ゼロからわかる”サナエトークン首謀者”松井健という男の正体「彼はどうやって高市総理に接近したのか」

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「俺を裏切ったら、YouTubeに晒すぞ」

「正義の告発者」として振る舞うIT経営者は、被害者たちにそう「逆ギレ」していたという。男の名は松井健。自称33歳。『週刊文春』に登場し、昨年の自民党総裁選や今年の衆院選で、高市早苗総理の公設第一秘書・木下剛志氏と連携しながら、他候補の「誹謗中傷動画」をSNS上に大量投稿したと暴露した。

総裁選や衆院選の情勢を、自分がひっくり返したかのように語る松井氏の言葉を、メディアは真に受けた。「民主主義を歪める大問題だ」。そんな言説が、国会でも飛び交った。そして松井氏は6月上旬には共同通信の取材を受け、同様の告発を続けたが――。

「松井氏は選対スタッフではなく『別働隊』」

今年2月末、高市総理の名を冠した暗号資産「SANAE TOKEN(サナエトークン)」が発表された。実は、その発行元の合同会社NoBorder DAO(以下、ノーボーダー)の幹部であり、サナエトークンの首謀者こそが、松井氏だ。

筆者は発覚当初からこの問題を追い、高市事務所にも取材を重ねた。木下氏と松井氏によるLINEやオンライン会議でのやりとり、松井氏による「勝手連」での高市陣営支援、ノーボーダーからの依頼で高市事務所がサナエトークンを宣伝した経緯を追及し、高市事務所からは事実関係を認める回答を得た。

それにもかかわらず、高市総理は国会で「(週刊現代への回答書は)事実と違う」と語り、木下氏と松井氏の「接点」すらも「認めていない」と強弁。そこで、筆者が高市事務所からの回答書の原本を「現代ビジネス」で公開すると、総理は一転して、答弁の訂正に踏み切った。

松井氏は最初、高市総理のブレーンである京都大学大学院の藤井聡教授の紹介で、SNS対策の専門家として木下氏と知り合い、総裁選告示後の昨年9月25日、オンライン会議で知遇を得た。

「松井氏は選対スタッフではなく、木下氏が個人的にやりとりをしていた『別働隊』のようなもの。総裁選期間中、松井氏は勝手連として他候補のネガキャンをしていると報告し、木下氏はそれを信じたのではないか。率直な意見交換をするうち、信認を得たのでしょう」(高市陣営関係者)

「SNS対策」は手段にすぎなかった

だが松井氏にとって、「SNS対策」は手段にすぎなかった。はじめから総理の名前を暗号資産ビジネスに利用するために、高市事務所に近づいたとみられる。そのことを示すのが、筆者が入手した内部資料だ。

'25年7月版のノーボーダーの「投資家様向け説明資料」には、暗号資産「NoBorderトークン」の構想が記されている。それが総裁選で木下氏とのやりとりを深めた後、同年11月の資料では、「サナエトークン」という名称に変わっているのだ。

木下氏は総裁選を機にノーボーダーから資料提出を受けたり、松井氏とオンライン会議をする関係になっていった。

「12月17日のオンライン会議は、NoBorder側からの求めに応じて行ったもの。(中略)参加者へのインセンティブとして暗号資産を配布するアイディアについて説明があったものとおもわれる」(木下氏の4月3日付回答)

ただ木下氏は、そこで「サナエトークン」という言葉は出てこなかったと説明する。一方、松井氏のビジネスパートナーの溝口勇児氏は、ネット番組で「(サナエトークンを知らないという高市事務所の発信に)えっと思った。松井とかはハシゴ外されたと思っている」と語っていた。

では、松井氏が文春や共同で告発しはじめた「動機」は何か? 【後編記事】『「高市総理も文春もみんな“この男”に踊らされてしまったのか…」誹謗中傷動画を告発したキーマン・松井氏に《深刻な疑義》』で詳報する。

取材・文/河野嘉誠(ジャーナリスト)

'91年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、『サンデー毎日』『週刊文春』の記者を経てフリーに。主に政治を取材している

「週刊現代」2026年7月6日号より

【つづきを読む】「高市総理も文春もみんな”この男”に踊らされたのか…」誹謗中傷動画を告発したキーマン・松井氏に《深刻な疑義》