ザクレイ(撮影=栗城雄一)

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 世界中で競技人口が“1億人超え”とも言われているeスポーツの世界。日本国内でも競技人口は推定400万人と言われており、その数は年々増加傾向にある。そういったeスポーツ選手やプロゲーマーと呼ばれる人々は、一般的に特定のゲームタイトルを極めていることがほとんどで、あらゆるゲームタイトルやジャンルが上手いというわけではない。

(関連:【写真あり】スマブラの世界的強豪プレイヤーであるザクレイ選手

 ただ、ごく稀にそんな通例に当てはまらない人間がいる。

「どんなゲームでもある程度、上に行ける自信がある」(※1)

 そう語るのは、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ(以下、スマブラ)の世界的強豪プレイヤーでありながら、様々なゲームジャンルで活動するザクレイ選手だ。

 事実『ポケモンユナイト』では世界大会出場の目前まで迫り、直近の『Shadowverse: Worlds Beyond 格ゲーマー最強決定戦』でも、格ゲー界屈指のシャドバ好きとして知られる、板橋ザンギエフや梅原大吾を撃破して優勝を果たしている。

 マルチなゲームプレイヤーとして、格ゲー、FPS、MOBA、カードゲーム、あらゆるジャンルのイベントで高いパフォーマンスを発揮するザクレイだが、なぜ彼はそれが可能なのだろうか。

 今回、ライアットゲームズの格闘ゲーム『2XKO』で行われたファン向け観覧イベント『DFMはこおし #64 第3回 2XKOデュオ最強決定戦 Powered by Riot Games』出演前にインタビューをさせてもらった。(松永華佳/小川翔太)

■どのゲームにも共通する上手くなるためのコツとは?

――単刀直入にお伺いします。以前「どのゲームでもある程度は上まではいける」と発言されていましたが、何かコツのようなものがあるのでしょうか。

ザクレイ:小さい頃からいろんなゲームをやってきたので、どのゲームでもある程度上手くなるためのポイントがすぐ見つけやすいタイプなのかなと思います。

ーーその理由だけでザクレイさんぐらいの強さに納得しろというのは無理があるなと……。

ザクレイ:ざっくり見た時に、本当にどのゲームも一緒なんですよね。

ーーどのゲームも一緒……ですか?

ザクレイ:まあ、上に行くまでのプロセスが一緒ということですね。細かいところはもちろん違うんですけど。

――違う部分もあるが、共通する部分もあると。ではまず共通する部分というのは何でしょうか。

ザクレイ:とにかく「まず動画を見る」ということです。今の時代はゲームの上手い人がたくさんいるので、まずはその人たちのプレイを見るのがいいかなって。どのゲームも動画視聴からスタートするのがいいです。

――闇雲に練習するのではなく、まず座学から入るということですか。

ザクレイ:そうですね。ゲームって座学から入ることに抵抗がある人が多いですが、自分はそこへの抵抗が全くありませんでした。それが自分の強みなのかなと。むしろ、知識が頭に入っていない状態でゲームをやる方がストレスを感じるというか。「調べないでゲームしても楽しくない」という感覚なんです。みんながプレイをしている間に、俺は座学をしていて、少し先のスタートラインからゲームするから、何事も上手くなるのが早いんだと思います。

――座学ですか。必要だとはわかっているのですが、苦手だと感じている人も少なくなさそうです。

ザクレイ:「座学が好きかどうか」で座学での吸収量も違うと思います。「ゲームしたいけど、仕方なく座学もするか」っていう人と「座学そのものが好き」という俺みたいな人では、伸び方は違うと思います。もちろん、俺もゲームが大好きなので、座学よりも優先してプレイしたくなる気持ちはわかりますけど。

――ご自身のなかで、座学が大事だと気づいたきっかけはあるのでしょうか。

ザクレイ:いろんなゲームをやっていくなかで「学びから入った方が効率がいい」というのを掴んできた感じです。ただ、これはある程度のゲーム経験がある人が前提になっている気がして、ゲームの経験が乏しい人は、まず手を動かすことに慣れなきゃいけない。そういう人はさすがに動画を見るよりも、まずゲームをやった方がいいと思いますけど。

――ザクレイ流の座学のやりかたを知りたいです。

ザクレイ:「寝る前にYouTubeで試合をいくつか見てから寝る」というのを毎日欠かさずやっています。あと「自分が使っているキャラの動画を絶対見てから寝る」。それってプレイ時間には反映されないんですけど、ゲームに携わっている時間ではあるので、どういう形であれ「動画を見る」というのが大事だと思います。

――どのプレイヤーさんも頑張って動画を見て勉強しているとは思いますが、ザクレイさんはその座学の時間が極端に長いのか、または集中して動画を見ているのか。「ながら見」するのではなく、考えながら見ることが大事ということでしょうか。

ザクレイ:そうですね。ダラダラ見るのも意味がないわけじゃないですけど、ちゃんと考えながら見るのは大事だと思います。

■スマブラと他の格ゲーは「『強くなる手順』については本当に一緒」

――「共通」の部分がわかったので、各ジャンルのことも聞いていきたく。まず今回のイベントは『2XKO』で行われますが、格闘ゲームを上手くなるために意識されていることはありますか?

ザクレイ:格ゲーは自分が一番やってきたジャンルでもあります。上手くなるプロセスはどのタイトルも一緒だと思っています。スマブラは一般的な格ゲーと比べても、細かいところはもちろん違うんですけど、本質は変わらないですね。

――世の中では、スマブラと格ゲーは「全くの別ものだ」という意見もありますが、ザクレイさんとしては上達という観点では「同じ」という感覚なのでしょうか。

ザクレイ:全く違わないですね。みんなそう思いがちなんですけど「強くなる手順」については本当に一緒なので。もちろん細かいところは違うんですけど、ざっくり見た時に本当に一緒なんですよね。俺もスマブラ以外の格ゲータイトルでは、本当の上位までいったことはあるわけではないですが、上位の手前ぐらいまでの上達方法は一緒なんですよね。

 強いて違いを言うなら、スマブラのほうが要素が多くて複雑なくらい。同じシチュエーションが少なくて、パーセントによってコンボも変わってくる。細かくやり込むと、スマブラより難しいゲームって、なかなかないんじゃないかと思っています。

――他の格ゲーと比べても?

ザクレイ:そうですね。例えば、自分のゲージの本数によってコンボが変わる場合でも、それはゲージを見るだけで対応できる部分ではあるので、スマブラの方がコンボの変数がはるかに多いですね。考えることが少ない分、他の格闘ゲームのほうがやりやすいと思いました。

――ということはスマブラが上手いひとは他のゲームも上手くなる資質を持っていると。

ザクレイ:他のゲームも上手いと思いますよ。全員が全員そうではないですけど、やっぱり他のゲームも上手い人のほうが多い。

――『リーグ・オブ・レジェンド』のような、MOBAを上手くなるには何が大事だと思いますか? ご自身もMOBAタイトルの世界大会に挑戦されていましたが。

ザクレイ:MOBAは人に教えてもらうのが一番だと思います。一人で全部知ろうとするのに限界があって、相手と味方のシチュエーションが格ゲーに比べてはるかに多い。だから他のゲームよりも、人に教えてもらうことが効果的なのかなと。実際、俺自身はMOBAがほぼ初めてだったので、プレイ数をかなり積みましたね。初心者だったのでチームに導いてもらうことのほうが多かったです。チームに貢献したいという気持ちから、プレイ時間がやばくなった時期もありました。ただ、人に教えてもらえる環境があるなら、そっちのほうが絶対に効率は良いとは思います。自分はとにかくプレイ時間を増やすことでゴリ押した感じがしますね。

――FPSはどうでしょう?

ザクレイ:正直、FPSに関しては得意という意識があるわけではなく、『VAROLANT』もランクのシルバーを抜けない時期も結構あって苦労しました。FPSは最も座学だけではどうにもならないジャンルです。知識だけでなくフィジカルというか、エイム(照準を合わせる)という概念が強いので、数をこなすほうが大事になってくるかなと。

――カードゲームについては? ザクレイ選手は直近でもDCGで結果を出されていましたが。

ザクレイ:カードゲームはFPSと対極で座学が9割ですね。いや7割ぐらいかな。「手を動かす」という概念がないので、座学さえすればある程度は上達できる。みんな、調べるよりゲームする方が楽しいから、そっちに行きがちなんですけど、やっぱりそこはもったいないなと。とりあえず新しいデッキを使おうと思ったら、とりあえず動画をめっちゃ見て、めちゃくちゃ動画を見て勉強したら、まともなゲームはできるようになります。

■「なるべく効率よく上手くなりたい」座学を重視するようになった理由

――勝手な予想ですが、ゲームが上手い人って、例えば「攻撃」と「防御」の要素があった時に、なんとなく「このゲームは攻撃が強いゲームだ」と察したら、防御をあんまり練習せずに「攻撃」のみに座学や練習を集中するみたいな、力の入れどころを分かっているというか。ザクレイさんはどう思いますか。

ザクレイ:その点で言うと、基本的にどのゲームも「攻撃」を練習したほうが強いですね。現代のゲームは特にそういう傾向にあるので、本当に上級者に足を踏み入れるぐらいまでは「防御」よりも「攻撃」を詰めたほうがいいと思います。

――最後に気になった質問を1つ、今日は「座学」に焦点が当たりましたが、ザクレイ選手は昔から座学タイプのゲーマーだったんでしょうか。

ザクレイ:いや、全然そんなことなくて、元々は無限にプレイするタイプでした。スマブラを真剣にやり始めてから変わった気がします。あとはいろんなゲームをやりたいけど時間は有限なので、一つひとつのゲームをなるべく効率よく上手くなりたいという意識が出てきたのもあります。

――なるほど。プロになって忙しくなってくるなか、それでも「たくさんのゲームをプレイするため」にも「座学」が必要になったと。

ザクレイ:そうですね。あとゲームをプレイすることはもちろん楽しいんですけど、上手くなっていくこと自体がゲームの楽しさだと思っているから、効率よく上達できることへのこだわりがあるのかもしれないです。

――効率ですか。ザクレイさん以上にゲームを練習している人間はいるかもしれませんが、ザクレイさんほどになれないのはその部分なのか……。

ザクレイ:いや、俺以上にゲームをやっている人間はいないです(笑)。

――これは……失礼しました(笑)。

ザクレイ:努力に抵抗がないっていうのはめちゃくちゃでかいと思いますね。あと座学してなくてわからない状態でゲームをやるほうが「ムカつく」みたいな(笑)。 またプロに限らず、アマチュアのプレイヤーにとっても、ゲームは限られた時間の中でやるものじゃないですか。学校や仕事から帰ってきて、趣味でゲームをするのに「座学なんて……」って思う人も多いと思う。でも上手くなりたいのなら、その考えは捨てたほうがいいと思います。

――なるほど。とにかくザクレイさんがストイックだという印象を受けつつも「少しでも多くのゲームをプレイしたい」というのは多くのゲーマーが共感する部分だなと。そういう点では、アマチュアのゲーマーにとって、動画による座学は自分のゲームライフを守ってくれるものなのかも……本日はお忙しいところありがとうございました!

※1:https://www.youtube.com/watch?v=qt9vOWnSRjk

(文=松永華佳、小川翔太)