「頑張っても評価は同じ?」部下たちの怒りは想像に難くない…(やまたつ / PIXTA)※写真はイメージ

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「上司から『今年はB評価ね』と言われたので、『A評価の人っているんですか?』と聞いたら『え、全員Bだけど?』と返された」…

6月中旬、上記のような投稿がX上で注目を集めた。

病院に勤める投稿者が他の職員に確認したところ、院長が人件費削減の目的で「A評価はあまり出さないように」と指示を出していたという。

一方で、他部署にはA評価を受けた職員もいた。そのため投稿者は、「つまり部長は、自分の立場を守るために、部下を一律B評価にしたということ。今回ばかりは、さすがに許せない」と不満をあらわにした(Xの投稿から)。

元の投稿には「なんかなぁって感じですよね。評価は本当に闇が深い」や「頑張った人とそうでない人が同じ評価なら、評価制度そのものへの信頼がなくなるよね」といった共感の声が寄せられている。

また、「元職場がこれで、A評価をわざと出さずにボーナスを削減していました」「うちも部署によってはA評価がほとんどありません」と、似たような経験を語る人の声も相次いだ。

6月30日は、国家公務員や多くの自治体職員に夏のボーナス(期末・勤勉手当)が支給される日だ。民間企業でも、6月から7月にかけてボーナスが支給されるケースは少なくない。そして、人事評価は昇給や昇進はもちろん、ボーナスの金額にも影響するため、労働者にとって重要な問題だ。

本件のように、会社や上司が人件費の抑制などを理由に本来より低い人事評価を付けていた場合、その評価は法的に問題となるのだろうか。また、労働者は「不当な人事評価だ」として争うことができるのだろうか。

「人事評価制度そのもの」を法律で争うのは難しいが…

そもそも人事評価制度とは、企業または病院などの団体が、その業務の特性に応じて独自の基準に基づいて設けているものだ。たとえば営業職であれば売上実績や新規顧客の獲得数が重視される一方、医療機関では診療や組織運営への貢献などが評価対象となる場合もある。このように、何を重視して評価するかは業種や職種によって異なる。

逆に言えば、人事評価制度は企業などの裁量に委ねられており、どのような評価項目を設けるか、評価結果を昇給や賞与にどれくらい反映させるかといった点について、法律が細かく定めているわけではない。

また、「公正な人事評価制度とはこのようなものである」あるいは「このような人事評価制度は不公平である」といった基準が、法律によって明確に定められているわけでもない。

労働問題に詳しい杉山大介弁護士は「人事評価制度そのものの適切性を争うというのは、通常あまり想定されていません」と説明する。

もっとも、人事評価は法的な議論と無関係ではない。杉山弁護士によると、評価制度によって労働者に生じた「不利益」について争う際に、間接的に人事評価制度が問題になる場合があるという。

たとえば企業が「能力不足」を理由に労働者を解雇したり、降格などの不利益な処分を行ったりする際、その判断の根拠として人事評価制度が用いられることがある。そして、使用者が能力不足を主張するためには、客観的かつ合理的な評価方法に基づいてその事実を示す必要がある。

仮に評価制度や評価方法に問題があれば、処分の妥当性そのものが争われる可能性もある。そのようなケースでは、人事評価制度が妥当か否かが、解雇や降格の是非に関する法的な議論に影響を与える場合もある、ということだ。

「本当はA評価だった」と証明できる?

それでは本件のように、使用者側が人件費削減を目的として、本来であれば高評価に相当する労働者を低評価とした場合、法的に何らかの問題が生じ得るのだろうか。

杉山弁護士は「この点で、直ちに法的な訴えにはつながらないのが、人事評価制度に関する問題の難しさです」と語る。

「人事評価制度そのものに、違法かどうかという基準が厳密にあるわけではありません。また、人事評価が不当であったことによって給料やボーナスが失われた、と論理的に示すのは容易ではありません。

すでに支払うことが約束されている賃金や賞与が支給されない場合は法的な問題として争いやすい一方、『適正に評価されていれば将来的に昇給や昇進があったはずだ』という不利益については、因果関係の立証が難しく、法的な問題として認められにくい傾向があります」(杉山弁護士)

なお、本件で投稿者が推測しているように上司が「A評価を付けると自分の立場が悪くなる」などと考えて部下の労働評価を不当に下げて報告する行為は、それによって職場における平穏を害されるなどした場合には、ハラスメントに類似するような不法行為責任を上司が負う可能性はある。

そしてこの場合には、使用者(会社や団体)も上司と連帯して責任を負うことになる。

このように、上司や会社が不当に低い評価を付ける行為には法的リスクが存在する、とはいえる。もっとも、前述のように、不当に低い評価による不利益と具体的な損害との関係を示すことが容易ではない点に留意する必要があるだろう。

不当な評価を受けた時に取るべき対応は?

杉山弁護士自身が担当した違法な配置転換が争点となった事案で、労働審判のなかで解決金の支払いを受けたケースもあったという。

「この事案では、給与テーブルが、職位や社内ランクごとに定められていました。そのため、『ここで違法な配置転換がなければ、いまごろはテーブルのここに位置づけられて、金額はこうなっていた』という仮定を、根拠を挙げて示しました。

ただし、そのケースも訴訟で判決が出たわけではなく、労働審判の中で和解が成立した事案です。法的な評価が裁判所によって示されたわけではないため、『労働者側が勝っていた事案』とまでいうことはできません」(杉山弁護士)

冒頭の投稿主は、これから労働組合に訴える意向を示していた。

人事評価は昇給や昇進、賞与などに影響するため、労働者にとっては極めて重要な問題だ。しかし、その制度や運用の適否を法律だけで一律に判断することは容易ではない。

不当な評価を受けていると感じた場合には、制度の内容や実際に生じている不利益を整理したうえで、労働組合や弁護士などの専門家に相談することが重要になるだろう。