【那須・宝島さん夫婦殺害・死体遺棄】全て指示されたと弁明…仲介役の男が法廷で語った「凶行の中身」
平山被告は「殺人幇助(ほうじょ)」を主張
’24年4月に栃木県那須町で東京・上野で飲食店を経営していた夫婦の焼死体が見つかった事件で、殺人、死体遺棄・損壊の罪に問われている佐々木光被告(30)と平山綾拳被告(27)の裁判員裁判が6月25日、東京地裁で開かれた。この日は平山被告の被告人質問が行われ、前日の佐々木被告の証言と食い違いを見せた。
起訴状などによると上野・アメ横で飲食店を経営する宝島龍太郎さん(当時55)と妻の幸子さん(同56)に対して、経営を巡り不満を募らせた宝島さん夫妻の長女・真奈美被告(33)と内縁の夫・関根誠端被告(34)らが殺害を計画。不動産会社役員だった前田亮被告(38)が物件を紹介するふりをして東京・五反田の空き家のガレージに誘い出し、佐々木、平山両被告の指示を受けた若山耀人被告(22)と姜光紀被告(22)の実行役が電気コードで首を絞めるなどして殺害。遺体を那須町まで車で運び、遺体に火を付けて損壊した。事件を巡り男女7人が起訴されている。
佐々木被告は指示役で、平山被告が仲介役とみられている。公判では佐々木被告と平山被告の上下関係、どの程度積極的に犯行に関与したかが焦点となった。
6月22日の初公判で佐々木被告は起訴内容を認め、平山被告は、
「事件に関わったのは事実だが(佐々木被告から)指示されたことによるもの」
と幇助(ほうじょ)であると主張し、起訴内容を一部否認している。前日の被告人質問で、佐々木被告は首謀者である関根被告から脅され、依頼を断れなかった理由や、平山被告との関係について「(平山被告が)目上だと思った」などと主張していた。
この日も佐々木、平山両被告が入廷。平山被告は深々と頭を下げてから入廷。黒のスーツに紺色のネクタイを締め礼儀正しい印象だが、着席するため証言台の席に手をかけた右手にはタトゥーがのぞいていた。
前日の被告人質問で、佐々木被告は平山被告との出会いについて地元・福岡から上京してすぐの’24年2月、渋谷のクラブで知人から「住吉会系の暴力団員として紹介された」と証言していた。しかし、平山被告は弁護人から佐々木被告との出会いについて問われると、
「令和5年(’23年)の年末だったと認識している」
と最初から食い違いを見せる。出会ったのは渋谷のクラブだったが、知人から佐々木被告のことを「組の運転手をやっている。ガチガチの組の人」と紹介され、平山被告も佐々木被告のことを暴力団員と認識したという。また、
「知人が私のことを『住吉会系の人』だと笑いながら佐々木さんに紹介したのは事実だが、私は暴力団に入ってないと伝えました」
と否定。改めて弁護人から暴力団との関わりを問われると「一切関わったことはありません」と否定した。そう証言する平山被告に対し、佐々木被告は鋭い視線を向けていた。
そんな中で平山被告の証言は続く。佐々木被告の印象について問われると、
「クラブにスーツを着ている人はいないので見た目は怖いなと思っていました。今よりも瘦せていて、筋肉質。髪型も刈り上げて短髪でした」
と振り返った。そう証言しながらも出会った時は、平山被告はタメ口、佐々木被告は敬語で会話をしていたという。以下は、被告人質問で、平山被告が事件に至るまでを語った内容の要約である。
あくまで「佐々木被告の指示」を主張
2人は出会い以降、対面での交流はなかったが’24年4月8日ごろに佐々木被告から電話が来る。内容は、報酬500〜600万円で「中国人夫婦の遺体を処分してほしい」というものだった。詳細を尋ねると佐々木被告から「夫婦は年寄りだから難しくない。中国人だから死んでも分からない」と説明。平山被告によると、この電話の際に年上の佐々木被告に「同じ年齢だと思ってタメ口を利いて申し訳ありませんでした」と謝罪したうえで、依頼を引き受けている。弁護人から「なぜ断らなかったのか」と問われると「見た目が怖かった。断るとタメ口を利いたこととかを理由に何をされるか分からなかった」と述べた。
平山被告は、「(姜、若山両被告は)クラブで武勇伝を語ったり、何事にも物怖じしなかった」と考えたといい、2人に白羽の矢を立てた。話を持ちかけられた姜被告は「やる」と快諾。内容が死体の処分と伝えても、ためらいもなく「やる」と答えた。若山被告も姜被告が引き受けたことで了承した。
実行役が見つかったことを佐々木被告に報告すると「おカネを弾むから夫婦の始末からやってほしい」と依頼された。報酬は1500万円に増額され、平山被告が姜被告に伝えると「やります」と答えた。平山被告は「マジで言ってんの? やめるなら今だよ」と確認したが、姜被告は「全然、大丈夫っすよ」と答えている。話を持ちかけられた若山被告は最初、悩んだ様子だったが「姜被告がやるなら」と引き受けた。
弁護人から「死体遺棄・損壊でも重い罪ですよね? 殺人となればさらに重罪になる。ここで抜けようと思いませんでしたか?」と問われた平山被告は、
「実行役を探してほしいということだったので実行するのは2人だと思っていた。当時は重く考えていませんでした」
と罪の意識が乏しかったと振り返った。
殺害の決行日は4月13日に決まった。しかし、その日までに佐々木被告が用意するはずだった遺体を運ぶ車とルートが決まらなかった。レンタカーは足が付く可能性もあり、佐々木被告から盗難車を使うよう指示されたが、平山被告に盗難車を用意するツテはなかった。仕方なく平山被告が所有する黒色のプリウスを使用することになった。
同日、佐々木被告から人通りの少ない上野の高架下を指定され、バットで夫婦を襲撃するよう指示を受けた。姜、若山両被告と合流する際に平山被告が延長コード、結束バンド、ガムテープ、ビニール袋、ガソリン、着火剤を用意したが、これも「佐々木被告の指示でした」と強調した。しかし人通りが少ないとはいえ、殺害を実行できる場所ではなかったことからこの日、実行されることはなかった。
4月14日は上野の路上で宝島さん夫妻に車をぶつけ、2人を車に積んで移動するよう指示されたが、姜、若山両被告が「こんなところでできるわけがない」と不満を漏らしたため、またも実行されなかった。そして、平山被告が佐々木被告に「密室は用意できませんか」と提案。これに弁護人は「密室は誰の提案ですか」と尋ねると、平山被告は「姜さんと若山さんの発案です」と自身は関わってないことを主張している。佐々木被告は用意するものとしてロープを指示したが、平山被告は延長コードを用意。その理由についても「姜さんがロープは太すぎると言ったので延長コードになった」と説明した。
最終的に宝島さん夫婦を五反田の空き家のガレージに呼び出し睡眠薬で眠らせ、首を絞めて殺害するという方法に変更された。ここでも平山被告は「佐々木さんの発案という認識でした」と犯行に積極的に関与していないことを主張している。
凶行後に120万円のネックレスを購入
そして’24年4月15日夜、計画は実行された。ガレージ内で姜、若山被告が凶行に及び、遺体を乗せた車が栃木県那須町に向かうのを見届けた後に、平山被告は五反田駅前の居酒屋で佐々木被告と落ち合った。そこで帯封もされず、乱雑な札束が入ったショルダーバッグを受け取った。その後、コインロッカーにバッグを預け、ガレージの清掃に向かった。凶行中に若山被告から「男性(宝島龍太郎さん)はすぐに落ちたけど女性(宝島幸子さん)がなかなか落ちずに姜がイラついてハンマーで叩いた」と報告を受け、「携帯に血が飛び散ったガレージの画像を送られた」という。
清掃を終え、帰宅した平山被告が札束を数えると、報酬1500万円のはずが、1320万円しかなかった。佐々木被告は前日の裁判で「自身は報酬を受け取っていない」と証言していたが、平山被告は次のように反論。
「上野の路上で襲撃が中止になった日に、佐々木さんから『俺は1円ももらってない』と言われました。その日は佐々木さんの誕生日前だったこともあり『100万円を抜いてもいいですよ』と言いました」(編集部註:これは、平山被告が佐々木被告に「100万円を報酬として受け取ってもいい」というニュアンスの言葉を伝えたと思われる。平山被告が佐々木被告から受け取った報酬は1320万円であり、180万円の行方は謎のままだ。おそらく平山被告は、佐々木被告が180万円を抜いたと思っており、そういう意味合いを込めて「『100万円を抜いてもいいですよ」と言いました」と答えたと思われる)
その後、車を返しに来た姜被告に報酬として500万円を渡した。弁護人から「分け前は誰が考えたのですか。リスクを冒した実行犯のほうが、取り分が多くなるのではないですか?」と指摘されると平山被告は「当時は深く考えませんでした」と答えた。その言葉どおり、姜被告に500万円を渡した後に、平本被告は上野に向かい、120万円のネックレスを購入している。
若山被告から「絶対に見つからない場所で処分しました。あそこなら誰にもバレません」と報告を受けていたが、翌日には死体発見のニュースが早々に報じられている。
平山被告は、佐々木被告から実行役を出頭させるよう指示され、姜被告に伝えた。姜被告は「若山被告と出頭したい」と答えているが、実際は、2人は出頭せずに逃亡。そのことを佐々木被告に伝えると、佐々木被告は、今度は平山被告に出頭するよう指示を出す。
平山被告は、
「(依頼主が)暴力団関係者かもしれないと思いましたし、事件に関わったことに後悔の気持ちがあったので出頭しようと思いました」
と出頭を決意したという。朝方に佐々木被告と五反田駅前の交番近くで落ち合い、携帯電話と車の鍵を渡し、午前6時ごろにその足で交番に出頭した。その際、平山被告は警察に、「実行役2人が上野の路上でおカネを持っていそうな被害者夫婦に声をかけて、その後トラブルになって殺害した。それを聞いて車を貸した」と虚偽の供述をし、自首調書が作成された。なぜ虚偽の供述をしたのかと問われると、
「佐々木さんと依頼主が捕まらないために、虚偽の供述をするように言われたからです」
と明かしている。
「ご遺族様からありがとうとも言われた」
その後の取り調べで平山被告の自首調書に不審な点を感じた別の刑事が「家族いるんでしょ? 彼女いるんでしょ?」と問いかけると、平山被告は涙を流し、真実をすぐに話し始めたという。なぜ正直に話したのか、その理由について平山被告は、
「怖さより反省と後悔の気持ちが強くなったからです」
と、はなをすすった。
弁護士から改めて「なぜ佐々木被告の頼みを断らなかったのか」の問いには、「ぶっとばされると思ってました。明確には分かりませんが」と佐々木被告を恐れていたと強調している。今後、この事件を巡る別の被告人たちの裁判が続くが、平山被告は、
「警察の方から私の証言のおかげで共犯者を逮捕することができたと言われました。ご遺族様から正直に話してくれてありがとうとも言われました。少しでも役に立つのであれば、証言させていただきます」
と協力すると話している。自己弁護が強い一面もあるが、完落ちし素直に証言している印象だった。
しかし首謀者とみられる関根被告は6月24日、東京地裁で勾留理由を明らかにする手続きが行われ「私は誰とも共謀していませんし、絶対無罪です」と主張。佐々木被告、平山被告、関根被告が三者三様の主張をしている。
今後も、法廷では醜い責任の擦り合いが繰り広げられそうだ──。
