【コシノジュンコ 我が道16】うのちゃん転落は私のせいかも バレエが得意な彼女に注文したのが…
先日、「美川憲一&コロッケ スペシャルジョイントコンサート」を楽しんできました。美川さんもコロッケさんも長年の友人。何度もステージは拝見してますが、2人の掛け合いはいつも絶好調。病気を公表した美川さんも元気そうでホッと一安心。一緒だった神田うのちゃんとおなかを抱えて笑い転げました。
今回は、私たち仲良しグループの欠かせない存在、うのちゃんの話。彼女との出会いはまさに衝撃的という言葉がぴったり。98年の秋冬パリ・コレクションでした。ショーのテーマは「エキゾチック・ソバージュ」。既成の枠にとらわれず古今東西のさまざまな要素を盛り込もうという画期的な挑戦。そのコンセプトを思いついた時からうのちゃんのことが気になっていたのです。
当時、彼女は広告、雑誌のモデルを経て、テレビのバラエティー番組で大活躍中。自分の意見や考えを忖度(そんたく)なく発言し、これまで見たことないキャラとしてお茶の間でも人気になっていました。あの際立った個性は、今回のショーにピッタリと予言めいたものがひらめいたのです。
「私のショーに出てくれませんか」。彼女にそう声をかけたら、「うれしい!」と気持ち良く引き受けてくれました。うのちゃんはおしゃれ大好き、若い女性たちのファッションリーダー的存在でパリコレにも興味を持っていたみたい。ちょうどその頃、仕事でパリにいるご両親に会いに行くとのことで絶妙のタイミング。二つ返事でOKとなったのです。
本番当日、うのちゃんが登場すると、場内にひときわ多くのフラッシュがたかれ大歓声。本人もプロのモデルのような華麗なウオーキングを披露。あとは中央でターンして戻ってくるだけ。その時でした。くるくるっと回転したと思ったら、バランスを崩しそのままステージ下へドーン。客席から「え〜っ」の声も上がりましたが、さすがうのちゃん、次の瞬間、まるで何事もなかったように舞台上へ戻ってポーズを決めてくれました。
リハーサルの時は難なく成功したのですが、本番では斬新なヘアスタイルにするために大きなウィッグをつけ、かなり高いヒールを履いていたのです。それ以上にバレエが得意な彼女に「何度か回って戻ってくるのも面白いかも」なんて私が安易に注文したのがいけなかったのかもしれません。
終演後、ちょっぴり責任を感じた私が「うのちゃん、大丈夫?」と声をかけると、彼女は「全然、平気ですよ」と屈託のない笑顔。「カッコ悪いので誰にも言わないでくださいね」。ところが、帰国後、留守の間、家に届いていた新聞を開いたらびっくり。「うの、ステージから転落」と大きな見出しの記事と写真まで載っていました。私にとっても忘れられないパリコレになりました。
◇コシノ ジュンコ 文化服装学院在学中に装苑賞を受賞。1978年から22年間、パリ・コレクションに参加。世界各国でファッションショーを開催、国際的な文化交流に力を入れる。オペラ、DRUM TAOの舞台衣装、花火、ユニホーム、インテリアのデザインなどを手がける。フランス政府からレジオン・ドヌール勲章シュバリエ受章、旭日中綬章受章。2025年11月には文化勲章受章。大阪府岸和田市出身。

