新人記者 須江監督率いる仙台育英初の女子マネに弟子入り 雑用は全員で分担「勝利に導く立場」
夏の甲子園を目指す地方大会が今週末、各地で本格的に開幕する。アマチュア野球を担当する入社1年目の片山和香(のどか)記者(22)が、仙台育英(宮城)初の女子マネジャー・星よつはさん(3年)に2日間密着して活動を体験。夏の大会を目前にした高校生の思いや、22年夏に東北勢初の甲子園優勝に導いた須江航監督(43)から高校野球の魅力を学んだ。(企画・構成=柳内 遼平、片山 和香)
土佐高時代はハンドボール部でインターハイに出場。「自分がプレーしたい」という気持ちだった。支える側はどうだろう。22歳で高校生に溶け込めるのか。ドキドキしながら、東京駅から始発の新幹線で北上した。
校門に刻まれた獅子のエンブレムが「ライオン軍団」と呼ばれる理由だ。まずは須江監督にあいさつ。「よろしくね。1試合目は、よつはがベンチに入るから一緒に入ってください」。びっくり。学校到着から5分後、予想外に練習試合のベンチ入りが決まった。
星さんは、野球部OBで巨人、西武でプレーした星孝典氏(44=東北学院大監督)を父に持つ3年生。「父と同じユニホームを着て甲子園に行く」と同部初の女子部員として入部した。肩書は「学生コーチ兼マネジャー」だ。ジャージーではなくユニホーム姿。「部員の一人として、いつもユニホームを着ている」と説明され、自然と身が引き締まった。
まずはバックネット裏に撮影用のタブレットを設置。ベンチ内では最前列で監督の隣が定位置だという。黒、赤、青、緑の4色ペンを持ち、さまざまな色や記号を駆使して球種やスイングの有無などをスコアブックに記入。「対戦投手の投球練習を見て持ち球を確認している」から詳細な書き分けができる。
単なる記録ではなく、リアルタイムの戦術資料。監督から「次の打者、さっき何の球種で三振?」と聞かれ、間髪入れずに答える。反応の速さに驚くと「攻守交代のたびに次の打順を確認し、前の打席などを整理している」と教えてくれた。
第2試合では場内アナウンスを担当。右手にマイク、左手でカウント表示を操り、美声で試合を彩る手本を示された。さあ、挑戦。須江監督から「スタジアムDJ風で!」と想定外のリクエストが来た。無難にこなすことに精いっぱい。存在感を残せなかった…。
2日目は土砂降りの雨で練習試合が中止。朝から戦術ミーティングが開かれた。教室で須江監督が講義に使う映像や資料は星さんが用意したものだ。選手の意見を聞き、ミスを解説して再発防止策を練り、共通認識化。星さんが「野球を見る視点が変わった」と言う通り、聞いているだけで野球IQがグングン上昇する気がした。
想像していた掃除やボール磨きなどの“雑用”は男子部員を含む全員で分担。星さんは須江監督から「お手伝いならいらない」と言われ「勝利に導く立場であることの自覚」を求められた。「直接的にも、間接的にもチームの勝利に貢献するのが役割。裏方が日本一レベルじゃないとチームも日本一レベルになれない」と選手に負けない矜持(きょうじ)を持っている。
2日間の密着を終え、お別れの時間が訪れると「後輩がいたら、こんな感じかなと思えました。青春できた気がしました!」と感謝された。お礼を言うのは私の方だ。野球の魅力、奥深さ、そして密な青春を知ることができました。(片山 和香)
◇星 よつは(ほし・よつは)2008年(平20)11月18日生まれ、仙台市出身の17歳。小2から小平美園レッドアローズで野球を始め、主に投手としてプレー。秀光中では秀光ボーイズで選手兼マネジャー。仙台育英では学生コーチ兼マネジャーを務め、2年秋から記録員としてベンチ入り。身長1メートル60。右投げ右打ち。
◇片山 和香(かたやま・のどか)2004年(平16)1月13日生まれ、高知県香南市出身の22歳。土佐(高知)ではハンドボール部に所属し、左サイドで3年夏にインターハイ出場。早大では早稲田スポーツ新聞会で主にアメフトなどを取材。趣味は阪神の応援で、推しは仙台育英OBの熊谷敬宥。
【体験後記】須江監督が優勝した甲子園で「青春って、すごく密なので」という言葉を残した22年夏は、大学1年だった。高校1年の冬にコロナ禍に突入してからは異質な高校生活。「しょうがない。もっと大変な学年もある」と言い聞かせてきた。
高1の頃はマスクもいらなかったし、無観客でも最後の大会は開催してもらえた。それでも消化できていなかった、どこにぶつけるでもない悔しさを、須江監督が言語化してくれた。先生たちは悔しさを分かってくれているのだとすっきりした気持ちになった。
2日間の弟子入りを終え、須江監督から「全ての時間で機嫌の良いお顔をされていました。それは素敵な才能なんです。何をやっても成功される方だと思いますよ」と言ってもらった。野球素人でこの仕事ができるのかと不安を持っていた中で言語化してもらった武器。心に刻んで初めての夏に臨みたい。
≪女子部員9000人超≫日本高野連は25日に全国の野球部員数と加盟校数(5月末現在)を発表し、本年度から女子部員数も公表した。全国計9212人のうちマネジャーは9103人。公式戦の出場資格を「男子生徒」と規定する一方、女子部員については96年からベンチ入り、22年から試合前ノックなどの練習補助役や試合中のボールパーソン、23年からは試合前練習のノッカー役も認められた。

