福島の郵便局4局で児童書販売へ、「無書店自治体」対策…出版不況下でも絵本売り上げ堅調受け
全国で街の書店が減少する中、日本郵便が7月22日から一部の局で児童書などを試行販売することにした。
各地に拠点を持つ郵便局の強みを生かし、地域住民と書籍との出会いの場を提供する。東日本大震災で大きな被害を受けた福島県沿岸部の4局でまず実施し、反応を見て販売地域や本の分野の拡大も検討する。
地域に書店がない「無書店自治体」は、全国の4分の1にのぼる。郵便局は全市町村にあり、無書店の地域で書店の役割を補完できる可能性がある。出版不況下でも絵本などの売り上げは堅調なため、児童書の販売に取り組むことにした。
今回販売を行うのは、福島県の新地郵便局(新地町)と鹿島郵便局(南相馬市鹿島区)、小高郵便局(同市小高区)、浪江郵便局(浪江町)の4局。東日本大震災の被災地で、本を購入できる場が失われていた。
児童書の老舗出版社のポプラ社と協力し、同社が刊行した絵本など約100種類を並べる。移動式の小型の棚などに並べて局内に置く。実際に手に取って選べるうえ、児童書は祖父母と離れて暮らす孫への贈り物としても人気があり、これらの需要も想定している。
地域の人が文化的な場として郵便局に親しみを持つことで来客者数を増やし、全国の郵便局網維持につなげていく。植村八潮・専修大元教授(出版学)は、「郵便局のような異なる業種の施設が、ほかのものと合わせて本を売ることは近年の潮流に合う。本には集客力があり、郵便局の魅力向上にもつながる」と話す。
本に親しむ機会増やす
日本郵便が取り組む郵便局での児童書などの試行販売は、本に親しむ機会が少ない地域の解消に向け、大きな可能性を持つ。郵便物の減少に悩む郵便局は来客機会を増やし、地域の文化拠点として新たな魅力が生まれる可能性がある。まさに一石二鳥の試みだ。
街の書店減少については、政府が昨年6月に書店活性化プランを発表し、官民をあげて問題意識が高まっている。一方で、紙の出版物の売り上げ減は止まらず、日本出版インフラセンターによると、全国の書店数が昨年度末に1万店を割った。
地域に書店がないことで特に深刻な影響を受けるのは子どもたちだ。小さな頃に本を買った経験がなければ、買って読むことを知らない大人に育ち、その子どもに連鎖する。地域の文化格差も拡大する。日本郵便は「児童書は、親子で実物を手に取って一緒に読みながら選ぶことが多く、実店舗でのニーズが高いと考えた」と話す。児童書に着目した郵便局の試みへの期待は大きい。
日本郵便は2027年3月末までを試行販売期間とする。期間中の売り上げなどを踏まえ、その後の展開を検討するという。だが、本をただ置くだけでは不十分だ。著者の講演会や読書会をはじめ様々なプログラムを用意し、総合的に本の魅力を地域の人々に伝える取り組みも期待したい。(文化部 北村真)

