名将アンチェロッティが抱えた“緊張” ブラジル紙で明かされた日本戦で揺れた心情「監督は脆弱。日本に負けたら、私はどう言われていたか…」【W杯】

日本戦で勇気ある采配を振るったアンチェロッティ監督(C)Getty Images
1点のビハインドを背負って迎えたハーフタイム明けに、ブラジル代表は豹変した。
去る6月29日、北中米ワールドカップ(W杯)の決勝トーナメント1回戦で、日本代表と対戦したブラジル代表は、前半に苦闘を強いられていた。29分に佐野海舟のゴールで先行されると、その後は攻勢を強めてワンサイドゲームを展開したが、眼前に立ちはだかった守備ブロックをこじ開けきれず。攻めあぐねる時間が続いた。
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流れは日本に傾いていた。戦前の下馬評で「有利」との見方が強かったブラジルにとって、重圧が強まっていたのは想像に難くない。しかし、その状況を一変させたのは、チームを率いたカルロ・アンチェロッティ監督の采配だった。
ハーフタイム中に「必ずゴールは決まる。そうすれば、試合の流れを変わる」と呼びかけたイタリア人指揮官は、後半開始と同時に19歳の俊英エンドリッキを投入。実質4トップとも言える布陣を完成させると、ブラジルは、日本をより深い位置へと押し込み、幅を使ったサイド攻撃を執拗に繰り出せるようになった。
この選手交代が的中し、水を得た魚のようにリズミカルにプレーし始めたブラジルは、56分にカゼミーロがヘディングシュートを叩き込んで同点。さらに後半アディショナルタイム5分に66分から投入されたガブリエル・マルティネッリが逆転ゴールを決め、日本を奈落の底に突き落とした。
指導者としては数々の世界的ビッグクラブで辣腕を振るってきたアンチェロッティ監督。ただ、百戦錬磨の67歳にとっても、ワールドカップに挑むブラジル代表監督という立場で迎えた0-1のハーフタイムは、想像以上の緊張感のあるものだったという。
現地時間7月3日にブラジル日刊紙『Folha de S. Paulo』のインタビューに応じたアンチェロッティ監督は、ドラマチックな展開で終幕した日本戦での心境を次のように振り返っている。
「ああいう試合において監督は脆弱だ。なぜなら、成功は選手のおかげであり、失敗は監督のせいになるからだ。もしも、日本に負けていたら、私は人々からどう言われていたことか……。カゼミーロを交代させたり、マルティネッリを投入しなかったらどうなっていたか。そして、誰の責任だったか。全て私が問われていただろうね」
監督という職業の辛さを漏らすように心情を明かしたアンチェロッティ監督は、「でも、私はそのことを完璧に理解している。だからこそ、私はバランスを保ちたいんだ」と強調。「自分が天才でないのは、100%間違いない。だが、同時に私がバカでないことも100%確かなことだ」と続け、日本戦で選手たちに送った指示の内容を打ち明けている。
「選手たちには『自信を持て』と伝え続けた。ゴールは絶対に取れるからまだ焦るな、とね。そして、あらゆることが起きるから、粘り強く準備しておくようにともね。私はいまのチームに対して以前よりも自信を持っているし、試合中の不安も軽減した。いい成果が出ている。我々はあらゆる状況にも対応できる準備ができている。失点するかもしれないが、すぐに反撃する準備はできていたんだ」
責任を問われる覚悟を決め、攻めに出たアンチェロッティ監督。この名将の勇気ある決意が、最後の最後でブラジルに勝利を手繰り寄せたと言えるかもしれない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]

