な存在です。
特にAI向け半導体では、GPUやHBMの需要拡大により、先端ロジック半導体やメモリの生産能力増強が進んでいます。その結果、半導体製造装置向けの高機能セラミックスにも追い風が吹きやすくなっています。セラミックスは熱に強く、変形しにくく、電気を通しにくいという特長があるため、微細化が進む半導体製造では欠かせない材料です。
2026年5月28日に発表した新たな長期経営計画で、2030年度までに2500億円を投じ、半導体製造の基幹部品や高速通信向け製品の開発を進めることを明らかにしました。半導体関連事業を今後10年間の中核成長領域と位置づけています。
10期以上連続増配の高付加価値材料メーカー
■10期以上連続増配のセラミックス部品の製造販売企業 MARUWA(東プ:5344)
高度なファインセラミックス技術を強みとする電子材料メーカーです。半導体や電子機器の性能を左右する「高機能セラミックス」を開発・製造していることが最大の特徴です。
得意とするのは、高い放熱性と電気絶縁性を兼ね備えたセラミックス基板です。AI向けGPUやパワー半導体は膨大な電力を消費し、大量の熱を発生させます。熱を十分に逃がせないと性能低下や故障につながるため、半導体を効率よく冷却できる高性能な放熱基板が欠かせません。MARUWAの窒化アルミニウム(AlN)などを用いたセラミックス基板は、高い熱伝導性を持ちながら電気を通さないという優れた特性を備え、AIサーバーやデータセンター、通信機器などで幅広く採用されています。
さらに、半導体製造装置向けの精密セラミックス部品や、高速通信に対応する電子部品用材料なども手掛けており、AI・5G・EVといった成長分野の需要拡大から恩恵を受ける事業構造となっています。ファインセラミックスは高度な材料設計と製造技術が必要なため、新規参入が容易ではなく、同社の技術力は世界的にも高く評価されています。
AI市場の拡大に伴い、高性能な放熱材料への需要は今後も増加が期待されており、同社は「AI時代を支える高付加価値材料メーカー」として中長期的な成長が期待されています。
株価は1年で2.5倍になりました。一方、10期以上連続増配中でありつつ、配当性向は7%程度と非常に低く、今後の増配余地を感じる銘柄です。
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さかえだいくこ(おせちーず)
大学常勤講師/日本FP協会認定CFP®/日本証券アナリスト協会認定証券アナリスト
21歳で証券会社に口座を開設して以来、証券アナリストだった時代を除きずっと個人投資家。投資家歴は30年超。現在50代で北東北在住。
大学卒業後、システムエンジニア15年、証券アナリスト7年半、地方公務員5年半を経験し、49歳でフルタイムワークからいったん卒業。しかし50歳目前で、某企業の研究員として週休3日の会社員に復帰。その後、地元の大学で非常勤講師としてキャリア教育にも従事し、53歳で常勤講師となる。合間に投資の講師や投資ライター業も営む。SMBC日興証券「日興フロッギー」にてコラム連載中。
MBA保持者でTOEICは950点。地方移住とがんを克服した経験もある。『2倍株・3倍株がぽこぽこ生まれる のんびり日本株投資』(すばる舎)が初の著書。
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